コロナの影響で職を失う人が増えている。失業率に比例しているのが自殺率である。
「もしも所有物件が事故物件になってしまったら?」「事故物件に投資をするとしたら、どれだけ安く買えるのか」など、気になるところだろう。そこで事故物件を専門に取り扱う「成仏不動産」を運営する株式会社MARKSに事故物件の実情を聞いた。

コロナの影響で自殺率は増加
昨年10月は前年同月比39%増
代表取締役社長の花原浩二氏によると、事故物件とは、孤独死から自殺、病死、共用部における死など多岐にわたり、定義があいまいになっているという。
国土交通省主催で、昨年2月に「第1回不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」が開催され、心理的瑕疵物件に関するガイドラインの策定に向けた検討が行われている。心理的瑕疵物件とは、下記のような物件を指す。

花原氏によると、事故物件のなかでも、死亡から発見までの時間や、何年前の出来事なのか、自殺か他殺かなどによって、人々の受け取り方は変わってくる。
特に高齢者の孤独死は、昨今では珍しいことではなく、気にする人は減ってきている。ただし、インターネットの浸透で、事故物件公示サイト「大島てる」やSNSの広がりで、記録が残る時代になってきている。
最近では、コロナの影響により、自殺者が増えている。総務省の最新の調査結果(2020年12月25日公表)によると、完全失業者数は195万人に上り、10ケ月連続して増加の一途をたどっている。昨年10月だけでも自殺者数は、2153人と、前年同月比で39%も増えている。
実は失業率と自殺率が比例するとのデータがある。

自殺者が増えると、所有物件が事故物件になる恐れもある。
いざ事故が発生した際の流れについて覚えておきたい。通常、事故が発生した場合、警察など関係各所に連絡をし、清掃→リフォーム→入居者の募集または売却という流れで再生に至る。
ここで重要なポイントになるのが、発見までの時間と事故発生の場所だ。ベッドで亡くなった場合と床の上で亡くなった場合では、その後の処理の大変さが変わってくる。
たとえば、床の上で亡くなり、長期間経過すると、体液が床ににじみ出るなどして、特殊清掃をしても、臭いが部屋にしみついて消えなくなることもある。その場合、該当箇所を切り除いて処分するなど、大掛かりな作業が必要になる。
他殺は相場より5割安、自殺は2〜3割安、
安く買えば、キャピタルゲインが狙える
事故物件に多いのは、一人暮らしの1Kやワンルームである。これらは住宅ローンが使いづらいため、実需系ではない投資家向けに販売されるケースが多い。実は、事故物件は、相場よりも安く購入できるため、キャピタルゲインが狙える投資だという。
社員の一人である笹尾里枝さんは不動産投資家でもあり、事故物件を投資家目線で次のように語る。
「事故物件は安く買えるため、キャピタルゲインが狙える投資です。発見されるまでの時間や場所などによっても異なりますが、他殺は相場より5割安、自殺は2〜3割安、孤独死で約1割安で売買されることが多いのが実情です。事故後、数年は家賃が下がる可能性がありますが、事故が風化されると、家賃や売値が回復していきます」
たとえば相場では横須賀市で780万円の3LDKが、事件発生後、リフォーム費用を含めて400万円で購入でき、利回り16%の事例がある。賃料は事故後、大幅に下がるが、安く買えた分、利回りは上がる。

孤独死が発生した座間市のワンルームでは、購入額200万円(リフォーム費込み)で、家賃4万円、利回り24%の事例がある。

地方よりも都市部のほうが
事故は風化され、家賃は回復傾向に
都心部の賃貸住宅の場合、住んでいる人の回転が速く、事故の情報が風化されやすい。地方は住民の回転が少なく、事故の情報が風化されにくく、家賃や売値などの価格が戻りにくいそうだ。事故物件投資は地方よりも、都心のほうが適しているのかもしれない。
事故物件に投資をする際のデメリットとして、「融資がつきにくい」ことも覚えておきたい。入居者の確保が難しいと金融機関に判断され、融資を受けにくい現状がある。ただ一方で事故物件を気にしない人もいるのも事実である。
成仏不動産のサイト閲覧数は2020年の上半期は240万件と、前年比約3.5倍に増加。2019年4月〜2020年12月までの賃貸物件の成約件数は448件に上り、借り手が多くいることが分かる。
成仏不動産では事故物件を気にしない人や、外国人や高齢者など、住宅確保要配慮者と呼ばれる人達を入居者としてマッチングさせる。
特殊清掃も自社で行い、事故物件対応代行サービスとして、所有物件で事故が発生した際の対応から清掃、入居者の募集のサポートも行う。
今後も高齢化によって孤独死が増え、未婚率の増加から、40〜50代の孤独死も増えていくと花原氏は考える。さらにコロナの影響で失業率の悪化が続けば、失業率に比例する自殺率も上がり、事故物件が増えていくことも考えられる。そうしたなかで、事故物件の再生や流通の必要性は増しそうだ。
健美家編集部(協力:高橋洋子)