高齢者・若者のクルマ離れが加速し
機械式駐車場の維持管理費が悩みの種に
限られたスペースを有効に使って収容台数を増やす機械式駐車場。自家用車を保有する入居者にとっては利便性が高く、駐車場代は周辺より安く設定されていることが多いため経済的だ。
しかしながら、都市部では自家用車を手放す高齢者が増えており、若年層の車離れも進んでいる。便利な機械式駐車場も、空きが増えはじめると、一気に悩みの種になる。

そこで、機械式駐車場空き対策のプロジェクトに参画し、ハード・ソフト両面を踏まえた駐車場診断を発案している大和ライフネクスト株式会社の金坂氏に機械式駐車場のリスクを聞いた。
「機械式駐車場の問題は、多くの場合、維持管理費用の高さが引き起こしています。設備・設置状況により異なるのであくまで目安として捉えてほしいのですが、例えば10パレットの機械式駐車場の年間支出は、保守費用に加え、30年間で割り込んだ修繕費用だけで年間約100万円かかることになります」と金坂氏。
保守費用や修繕費用に加え、防錆のための鉄部塗装工事、そのほか一部消火設備の消防設備点検費、更新費用、地下ポンプ更新費用も必要だ。平置きと比べて電気代もかかる。工事費や材料費が高騰すれば、さらに負担が重くなってしまう。
機械式駐車場のリスクは設置前に予見できる
それでも選ばれる理由とは?
新築から20年くらいから、入居者の高齢化により自家用車の利用が徐々に減る傾向がある。機械式駐車場の規格の問題でワンボックスカーなどの背の高いファミリーカーを収容できないパレットもある。これらは機械式駐車場をつくる前に予見できる問題だ。
それでもニーズがある理由の一つは、都市計画で定められた地区内では、集合住宅の建築延べ面積や住戸数に応じて、駐車施設の附置義務があるからである。駐車場用のスペースが狭い場合、平置きや自走式よりも機械式駐車場が選ばれやすい。
パレットが埋まっていれば問題がないものの、徐々に空きが増えて機械式駐車場の収支悪化し、対策に取り組む管理組合が増えている。
機械式駐車場問題の改善策
平面化工事の事例が増えている
大和ライフネクスト株式会社のマンションみらい価値研究所の研究レポート「消えゆく機械式駐車場」によると、管理組合の収支改善策の一つとして、機械式駐車場の平面化工事の事例が増加傾向にある。

大和ライフネクスト株式会社の受託管理組合において、分譲時に機械式駐車場の設置がある管理組合2,039件のうち、機械式駐車場を平面化した建物は298件、14.6%におよぶ。機械式駐車場の平面化工事は、特別珍しい事例ではなくなりつつある。

機械式駐車場の修繕計画を加味して
資産価値を推し量るべき
機械式駐車場を平面化することで維持管理コストは減少するが、「収容台数が減る(埋め戻すと元に戻せない)」「排水環境が変わる可能性がある」などの問題もある。
平面化以外では「駐車場の更新(25期〜30期)のタイミングで、3段式を2段式に変更して維持管理コストを減らす」「マンションの住人以外にも貸し出して収入源にする(別途税申告が必要になる)」などの方法もある。いずれにせよ組合員の合意形成が不可欠だ。
あらためて、不動産投資家が機械式駐車場付きの物件を検討するときに、注意しなくてはならないことは何か。「長期修繕計画における修繕費用を考慮して、資産価値を推し量ることが大前提。このほか平面化のようなハード面の改善、外部貸しやカーシェア、キッチンカーの誘致など駐車場用途以外での収益事業を行える可能性も検討材料となります」と金坂氏。
機械式駐車場の扱いは難しいが、この課題を乗り越えられたら、不動産投資家としてレベルアップできそうだ。
健美家編集部(協力:
(とやまたけし))