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生産緑地2022年問題は現状維持で決着も、今後10年間で持続可能な街づくり再考の時

不動産投資全般/社会問題・情勢 ニュース

2022/03/08 配信

住宅地の値段が暴落する。固定資産税などを大幅に減免する代わりに農業を営むことを30年間義務付けている「生産緑地」の約8割が2022年にその30年間の期限を迎えることで宅地が増加して地価が下がるといって騒がれていたものだ。

1992年に始まった制度で、全国に生産緑地は1万2525ha存在しており、そのうち約6割が首都圏で占めている。

三大都市圏特定市では、生産緑地地区以外の市街化区域内農地は、宅地並み課税が適用されるのに対し、生産緑地は軽減措置が講じられる。

市街化区域内の農地で、良好な生活環境の確保に効用があり、公共施設等の敷地として適している500㎡以上の農地を都市計画に定めて都市農地の計画的な保全を図る制度だ。市区町村が条例を定めることで面積要件は300㎡まで引き下げることが可能である。

国土交通省では、人口減少下におけるまちづくりの観点から、「これからの住宅市街地においては、将来的に空き地・空き家問題が顕在化する可能性もあることから、都市農地を保全することにより、市街地のスプロール化を抑制し、土地利用の適正化を図ることが重要である」としている。

グラフ
出所:国土交通省

約8割が10年間の指定延長を希望

生産緑地問題への対応として2017年に生産緑地法を改正した。市町村長が農地等利害関係人の同意を得て申出基準日より前に特定生産緑地として指定し、買い取りの申し出が可能となる期日を10年延期する制度を創設して2018年4月から施行。

生産緑地を所有する人は、10年の指定延長を選ぶか、地元自治体に買い取りを申請するか。この2つが大きな選択肢となり、自治体が買い取れない生産緑地は宅地となる可能性が高い。

生産緑地の所有者は、相続に備えて2割以下を宅地化する、相続税と利子税の納税義務を承知した上で30年経過後に宅地化を選択するなど様々なケースが考えられる。しかし、これらの選択肢の中で10年間の指定延長を選ぶケースが大半を占めている。生産緑地が一斉に宅地化する恐れはない。

国土交通省が実施した「特定生産緑地の指定意向調査結果」(2021年12月末時点)を見ると、「指定済」(37%)と「指定受付済」(42%)を合わせて約8割が10年間の指定延長を選択している。「意向あり」(7%)を含めれば85%を超えている。

なお、10年間の延長を選ぶ場合、30年経過後に指定できないので、30年経過前までに行うことが注意点となる。特定生産緑地に指定しない場合は、固定資産税と都市計画税については農地課税から宅地並み課税となる。

ただ、三大都市圏については急激な負担を防ぐ「激変緩和措置」が儲けられている。これは、課税標準額に初年度0.2、2年目0.4、3年目0.6、4年目0.8の軽減率を乗じる措置が適用される。

円グラフ
出所:国土交通省

都市型農業が地域の魅力を上げる

これからの生産緑地の使い方としては、例えば、農地の期限付き借地制度などの利用であったり、子どもを後継者にして農地を維持する、将来的な宅地化も視野に入れての準備をするなどが挙げられる。

国は2018年9月には生産緑地を貸したり、借りたいしやすくする都市農地の貸借円滑化法を施行して生産緑地の活用方法の幅を広げる措置を取った。

この新法施行前までは、土地を貸し出すと農家の優遇措置がなくなっていたが、新法によって農地を貸し出しても優遇措置が受けられるようにした。これにより、農家出身ではない個人が生産緑地を借りて野菜や果物を作ったりできる場面が増加する。

賃貸による営農により市民農園を展開したり、農産物の直売・加工品販売、レストランのオープンなど地域密着型の農業を通じて地域の活性化、地域に新たな付加価値が生まれる。そんな好循環につなげられればとの思いから生産緑地で農業に参画する個人が増えているようだ。

農林水産省が昨年12月24日公表した調査結果を見ると、農業分野への2020年の新規参入者は3580人となり、2018年の3240人、2019年の3200人から増加している。2010年を見ると1730人であったことから、この10年間で2倍を超える増加となっている。

住みやすさなど地域性に対する評価が上がれば賃貸住宅市場にとってもプラスに働く可能性がある。

特に子育て世帯のファミリー向けの賃貸住宅にとっては集客と家賃の双方で相乗効果を得られそうだ。特に東京圏では、農地が宅地化されることで乱開発が進めば空き家問題が加速する心配が高まる。秩序のない宅地化を防ぐことは、住宅地価が暴落するという側面よりも持続可能な街づくりの視点からも欠かせないのではないだろうか。

ちなみに、最近の不動産市況を見ると、「そうは言っても東京の場合、現在の住宅価格の高騰ぶりを見せつけられると、生産緑地問題は、宅地の増大で住宅の地価暴落とはいかないまでも、生産緑地問題が調整弁になったのではないかと思えてきた……」との恨み節が実需としての住まい購入検討者だけでなく、個人投資家の賃貸物件購入者からも聞こえてくるのは筆者だけだろうか。

健美家編集部(協力:若松信利(わかまつのぶとし))

■ 主な経歴

学生時代から不動産に興味を持ち個人的に不動産関連の記事を多数執筆。大学卒業後、不動産関係情報誌に20年以上勤務。現在は都内のIT会社に勤め、副業でいくつか投資関連の記事を担当・執筆する40代サラリーマン。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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