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「建築資材価格」高騰の中、廃棄される余剰資材を回収、アウトレット価格で販売。環境に優しく、安価な原状回復を実現

不動産投資全般/社会問題・情勢 ニュース

2022/03/21 配信

建築資材の価格が高騰している。さまざまなメディアが報じているのですでにご存じの方も多いだろう。ウッドショック以降、2021年秋から鋼材、塩ビ管やポリエチレン管、建築用塗料、各種内装材とあらゆる資材が相次ぎ値上げされており、しかも値上げ幅が10%以上、20%に近い商品も出ている。

所狭しと建材が置かれたオフィスで豊田氏に話を伺った
所狭しと建築資材が置かれたオフィスで豊田氏に話を伺った

しかし、その一方でその建築資材が使われないまま、大量に廃棄されていることをご存じだろうか。建築現場で発生する内装建材を工務店から回収、それをアウトレット価格で販売するビジネスを始めたHUB&STOCKの豊田訓平氏に聞いた。

「ちょっと多めに発注」が積み重なってゴミに

工務店だけでなく、私たちも普段、何かを購入、用意する時には少し多めに購入するのはよくあることだ。足りなくなるよりは余ったほうがましという発想からだが、それも程度問題。建築資材ロス問題を社会課題と捉え、ビジネスを立ち上げた豊田氏によると、そこで無駄になっている量は半端ではない。

「関東4都県で年間約100万トンの建設混合廃棄物が廃棄されていますが、そのうち、2割程度は使えるものだと言われています。

都内で月に30~50件ほど、原状回復を行っている工務店に聞くと年に2~3回、余剰の資材を1立米2万5000円~3万円で産廃として捨てているそうで、年間で廃棄するために何十万円も使っている計算に。当然、経営的にも大きな負担になっています。

DIYに関心のある不動産オーナーの中にはここまで訪ねてきた人もいらっしゃるとか
DIYに関心のある不動産オーナーの中にはここまで訪ねてきた人もいらっしゃるとか

現在借りている20坪のオフィスには600種類、1万2000点、重量で12~13トンの内装資材が置いてありますが、これは私が2トントラックで約20社を回り、1カ月ほどで集めたもの。回収ニーズは非常に高いことを実感しています」。

多め発注の裏側にあるもの

私たちが自分のお金で買う場合でも余分に買うのはよくある話だが、工務店の場合には材料が足らずに工期が遅れることを防ぐために多く発注しがちになるという。特に賃貸住宅の場合には早く貸せれば貸せるほどオーナーとしてはうれしいのはご存じの通りである。

会社の規模によっては現場を見ていない人が見積もりを担当することもあり、その場合、不足を懸念して1.2倍、1.4倍と余分に発注するケースもしばしば。詳細が決まっていない時点で早めに発注を掛ける際にも同様のことが起きる。

また、仕様変更や誤発注で材料が余るケースもある。返品などが可能である場合でも、すべてに対応することは限られた工期の中での作業ではなかなか難しく、やむなく廃棄するしか選択肢が無いと言うケースも少なくない。

在庫を使うより新品を買うほうが手間がない

使っていない、箱も空けていない新品なら次の現場で使えば良いではないかと思うかもしれないが、すぐに使う機会が来るならまだしも、3カ月後、半年後に一度倉庫に入れたものを再度出してきて使うのはそれなりに手間がかかる。それにそもそも、ある程度の時間を置いてからの工事は追加工事として新たに材料を発注することが少なくないのである。

言ってみれば建築資材ロスは業界の構造的な問題から発生しているわけで、これまでなかなか見えてこなかった。だが、このロスは単にもったいないというだけに留まらない。あまり広く知られてはいないが、首都圏の最終処分場の残余年数はあと5年ほどと言われている。

最終処分場の残余年数。残された時間はそれほど長くはないという数字が明らかになっている
最終処分場の残余年数。残された時間はそれほど長くはないという数字が明らかになっている

一般社団法人産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センターのホームページ内に環境省の資料に基づいた2018年4月1日現在の産業廃棄物の最終処分場の残存容量と残余年数が掲載されているのですが、それによると全国の最終処分場の残余年数は17年を切っており、首都圏の場合は5年ほど。ごみの量は減っていますし、少しずつ処分場も広げているようですが、このまま産廃が増加するのはどうなのでしょうか」。

内装建材はリサイクルしにくい

であればリサイクルをすれば良いではないかと思うだろうが、内装建材はリサイクルしにくい。

「複数の素材からできている混合資材のため、分別しにくく、埋めるしかないのです。最新の処理場なら壁紙など燃やす気になれば燃やせますが、こうした処理場は動かし続けないと効率が悪くなる。ごみが無くなると困るわけで、それはそれでおかしな話。そう考えるとリサイクルではなく、そもそも、再利用のほうが良い。再利用がサーキュラーエコノミーの観点からも一番エネルギーへの負荷がなくて済むのです」。

大手ゼネコン、デザイン事務所で働いてきた豊田氏はこうした矛盾に気づき、社会課題解決型のビジネスを展開するボーダレス・ジャパンの子会社として2021年春に同社を起こした。

それまでに工務店65社、その後、営業で回った200社ほどに話を聞き、業界関係者のニーズを把握。現在はそれをどう販売するかを模索している。

卸売り価格より2~3割は安い

未開封も含め、多くの建築資材が積まれている
未開封も含め、様々な内装資材がジャンル別に整理して積まれている。整理するだけでも大変そうだ

取扱い商品は壁紙、床材、タイルやフローリングなどさまざまな内装資材があり、価格は商品によって異なるが、ざっくりメーカー価格の7~8割、卸売価格の2~3割は安いと考えれば良いという。

すでに施主支給で原状回復工事に使う資材を買いに来る、あるいは工務店に指定する不動産オーナーも出てきている。

「余った資材を回収しているので、メーカーから購入するのと違い、今の時点では同じ資材が大量にあるわけではありません。そのため、大手工事会社に同じ品を大量供給するのは難しいところはありますが、賃貸住戸の原状回復工事や小規模リフォームで使うのには相性が良いと思います」。

ワンルームのような単身者向きはもちろん、それ以外でも可能と実際に手掛けた住戸の間取り図を見せていただいた。80㎡の5LDKで壁紙のみを販売した例で、当初の見積もりでは50mの壁紙が7本、350mいるという計算だったそうだ。

ところが、豊田氏が現場で見積もりをしたところ、30分くらいの作業で余裕を見ても250mほどで足りることが判明。材料代だけで半分ほどに収まることに。これに床その他の資材が加わるとすると同じ工事でもかなり節約になるはずだ。

また、今後回収先が増えてくれば量の問題も解決する。特に一般的な資材であれば大量に集まることが想定され、欲しい資材を好きなだけアウトレットで買えるかもしれないのである。最近ではフローリング、タイルカーペットを月200束、200箱程度集めることを目標としており、回収にも力を入れているそうだ。

さらに新たな取り組みとしてホームセンター大手との協働を模索している。取り扱う事業者が増えればアウトレット建材は買いやすくなる。

これにより、新品を使って工事をするか、またはしないでそのままにするかの2択だったところを「アウトレット建材活用」で安価に、環境に良い工事をするという選択肢を提示し、新たな市場を創出することを計画しているのである。

アウトレット建材活用が一般的になれば、今まで費用面から後回しにされていた空き家活用などが促進され、長期的に見て街にはなくてはならないインフラになる可能性がある。うまく組み合わせて使えれば原状回復工事やリフォームの費用を抑えることもできそうだ。

さらに環境に配慮、建材を再利用した物件であることをアピールすれば、その物語自体が物件の売りにもなる。若い人たちは環境問題に敏感である。社会的に意義のある活動には賛同する人も多いのである。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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