「今はメガ大家さん」が最初に買った物件を聞く本連載。第2回目の今回はベストセラーとなった『お金が貯まるのはどっち?』(アスコム)をはじめ、お金にまつわる著書や講演でおなじみの元銀行員の菅井敏之さんにご登場いただく。菅井さんは銀行員時代に幸せそうなお金持ちにはある共通点があることに気づく。それは収益不動産を持っていることだった。そこで2004年から不動産投資を始め、4年で6棟81戸を購入し、脱サラ。現在では、田園調布で喫茶店を経営しながら、個人から企業まで、お金のお悩みなどよろず相談にのっている。そんな菅井さんが買った1棟目、2棟目に選んだ物件とは?

●地位や名誉よりも、自由な時間がほしい
貯金4000万円を元手に不動産投資をスタート
42歳という若さで支店長になるも、いざ支店長になっても、何も景色が変わらないことに気がついた。
「いい学校を出て、いい会社に入ってがむしゃらに働いた先に、絶対にご褒美はあると思っています。ただ自分の場合、求めていたのは、地位や名誉ではなく、自由だということに気づいたのです。長男なので、いつかは父親の最期を看取りたいとも考えていました。そのためには、いつでも必要なときに地元・山形に帰りたい。どうしたらいいか考えているうちにたどり着いたのが不動産投資です」
仕事柄、富裕層の人達を見る機会が多かった。「うらやましいな」と思う人を10名リストアップしてみると、そのうち8名が共通して、収益物件を持っていた。
「8名のうち4名は地主ですが、ほかの4名は地主ではない。ラーメン店主や麻雀店主という人も。本業の利益を不動産に回していたのです。そうか、そんな方法があったのかと思いましたね。ロバート・キヨサキの『金持ち父さんの若くして豊かに引退する方法』を読んだことで、漠然と感じていたことが確信に変わりました」
●近所にオープンした不動産屋に飛び込み
土地から新築する話が舞い込むも、業者が失踪?
会社員をしながら、コツコツ貯めた貯金が4000万円あった。どう4000万円も貯めたかは、これまでの菅井さんの著書に書いてあるため、ここでは触れないが、それを元手に、次の3つの判断基準を元に物件を探し始める。
【当時の購入基準】
1:RCであること
2:利回りが10%以上の高いもの
3:築浅のもの
菅井さんが不動産投資を始めた2004年は収益物件を検索できるようなインフラは整っておらず、不動産屋をひたすら回って、物件を見て回った。
しかし、当時(今も)、そのような条件に該当する物件などまったくなかった。そんな中、近所に新しくできた不動産屋に飛び込み、頭金の額を伝えると、相手の目の色が変わった。そして、1本の電話がかかってくる。
「明大前駅から徒歩2分の場所に、いい土地が出たというのです。その業者は、建売業者なので、土地を仕入れるのが得意。その土地は駅前の細長い土地で、自宅には向かないがアパートならちょうどいいと。設計士による建築プランも出してくれて、建築費7000万円、土地7000万円、計1.4億。1K15室入り、利回り10%。融資先の銀行も業者がアレンジしてくれました」
ところが、杭打ちの段階で、その業者がなんと失踪。連絡が取れなくなり、仲介手数料と建物完成までのコンサル料、合わせて1000万円を払っていたが、戻ってこない。分離発注にすることで、建設費を安くする算段だったが、肝心の工程管理をやる人がいない。
「生きた心地がしませんでした。考えた挙句、内装をお願いしようと思っていた会社の社長さんに頭を下げて、3日間通って、工程管理をお願いしました」
12月に完成予定だったが、完成したのは3月下旬。決まっていた入居者はビジネスホテルに滞在してもらうなどして、どうにか完成まで待ってもらった。

●土地から買うリスクを1棟目で経験
15年経つ今、1棟目はいい稼ぎ頭に
購入してから15年経つ今も1棟目は保有している。「死ぬまで売らない」と考えているほど、駅前立地を活かした高収益物件となっている。一部はトランクルームにしているが周辺にトランクルームがないことから、重宝されている。
「今、土地から買って新築する手法が、一部で流行っていますよね。自分で土地を探して、安い建築業者で建てれば、利回りが高くなると思われています。実際に3棟、土地からやってみて思ったのは、この手法はリスクが高いということ。
都心では、近隣とのいざこざも少なくなく、業者が飛んでしまったり、職人が確保できなかったり、遅延やコストオーバーランなど、いろんなリスクがあります。地方であったり、信頼できるパートナーがいたりするなら別ですが、利回りが多少下がっても、初心者は開発リスクのない物件を購入したほうがいい」
●2棟目は土地が安く、家賃が高いエリアを
独自にリサーチ! 南町田と久里浜が候補に
1棟目の完成を待たずに、2棟目を探し始めていた菅井さん。次は土地が安く、賃料高く取れるところがいいと考え、独自に経済雑誌を読むなどしてリサーチ。その結果、南町田と久里浜が候補に。銀行員として担当していたエリアの中に久里浜があったため、久里浜に絞って、土日に集中的に不動産屋に飛び込み、物件を探し回った。

「たまたま見つけたのが、築4年のRCで2DKが9戸。5700万円ぐらいの売価価格に対して、6000万円とオーバーローンの融資が出て、購入しました」
山の斜面にあり、落ち葉がすぐにたまるなど管理の手間がかかるが、大きなトラブルはない。2軒目を購入した同じ年に、3棟目も同じ久里浜エリアで購入するのだが、それがトラブル続きの物件となる。後編では、大きな試練となった3棟目と、サラリーマン大家さんや、これから不動産投資を始める方への菅井さんからのアドバイスを紹介する。
(後編につづく)
健美家編集部(協力:高橋洋子)