「今はメガ大家さん」が最初に買った物件を聞く本連載。今回は12棟200室のメガ大家、天野真吾さんにお話を伺った。
前編では、企業再生を手掛けてきた経験を活かして、大型物件の再生事業に取り組むことに決め、空室率50%の1棟目を購入した経緯について解説した。
後編では、1棟目の空室は埋まったのか?
2棟目はどんな物件か?
その後、4棟目にして、1棟で生涯年収をはじき出す利益を出した話や、不動産投資を始める人へのアドバイスを紹介する。
空室率50%から早々に満室へ!
上々のスタートとなるも、そこが反省点に
1棟目は、福岡の博多駅から私鉄で4駅、駅から徒歩20分ほどの空室率50%のシングル向け物件を購入した。周辺に競合物件がほとんどないことから、必ず埋まると確信していた。空いていた全部屋に、明るい色の壁紙を貼り、家具を設置するなどステージングを行った。
「全室のカラーリングや家具を変えた理由は、この物件の中で、入居希望者には、いくつか部屋を内覧してもうらおうと考えたから。ほかにこんなことをやっている物件がなかったこともあり、みるみる入居が決まり、満室に」
1棟目は、5000万円で購入したが、7~8年間所有して、8500万円で売却した。キャピタルゲインは3500万円、インカムゲインは2000万円で、5000万円の利益をもたらした。今振り返って、1棟目に点数をつけるとすると90点だという。
「10点減点したのは、満室を急いだがために、家賃設定が安すぎたからです。2~3カ月で満室になりましたが、今思えば、早く決まり過ぎるのもよくない。1カ月に1室ずつ決まるペースでよかった。家賃5万円がベストなら、4万8~9000円で着地させるべきところを4.5万円ぐらいにしてしまった」
2棟目は空室率70%の任意売却物件
破格の安さでRC、築10年を手に入れる!
1棟目から半年後、次は愛知県名古屋市で2棟目を購入する。探した条件は同じく、地方の大都市圏で、RCで、利回り10%以上、築20年以内で探した。
「愛知県もまた1棟目と同じく、縁もゆかりもない地域でした。これが豊橋だったら買っていなかった。名古屋なら、それほど価格は落ちないだろうと思っていました。
最寄りは金山駅、日比野駅で、名古屋駅から少し外れた場所。実はターミナル駅からちょっと外れるだけですごくいいエリアがあるんです。東京でいうなら新宿駅に近い大久保駅、東中野駅などですね」
「空室率70%で、特定の人にしかこないクローズ案件でした。まだ破産することをオープンできない段階で、信頼できる業者さんにしか情報がきていない状態で、その業者の顧客の中でも信頼できる人にしか出していない情報でした」
ここで、3カ月で100人の営業マンと会って築いた人脈がいかされた。
「2棟目は、周辺に競合物件が多く、ちょっと苦戦するかもしれないと思いましたが、築10年のRCで利回り14%なんて、なかなかないでしょう。これは買うべきだと思いました」
ただ、近くに大きなパチンコ屋があり、住環境としてどうなのか迷いがあり、1週間近く購入をためらった。
「実際に購入したら、パチンコ屋さんの店員がたくさん入居してくれて、住環境よりも、雇用があるほうがいいのだと勉強になりました」
購入後は1棟目と同じく、空室にピンクなどの鮮やかな壁紙に変えて、家具家電を付けるなどのステージングを施し、魅力的な居室に。入居者が望めば、そのまま家具や家電を付けて貸すことに。
2棟目は、1億円で購入して、6年程保有して、1億5500万円で売却。キャピタルゲインは5500万円。インカムゲインは3000万円、利益は8500万円。ただ、これもまた点数をつけるとすると、90点だという。
「1棟目の成功体験があるにもかかわらず、買う時に躊躇したのが減点ポイントです。競合物件が多いため、需給バランスを見たときに、買う確信が持てなかった。今思えば、即決断すべきでした」
4棟目にして、1棟で、会社員の
生涯年収を稼ぐ物件を手に入れる!
その後、2011年の東日本大震災があった年に法人化をして、4棟目を購入する。4棟目は、東京都板橋区で、空室率70%。地下駐車場のある物件だ。これもまた相続物件で、相続した人がやる気がなく、破産寸前の任意売却で、3億4000万円で購入。4年保有して、4億9500万円で売却。なんと、1億5500万円のキャピタルゲインをもたらした。
「だいたい空室率50%以上で購入して、2年で安定経営させ、5年ぐらい安定稼働したら、市場に出して行くという自分なりの形ができていました。
4棟目も同じような感じで市場に出したら、1棟で1億5500万円のキャピタルゲインが出て、生涯年収ぐらいの利益になりました。これは自分のビジネスの理想形で、これに集中した方がいいと察しました」
最後に、これから不動産投資を始める方に向けたアドバイスをいただこう。
「大事なのは、物件を買うためのノウハウなどではなく、そもそも不動産を通して、何を実現したいのか? 不動産のなかでも、やりたいのは何なのかを明確にすることです。そして、それまで培ってきた自分の強みを最大限に活かすこと」
「会社員を辞めたい」「ラクして儲けたい」などの理由で参入すべきではないと警鐘を鳴らす。なぜなら、不動産は金額が大きいため、一度失敗したら、大きなダメージを負うからだ。
「苦労した先に手にした経験こそが財産。お金が財産ではない! 失敗したら、そこからどうしたら転換できるかが大事。これらを肝に命じて、ぜひ1歩踏みだしてほしい」
健美家編集部(協力:高橋洋子)