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「まかない付き下宿風」アパートを満室経営 築50年の空き家をリノベ 戦略ともてなしの心がカギ オーナー夏山栄敏さん

不動産投資全般/投資家インタビュー ニュース

2020/02/06 配信

2棟で計20室、食堂は交流の場に
外国人、シニアも入居はOK

住み込みのまかないがついた下宿風、周りには緑豊かな「生田緑地」の自然…。2階建て賃貸アパート2棟からなる「クロスコート向ヶ丘」(川崎市多摩区東生田)は、聞くだけでワクワクするような、こんな特徴を備えている。

空き家として放置されていた築50年以上の建物をリノベーションした物件だが、満室で稼働中。運営するのは、サラリーマン時代から買い進めた物件が14棟126室に上る「戦略的不動産経営者(ランチェスター戦略インストラクター)」の夏山栄敏さん(62)だ。長く保有する視点で綿密に戦略を練り、持っている物件は現在、いずれも、ほぼ満室という。

食堂兼リビングで取材にこたえる夏山栄敏さん
食堂兼リビングで取材にこたえる夏山栄敏さん

まずは「クロスコート向ヶ丘」の特徴を見てみよう。小田急線「向ヶ丘遊園」駅から徒歩9分。緑あふれる「生田緑地」の敷地内にあり、「春にはタケノコがよく取れます」(夏山さん)。

アパートは1号棟1階に10室、2号棟に10室の合計20室、さらに1号棟2階には入居者向けの食堂兼リビングとレンタルスペースがある。建物全体は、外側を黒くペイントし重厚感あるものとした。入居者用の部屋はそれぞれワンルームで、風呂、トイレ、キッチンがついている。家賃は月5万円前後だ。

1号棟の外観
1号棟の外観
2号棟の外観
2号棟の外観

若い入居者が多いが、シニアもいる。4割くらいが外国人で、国籍はネパール、韓国、中国、オーストラリアなどさまざまだ。仕事をしている人も、日本語学校に通っている人もいる。

特徴は、入居者どうしが交流できるアットホームな雰囲気だ。故郷を遠く離れて日本に来ている外国人にとっても、心温まる空間となっている。

たとえば、和室の食堂では、長い食卓を大勢で囲む。会話を楽しみながらの朝食は200円、夕食は500円。調理しているのは夏山さんの妻の妹夫婦で、夫はプロの料理人だ。夫婦で住み込み、管理もしている。

食堂兼リビングで、食卓を囲んで大勢で交流
食堂兼リビングで、食卓を囲んで大勢で交流

夏山さんは「食堂ではいろいろな話をするので、外国人の入居者はかなり日本語がうまくなりますよ」と話す。

庭には、「YouTubeを見て自分で作りました」というバーベキューコンロが置かれている。パーティーなどもよく行われ、取材した昨年12月には、餅つきに備えた杵と臼が用意されていた。入居者たちにいかに楽しみながら、心地よく住んでもらうか、あれこれアイデアを出すことが夏山さんの楽しみのようだ。

手作りのバーベキューコンロを囲んでのパーティー
手作りのバーベキューコンロを囲んでのパーティー

壁やふすまは大家仲間とDIY
ポータルサイトも使い入居者集める

だが、こんな楽しいアパートも、夏山さんが2018年1月に現金で買ったときは、およそ築50年の「捨てられた空き家」だった。

「最初はボロボロでした。建物は傾いているし、シロアリが食っている。大きなハチの巣がありましたが、巣の中は〝空き家〟でよかったです。(笑)」
壁をしっくい塗料で塗ったり、ふすまや障子を張り替えたりの作業は、大家仲間に手伝ってもらい、DIYでやった。一方、建物の傾きの修正や崩れた壁の補修、下水工事などは、プロにお願いした。結果的にリノベーションの費用は、購入額と同じくらいになった。

もともとは、築およそ50年の空き家だった
もともとは、築およそ50年の空き家だった

アパートとして貸し出すのに向けイメージしたのは、東京下町のレトロ感が溢れる「谷中銀座」周辺で人気を集めている古民家だ。

「知り合いの不動産屋さんや大家さん、建築士さんが空き家をおしゃれにリフォームした、かっこいい物件がいくつもあるんです。古民家の魅力は、新築と違う、贅沢な作りが楽しめることです。クロスコート向ヶ丘も、たとえば1号棟の玄関には木の階段があり、その踏み板には、今では考えられないくらい、太くしっかりした板が使われているんです」

ほかにも、1号棟の2階には、元オーナーが日本舞踊などに使っていたであろう舞台部屋や、茶釜が置けるような茶室があった。

18年9月にリノベーションが終わったクロスコート向ヶ丘は、「昭和の旅館風」「まかない付き下宿風」「管理人が住み込み」「緑豊かな自然環境」といった、ほかの物件との差別化できる要素がたくさんあった。

しかし、募集を普通の不動産屋に任せても、「規格から外れる」ため、なかなか入居者が決まらない。そこで夏山さんが利用したのが、たとえば、オーナーと入居希望者が直接やりとりできる「ウチコミ!」などのポータルサイトだった。直接物件にきて「おもしろい」と思ってくれる人が多く、入居者がどんどん決まるようになった。

入居者に関しても、敬遠されがちな高齢者は「基本的にはウェルカムです」と門戸を開いた。外国人も「不動産屋さんやインターネットを通じて募集するほか、日本語学校にも声をかけています」。基本的に日本に来ている外国人は裕福で、就職している人も身元がしっかりしているので、家賃の支払いは「全然問題ありません」。

保有する物件は計14棟126室
スタートは9000万円のRCマンション

このように、特色あるアパートの経営を成功させている夏山さんだが、意外と不動産投資家としての歴史は浅い。始めたのは07年、まだサラリーマンをしていたときだ。MBAの資格を持ち、大手の製薬会社をいくつか転職しながらマーケティング部長や研修部長を歴任したエリートだが、年金など、将来に不安があったのが始めたきっかけだった。

1年ほど勉強した後、初めて買ったのが、三重県の松阪駅から徒歩15分ほどのところにある、2LDKが12戸の中古マンション。「満室で、利回りは11%くらいでした。健美家のサイトで見つけた物件です」。

築5年のRCで約9000万円したが、メガバンクからフルローンで融資を受けられた。
「人生が変わった」のは、2軒目として、埼玉県の西所沢駅近くに、8階建てのファミリー向けRC造のマンションを買ったことだ。利回りは13%程度。約1億7000万円で、頭金を1000万円ほど入れローンを組んだ。

「すごく評価の高い物件でした。今も所有していますが、安定しています。ファミリー物件は、長く住んでもらうことがポイント。この物件は駅から近いし、所沢自体がにぎわっているんです」

その後は、東京都心や埼玉県内で土地を仕入れてマンションを新築する手法などにも手をつけ、14棟を所有するまでになった。

夏山さんが重視するのは「人気エリアなどより需要と供給のバランス」という。「基本的に、長く所有して大丈夫かというのが一つの指標になります。20年、30年くらい先までみた上で、ビジネスプランを立てていますね」

綿密な戦略をもとに、所有する物件の入居率は、ほぼ100%だという。勤め先は12年に辞めたが、今はもちろん、サラリーマン時代の給料を優に超える家賃収入がある。

金融機関の融資が厳しい情勢だが、「今まで付き合ってきた銀行は、まったく問題ありません」。
これからの投資戦略については、「面白い物件をやりたいですね。オーナーとしてやっていて面白く、住んでもらった人が喜んでくれるような物件です」と語る。

そして、これから不動産投資を始める人に対し、「あまり人のやらないことをするのがおいしいです」とアドバイスする。
その上で、こう語る。

「区分マンションからやり始める人が多いと思いますが、必ずしも成功法ではないと考えます。アパートを1棟買うのも区分を買うのも、それほど値段は変わりません。しかし、区分の空室率は0%か100%かの2通りで、リスクが高くなります。アパートは部屋の数の分だけ、リスクが軽減されます。最初いろいろ勉強してみましたが、僕は1棟をやって正解でした」

勉強と綿密な戦略、そして何より、住んでいる人に喜んでもらおうというホスピタリティー(もてなし)の心…。夏山さんからは、そんな成功の〝秘訣〟を学ぶことができた。

取材・文 小田切隆

【プロフィール】 経済ジャーナリスト。長年、政府機関や中央省庁、民間企業など、幅広い分野で取材に携わる。ニュースサイト「マネー現代」(講談社)、経済誌「月刊経理ウーマン」(研修出版)「近代セールス」(近代セールス社)などで記事を執筆・連載。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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