20歳で不動産投資家になろうと決意、22歳で物件を購入、2年間自分で住みながら手を入れ、24歳で完成した2階を賃貸に出した加藤達也氏。半分を貸しただけだが、それで表面利回りは8.6%。これが第一歩で、まだまだこれからという加藤氏に話を聞いた。
会社員にはなりたくない、
だから不動産投資を
加藤氏が不動産を購入しようと決意したのは20歳の時。大学受験に2度失敗、これからをどうしようかと考えて図書館で様々な本を読み、真剣に考えた結果だ。

「しょっちゅう遅刻するので会社員としては働きたくないと思いました。遅刻が問題にならない仕事は何かと考えた時に思いついたのは大家さん、不動産投資家でした。そこで投資に関する書籍を読み、何がリスクになるのかを考えました。その結果、入居者を獲得するためにはきれいで他物件との違いがあれば良いと思うに至ったのですが、それを実践として考えるとリフォームが大事だなと。そこでハローワーク経由でリフォーム訓練校に通うことにしました」。
自分で物件をいじれれば出費を抑えられるし、大工は80歳、90歳になってもできる仕事である。技術を身につけておいて損はないと考えたのだ。
そこで半年ほど通って基本を身に付けたところで、縁があって工務店に勤務することに。そこでも遅刻はしょっちゅうだったそうだが、その分、手は早かったと加藤氏。
「遅刻するので働く時間は短くなりますが、その分、時間内にやり遂げられるよう、作業効率よく仕事しようと考えました」。
購入したのは
無接道の空き家、650万円
その会社には3年勤務したが、勤務して1年目に物件を購入した。根岸線山手駅から歩いて8分、横浜市中区にある、現在トトノン山手として貸している木造2階建てのアパートで、本体価格は650万円。諸経費などを入れて700万円ほどで手に入れたという。

駅からの距離、住所だけ聞くと一等地と思うが、価格から分かるように難がある。山手は高台はお屋敷街で立派な住宅が並ぶが、急坂の多い凸凹な土地で坂の下では風景が異なる。
小さな区画に小規模な古いアパート、一戸建てが並んでおり、そのうちには空き家も多数。加藤氏が購入した物件も数年以上は誰も住んでいなかったらしく、雨漏りがひどかったそうだ。

加えて無接道である。公道からしばらく私道を入り、物件までの最後の部分は人ひとり通るのがいっぱいという幅。工務店関係者、不動産関係者からはどうしてこんな物件を買った!と怒られるやら、非難されるやらだったそうだ。
購入後は自分で住み込み、2年をかけて改修をした。雨漏り、水道本管の引き直しなどもあったが改修費は200万円まではかかっていないという。もちろん、自分でやったので本来ならかかる人件費もゼロという計算になっている。かなり大変だったようで、「次回は人を入れて一緒にやりたいですね」とも。
設備類は
ヤフオク、メルカリで安く購入
面白いのは設備類の購入。ヤフオク、メルカリなどをフル活用して、ホームセンターで買うよりはるかに安く手に入れているのである。たとえば2階は元々風呂無しの2室があったのだが、それを1室にして水回りを設置しており、そこに入れたトイレはメルカリで新品を購入。4万円ほどだったという。

また、ユニットバス、給湯器はヤフオクで購入。ユニットバスは新品で11万円ほど、給湯器は中古だったが3万円ほどで、それ以外の工具その他を含めて全体で16万円前後だったという。

ひとつ、失敗したと思ったのは1階のトイレで、こちらは最新に近い機能の付いた商品で中古で5万円。それ自体は安いのだが、購入後に基板の修理が必要であることが判明、それに3万円ほどかかったという。中古品の場合、修理が必要だと高くつく可能性もあるわけだ。
ちなみにこうしたネットオークションは店と違い、いつでも欲しい品が揃うわけではないものの、1週間も見ていれば欲しい品が出てくることが多いのだとか。急に必要という場合には向かないかもしれないが、1週間かそこら待つ余裕があれば問題はなさそうだ。
また、分からない作業についてはYouTubeを参考にしたという。たいていの作業の動画はアップされているので、それを参考にすればかなりのことができるそうである。
黒い部屋にプロは疑問、
ユーザーは殺到

そして完成した2階の部屋は33uの2DK。入ったところにDKがあり、キッチン、水回りを挟んでもう1室というもので、黒い内装にオレンジの建具、水色のトイレと個性的なカラーリングが印象的。外装にも黒を使っているのだが、これも不動産等のプロからは不評。こんな部屋で借り手がつくのかと言われたという。



だが、消費者はこの部屋に殺到した。募集を担当したオリエンタルサンの山田武男氏によると募集開始以降電話が鳴りやまず、問い合わせが15件、内見が4件あり、うち一目惚れしたという女性が借りることになった。募集開始から入居までで1カ月ほどである。

「物件そのもののビジュアルが非常に映えることに加え、水道、ガス代が賃料に込みであること、坂が大変なことを見越して電動自転車をプレゼントするとしていたこと、この3点が他との大きな違いとなり、あっという間に決まりました。他と違う物件を作ることの強さを実感しましたね」。

賃料は6万5000円。物件価格700万円に改装材料代200万円(実際にはそこまではかかっていないそうだが)を足した900万円で6万5000円の賃料を考えると、表面利回りは8.6%。半分しか貸していないのに、良い数字である。
滞在して修理という手段
ちなみに最初の資金は親から借りたという。大体の場合、1軒目の投資は資金をどうするかがもっとも大きなハードルになることを考えると、その点は非常に恵まれている。
だが、1軒目をクリアできればそれが次の投資への大きな助けになることを考えると、若いうちの投資なら親に頼るのも手ではなかろうか。
加藤氏は現在、会社は辞めているものの、月に数回、声をかけてもらって仕事をしているそうで、「それほどお金を使うタイプではないので、家があり、多少の仕事があれば十分暮らしていけます」とのこと。
加えて今月からしばらくは訓練校時代の先生に言われて、使われていない別荘のリフォームをしに行くという。
滞在しながらの工事とのことで、今回は他人の所有する不動産だが、以降自分が所有して滞在、手を入れて貸すというやり方を繰り返せば、資産を増やしていくことも十分可能。自分で体を動かすことが苦にならないのであれば、この手は十分あり得るのではなかろうか。
健美家編集部(協力:中川寛子)