2004年から不動産投資を始めた大野恵さん。この17年間で、中古RC、シェアハウス、競売、中古区分、新築アパートなど、さまざまな不動産に投資をしながら自分に合う投資手法を探してきた。7年ほど前からは主に築古戸建に投資をするように。
最近では入居者が一定期間入居したら、その物件を購入できる『譲渡型賃貸』に挑戦している。これまでの経験を踏まえ、なぜ今、戸建投資なのか? そして譲渡型賃貸とは何か、話を聞いた。


RC1棟で、突発的な巨額の修繕費を経験し、
半数以上空室から満室に。家賃のありがたみを知る
大野さんが不動産投資を始めたきっかけは、2004年にRCの賃貸マンションを1棟、弟さんと共有相続したことだ。子育て中だった大野さんが管理を担うことになったが、1棟約30戸の半数以上が空室だった。
「相続した途端、屋上の防水工事と外壁の修繕に何百万とかかり、相続税も発生し、貯金がなくなる事態に。税金を支払う赤字の賃貸経営でした。大家の会に入るなどして本腰を入れて勉強し、管理会社を変えるなど試行錯誤しました。満室にしたら、家賃収入がこんなに頂けるのかと、ありがたみを感じました。」
幼い子供を連れて不動産会社を訪問したり、物件調査をしたりするうち、子育て中でもできる仕事であることもわかり、本格的に不動産投資を行うことに。
大震災で退去続出、億を超える借入のストレスも経験。
色々な不動産に投資をし、戸建ての魅力を実感
不動産投資を始めた当時、大家の会など学べる場も少なく、どのような手法が自分に合うのか分からなかったことから、さまざまな不動産に投資をすることで学んでいった。
「最初に購入したのは東京都下で築2年、利回り12%ほどの大型シェアハウスでした。まだシェアハウスが珍しい時代でした。ほかにも中古区分や借地権に新築アパートを建てたり、競売で落札したり、所有権の新築アパートを購入したこともあります」
東日本大震災の後には、外国人向けのシェアハウスの入居者の多くが母国に帰ってしまい、23戸のうち3分の2が空室に。
「空室が発生しても返済は待ったなしです。億を超える借入をしているときには、不安で眠れないような日も、正直ありました」
7年ほど前から神奈川県内の戸建に投資するように。戸建の入居者はファミリーが多いことから退去が少なく、庭などの管理を入居者に任せられるなど、戸建投資の魅力を実感しているそうだ。
「不動産投資で一番避けたいのが突発的な巨額の出費です。最初に経験して懲りました。古い戸建は何かと修繕がかかるものの、RC1棟に比べれば修繕費も税金も安い! RCの場合、どこから漏れているかわからない水漏れで多額の請求をされることもありますが、戸建ての場合、水漏れなどの原因が調べやすく、費用がかかっても限度があるため、気が楽です」
一定期間入居したら、入居者が物件を購入できる
譲渡型賃貸「マリアージュ賃貸」にチャレンジ
大家業をやるなら女性に優しい賃貸をやりたいと思っていた大野さん。離婚を経験し、家を借りる際に苦労した経験を持つ。
「不動産会社の女性担当者と出会い、大家さんへの交渉などを粘り強く行ってくれたことで、家を借りることができました。安心して住める場所があると、親子ともに安定します。シングルマザーの場合、預貯金がそれほどない人が多く、子供が複数いる人が少なくありません。そうした状態だからこその住まいのニーズがあると感じています」
大野さんは現在、日本シングルマザー支援協会に所属し、11月14日にはシングルマザーを対象に住宅相談ができる会を主宰するなど、支援活動を行っている。そうした想いのなかで出会ったのが、ファーム建設が行う譲渡型賃貸「マリアージュ賃貸」だ。
譲渡型賃貸とは、入居者が10年〜16年程、通常通り家賃を支払うと、物件の所有権をえられる仕組みである(現在、ファーム建設が特許出願中、詳細はファーム建設のホームページを参照)。
「この仕組みは、マイホームが欲しくても、なかなか購入できないシングルマザーなどが家を買うチャンスになり、頑張るモチベーションになると感じました。物件を貸す投資家にとっても、長く住んでもらえる可能性が増し、退去リスクを軽減できるメリットがあります。」
大野さんが譲渡型賃貸を試した物件は、神奈川県横浜市内で、駅徒歩13分、再建築不可で築50年ほどの戸建である。信頼関係のある不動産会社の紹介で、300万円で売りにでていたものを180万円で購入、420万円かけてリフォーム。入居者を募集したところ、今回はシングルマザーではなく男性の単身者で入居者が決まり、家賃8万円台で入居している。
「入居者の方は、大変気に入ってくださっていて、購入を前向きに検討されています」
入居者は賃貸の契約の際、数年後に購入することも見据えて、ファーム建設から売買の説明も受けることになる。再建築不可ならば、それも理解したうえで入居する。




投資家にとって、譲渡型賃貸のデメリットは、キャピタルゲインが狙えないことだ。入居者が長く住めば住むほど、売価がどんどん安くなる仕組みであるからだ。また、通常の2年更新の賃貸借契約を結ぶため、入居者が数年で退去する可能性があることも覚えておきたい。
「キャピタルゲインが狙える、立地のいい物件や築浅物件には不向きです。再建築不可や田舎の空き家や、相続したけどどうしようもないような不動産には向いていると思います。」
入居者に喜んでもらうだけではなく、入居者の自立や今後の人生に役立つ住まいを提供していく。さまざまな不動産に投資をした経験を経てたどり着いた、女性投資家ならではの着眼点だ。
健美家編集部(協力:高橋洋子)