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物件購入+リノベで300万円の物件を月額8万円で賃貸。自分の腕で資産を生む団地リノベ

不動産投資全般/投資家インタビュー ニュース

2022/01/10 配信

11年前、住宅ローンに縛られたくないとキャッシュで埼玉県入間市の団地を購入。自分で手を入れては貸すを繰り返し、現在では9室を所有するようになった人がいる。合同会社団地生活デザインの山本誠氏である。団地を利用、自分の腕で着実に資産を増やしてきた道のりについて聞いた。

民間の団地ばかり9室を所有

広大な土地に住棟が並ぶ。バス停も敷地内にある
広大な土地に住棟が並ぶ。バス停も敷地内にある

訪れたのは埼玉県狭山市にある新狭山ハイツ。1974年から1975年にかけて建設されたRC造の5階建て、全777戸の団地で、西武新宿線新狭山駅からはバスで10分ほど。ただ、バスの本数が1時間に1本と少なく、足となるのは車か自転車だという。

案内図。駐車場は敷地内、周辺に用意されている。店舗棟も1棟だけある
案内図。駐車場は敷地内、周辺に用意されている。店舗棟も1棟だけある

その分、団地内は静かで、現在から考えると信じられないほど敷地にはゆとりがあり、各棟の間も広く取られている。駐車場も敷地内、敷地外を併せれば必要台数は確保されているそうで、車、自転車などで移動する人ならのんびり暮らせそうな場所である。

「ここは大成建設が手掛け、有楽土地が販売した民間の分譲団地で、公団よりも階段などが広く作られています。その点が気に入り、2軒目としてこの団地で購入したことに始まり、民間の団地ばかりを購入。

具体的にはこの団地ともう1件、同じ時期に建てられた入間市の西武狭山グリーンヒルで、ここで最初の物件を購入しました。西武狭山グリーンヒルも駅からはバス便ですが、本数が多く、かつ団地のすぐ前にショッピングセンターがあるので利便性ではそちらのほうが上です」。

取材にお邪魔した新狭山ハイツは築年数は経ってはいるものの、きちんと管理されており、12年前には大規模修繕で外壁をやり直している。居住者は65歳以上が7割以上と高齢化は進んでいるが、管理組合は機能しているのである。

団地のイメージを一新、広さを感じるリノベーション

リビングから元々は個室だった部分を見たところ。シンプルな内装
リビングから元々は個室だった部分を見たところ。シンプルな内装
上の写真、右側にあったのはこんな和室。それを収納部分も含めて部屋にしてある
上の写真、右側にあったのはこんな和室。それを収納部分も含めて部屋にしてある

その新狭山ハイツで現在山本氏が手掛けているのは元々は3LDKだった67㎡の部屋。見せていただくと玄関近くの洋室6畳はほぼそのままだが、それ以外は収納を除去、ダイニングとリビングの間に壁はあるものの全体が広いLDKになった状態。水回りも既存のスペースを広げ、ゆったりした洗面台が置かれている。

工事中の水回り部分。広い玄関ホールの一部を水回りにすることで広さを確保している
工事中の水回り部分。広い玄関ホールの一部を水回りにすることで広さを確保している
元々の風呂場はこんな感じ。あまり選んでもらえるとは思えない
元々の風呂場はこんな感じ。あまり選んでもらえるとは思えない

「団地は狭いものと思っている方が多いので、その概念を打ち破る、ギャップのある間取りにしようと水回りには必ず手を入れます。といっても水回りはお金をかけ出すと大変。ユニットバスにすると100万円はかかる。そこで、ここでは床にシートを敷き、壁は塗装をして、そこまでで材料費が3~4万円。そこに給湯器、風呂を交換して20万円ちょっとで仕上げます」。

室内もガス、給排水のようにプロにやってもらう必要があるもの以外は山本氏が自ら作業をする。電気については2軒目に購入した物件での電気工事の配線の回し方に納得がいかなかったため、自分でやろうと資格を取得したという。

イケアのキッチンを利用、天板以下は自分で組み立てたもの
イケアのキッチンを利用、天板以下は自分で組み立てたもの
元々のキッチンはこんなタイプ。これまた選ばれそうにない
元々のキッチンはこんなタイプ。これまた選ばれそうにない

「キッチンはイケアで天板、シンクなどを購入して設置。キッチン周りはタイルを剥がすと産業廃棄物になって処分に費用がかかるなど面倒が多いので、上に板を付加し、その上からタイルを貼っています。壁には断熱材を入れてあります。リビングには間仕切りになる棚を設置する予定で、それによってリビングの隣を部屋として緩く仕切って2LDKのように使うこともできるようになります」。

リビングの施工途中の様子。自分でやれば材料費だけでさほどかからないと山本氏
リビングの施工途中の様子。自分でやれば材料費だけでさほどかからないと山本氏

インテリアのテイストは非常にシンプルで、でも空間は広々。住んだ人が自分の好きにできるようになっているのが特徴だ。山本氏は団地の選び方やリノベーション時の注意点、実際に行われているリノベなどについてブログを書いているので、ご覧いただくと様々なノウハウを垣間見ることができる。

すべてを新しくするわけではなく、使えるところはそのまま使う。ところどころにレトロな雰囲気があるのも面白い
すべてを新しくするわけではなく、使えるところはそのまま使う。ところどころにレトロな雰囲気があるのも面白い

ちなみに同団地で不動産ポータルを検索すると分譲物件、賃貸物件それぞれが出てくるが、いずれも山本氏がリノベーションしている部屋とは大違い。現在680万円で売り出されている67㎡の部屋は和室、洋室にDK、リビングと細かく部屋が別れており、無味乾燥なインテリア。今時の若い人には選ばれそうにない。

賃貸で過去に出ていた49.15㎡の2LDK4万円~4万4000円の部屋は元の和室、水回りそのままで内装だけをきれいにしたというもの。写真を見ると山本氏の部屋とは全く異なり、団地のイメージそのままであることが分かる。

最初はほぼ外注、徐々にできることを増やす

山本氏が初めて団地を買ったのは11年前。住宅ローンに縛られたくないとキャッシュで買える物件を探して団地に行きついたのである。

「包装資材の機械を設計する会社を経てアメリカのバイク整備学校に通い、日本でもバイク屋で働いていたのですが先行きが見えない状態。そこで住みながら部屋を直して、それを貸すというやり方を思いつき、前述の入間にある、西武狭山グリーンヒルの5階を350万円で買いました。ちょうど東日本大震災の前でした」。

この時点では不動産には全く素人である。そのため、最初の部屋は工務店に下地、設備等を依頼、自分では床、壁とデザインを手がけることにした。工務店には300万円を支払った。その後、仕事をしながら少しずつ手を入れ、完成したのは震災があった年の8月。

「2010年11月に購入、解体後、工務店の作業が終わったのが6月でそれからDIY。住みながら手を入れようと思っていましたが、決局、全部やらないと住めないということが分かり工事終了後に入居。去年の9月までそこに住んでいました」。

その次に買ったのは新狭山ハイツの5階。エレベーターがないため、5階は他の階よりも手頃な価格になっており、198万円。

「2012年7月に購入、下地は工務店、設備はプロに頼みましたが、それ以外は自分で施工、今はシェアハウスにしており、3人が暮らしています」。

この後に前述したように電気工事の資格を取得しているのだが、その理由は他人に頼むと物件へのこだわり、愛情がない作業になってしまうことが不満だったというもの。

「楽しんで良いものを作れば、それを見てくれる人はいます。それに全部を外注にしてしまうと儲けも出にくくなります。だったら、自分でできることはやろうと考えたのです」。

住んでいるから仕入れも安くなる

その後、3軒目までは工務店に依頼をしたが、ここで床の仕上げがフラットでないことが気に入らず、工務店とやりとりした結果、自分でできるのではないかということに気づき、以降は自分でやることに。

その結果、施工にかかる費用は各段に下がった。現在手掛けている部屋は材料費、ガスと給排水の外注費を併せて120万円ほどで仕上げる予定で、これまでに手掛けた部屋も110万円前後などと圧倒的に安い。自分の作業費が入っていないからだが、それは後日の家賃で回収すれば良いのである。

長らく同じ団地に住んでいることで仕入れも安くで済んでいる。

「昨年までは取り扱う不動産会社が団地専門の東日本住宅さんだけでしたが、今年になってからは郊外が活況だからでしょうか、大手も含めて複数の不動産会社が入ってくるようになり、価格は上昇傾向にあります。買取再販の会社も入ってきているほどです。

でも、私の場合は不動産会社は経由せず、直接手放したい人から買っています。団地内にはなんとかして手放したい人も多く、そうした人たちから残置物も含めて買い取っているので部屋の階数、状態にもよりますが、200万円以内くらいでしょうか。残置物があると40万円ほどは安くなります」。

購入後は残置物を処分、室内をリノベーションして貸すことになるが、この団地内の3LDKの相場は月額6万円行かない程度だが、現在手掛けている部屋は8万円に設定する予定。同じ広さの2階の部屋を7万8000円で貸しており、その感触から8万円でも問題ないだろうと判断しているという。200万円で購入、100万円ちょっとをかけて改修、月額8万円で貸すというのである。

ただ、ご存じの通り、集合住宅では管理費、修繕積立金が必要で、この団地の場合は月額1万7000円。8万円の家賃が入っても、それを支払う必要があるため、実際に残るのは6万3000円。それでも都心の最近の利回りを考えると良い数字である。

管理費、修繕積立金をどう考えるか

ところで、古い物件をリノベーションして貸すことを考えた場合、比較的多く選ばれているのは一戸建てである。だが、山本氏は管理費、修繕積立金が必要であるにも関わらず、団地を選んだ。

「確かにその分収益が減るのは確かですが、戸建てでもいずれ修繕をする時のために自分で費用を積み立てておかなくてはいけません。それに集合住宅であれば手を入れるのは内部だけで済み、戸建てのように躯体をいじる必要がありません。躯体をいじるとなると素人の手には負えず、どうしてもプロに頼まざるを得ない部分も出て修繕費用が嵩む。それを考えると、躯体がしっかりしている集合住宅を選ぶ意味はあると思います」。

もちろん、そのためには修繕積立金がきちんと積み立てられているか、大規模修繕が行われてきたか、日常の清掃が適切に行われているかなどは要チェック。全体が良くなければ各戸を良くしても魅力的にはならないのである。

畑の存在が様々な人を呼びこんでいる

ところで冒頭に駅からは遠いと書いたが、実はこの新狭山ハイツにはそれを補い、さらにプラスになっているメリットがある。畑だ。

借りている畑。団地からは歩いてすぐ。食費が浮くだけでなく、そもそも、野菜作りが楽しいと山本氏
借りている畑。団地からは歩いてすぐ。食費が浮くだけでなく、そもそも、野菜作りが楽しいと山本氏

「この団地に住んでいる人は近所に畑を借りている人も多く、私も借りています。それを入居者に貸しているのですが、それがここで借りたいという人の一番のモチベーション。ファミリーのみならず、単身女性、若い人からも畑付を借りたいと問い合わせがあり、シェアハウスの人も畑で来ました。私は20坪を年額5000円で借りていますが、この辺りで借りるならそれほど高くはありません」。

さらに最近はテレワークの人からの問い合わせも増えた。郊外ではネット環境がネックになることもあるが、この団地の場合は建物までは光が来ており、棟内は電話線利用。それでも普通に動画が見られるほどというから、ネックになることはない。

今年に入ってから他の不動産会社が入るようになっているのは郊外の団地にも今後はニーズがあると踏んでのことだろう。価格が上がり始めているとはいうものの、まだまだ安値で買える部屋もあるはず。また、ここ以外にも条件の揃った団地は多数ある。

そうした物件を自分でバリューアップ、資産にしていくのも手ではないかと思う。最初の1件だけではそれほどの収益にならないにしても、それが少しずつ積み重なっていけば10年後、20年後には大きな資産になる。長期計画で始めてみるのも面白いのではなかろうか。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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