銀行、保険会社勤務を経て、40代で会社員を辞めて起業した渡邊 智夫さん。パソコン教室や学習塾、不動産会社などの経営が順調だったこともあり、3年前から個人で空き家投資を始めた。
現在は空き家12戸目に。投資総額5150万円。年間賃料は計870万円、総利回りは16.89%。無借金で、現金購入しており、退去も空室もない。この【前編】では経営手腕のある事業家が、なぜ空き家投資を始めたのか? どんな空き家をどうやって買い進めたのかなどをご紹介する。

金銭的・時間的自由をえるには事業主や投資家に。
1戸目の300万円の空き家で、空き家投資に開眼!
15年間勤務した銀行が破綻し、フルコミッションの保険会社に転職した渡邊さん。同僚から、書籍『金持ち父さん、貧乏父さん』(ロバートキヨサキ)をもらったことを機に、金銭的自由を手に入れるには会社員や個人事業主ではなく、人を雇う事業主か投資家にならないといけないと考えるようになった。
「40代で会社を辞め、パソコン教室を手始めに、船橋で学習塾を始めました。大きなショッピングセンターができるというので出店すると初年度で2000万円の売り上げになる大当たり。学習塾を最大6ヶ所に拡大し、沖縄で放課後デイサービスも運営するようになりました」
さらに不動産業にも手を広げ、空き家の相談を多く受け、空き家に目を向けるように。個人で不動産投資を始めたのは3年前。会社経営が順調で、さらに株の儲けで自由に使えるお金があったことがきっかけだ。
しかし最初から空き家を買おうと思ったわけではなく、東京・幡谷でファミリー向けのマンションを買う際の条件として、千葉・市原の空き家300万円も一緒に購入するように頼まれ、購入したことが始まりだ。
「空き家は売却する予定でしたが5LDKで状態がよく、78万円程でリフォームを施し、地元の不動産会社で入居者を募集すると6万5000円の家賃で、約1ケ月で入居者が決まりました。利回りを計算すると20.6%。いまどき利回り20%の投資はないでしょう。これは株なんてやっている場合じゃない。空き家投資が面白いと思ったのです」

空き家投資では、東京から70km圏内を狙うべし!
50km圏内では家が高すぎる。地価と家賃は比例しない
渡邊さんが空き家投資をするうえで心がけたことは、とにかく安く購入することだ。
「勤めていた銀行の標語に『利は仕入れにあり』という言葉がありました。できるだけ安く買い、そこその相場で売れば利益は出るとの意味です。空き家も同じく、安く購入すれば損はしない。出口戦略として、空き家で売れなくても更地にして新築を建てて売ることもできると考えました」
利益を出すためには、安く空き家を買って相場の賃料で貸さなくてはならない。そこで着目したのが『立地』である。
「調べていくと、首都圏でも東京から50km圏内の船橋や習志野あたりは地価が高く、古い戸建でも売値が2000〜3000万円、家賃は8〜10万円弱。それが東京から70q前後離れた場所(千葉なら市原、茂原、東金、袖ケ浦など。埼玉なら加須とか久喜など)になると500万円ぐらいで売られている家が山ほどあり、家賃6万5000円〜7万円程。賃料は地価に比例しないと気づきました」
さらに空き家投資を続けていくなかで面白いことに気づいた。
「売られている家には2種類あり、自分が住んで愛着がある家と、たまたま相続でもらった愛着がない家。愛着のある家は指値をしても安くなりません。住んでいた家を指値されるのは嫌なものでしょう。しかし愛着がない家の場合は指値ができます。ボロボロであればあるほど早く手放したいのか、交渉次第で安くなります」
2戸目に購入した千葉・東金市の空き家がいい例だ。売値780万円のところ、指値をして350万円で購入した。その家は所有者から見て叔母が住んでいた家で、愛着がなく、早く処分したいとのことで半額以上も安くなった。200万円でリフォームをして家賃6万8000円で貸している。
3戸目はリフォーム業者からの紹介で千葉の大網で築12年程の1LDKを購入した。
「所有者が老人ホームに入るから家を売りたいとのことで、老人ホームに入るために150万円程必要だというので、150万で現金で即購入しますと伝え、購入しました。150万でリフォームして家賃5万円で貸しています」


空き家投資のいいところは、退去も空室も、ゼロであることだという。
「3戸目のピンクハウスも、犬の多頭飼いを許可しています。なかには1年がかりで探してやっと多頭飼いできる家を見つけたという入居者もいます。この物件を退去したら次に住むところを探すのが大変だと思っているから退去しないよう」
明日の【後編】では、リフォームのコツやトランクルーム併設でダブルインカムを得る方法など、まだまだある渡邊さん流の空き家投資のポイントをご紹介する。
健美家編集部(協力:高橋洋子)