
若年層の間で不動産投資に関する興味が高まっている。老後資金2000万円問題は言うに及ばず、新型コロナウイルス感染のパンデミックにより、社会が大きく変わった。コロナ禍の外出自粛生活、業種・業態によっては営業自粛に追い込まれて経営が立ち行かなくなり、廃業・倒産の憂き目にあった人も少なくない。
年功序列の昇進や終身雇用制度も実質崩れており、企業各社はジョブ型採用にかじを切った。本業とは別に安定した収益源を確保したい、と家賃収入に活路を見いだそうとする若者が増えることに違和感はない。
こうした大家業に参入する人は、なにも民間企業に勤めている人だけでなく、申し分のない安定感のある公務員にも広がりを見せている。公的な仕事に就いている投資家は珍しくない。高校教員が数十戸の事業規模にまで資産を拡大して賃貸経営するなどプロ顔負けの個人投資家もいるが、今回はデビューしたばかりの不動産投資家に話が聞けたので紹介する。
現地に一度も行かずにオンラインで中古購入
その投資家は静岡県内の消防局に勤務する30代女性。生まれも育ちも静岡だが、去年の10月に東京都新宿区にワンルームマンションを区分で1戸購入し、2戸目を大田区で買い今月末に引き渡しを受ける予定だ。
それぞれの建物の総戸数は50戸と30戸である。両物件とも入居者のいる稼働状態でスタート。いずれも築22年の中古物件で最寄り駅から徒歩10分以内の立地である。利回りはそれぞれ4.18%と3.89%となる。月々のキャッシュフローは両物件とも共益費込みで7万2000円ほどである。
コロナ禍も相まって現地に足を運ぶ機会を逸してしまったが、契約まですべてオンラインで行った。
「最初は不安もあったが効率的に進められ、オンライン取引の抵抗感は徐々に薄らぎました。まん延防止等重点措置が解除されたので、ゴールデンウイーク中に実際に見に行きたいと思っています」
と自分が購入した物件と初めて対面する予定だ。入居者がいるので部屋の中を見ることはできないが、物件周辺の生活環境を知っておくことは重要だ。
購入にあたっては35年ローンを活用する。新宿区の物件価格は1620万円で400万円の頭金を入れ、大田区の物件価格は1720万円で100万円の頭金を投入した。とはいえ、35年間引っ張るつもりは毛頭ない。
1件目のローンは40歳までに完済する目標で繰り上げ返済を積極的にする予定だ。1件目が完済するまで2件目は放置状態となるが、55歳までに運用資産を4戸にする計画を持っている。
購入するエリアは東京23区内をターゲットにしており、資産規模を事業規模にまで増やしたり、キャピタルゲインを得るために市況を見て手放すことは考えずに持ち続けて毎月の安定した収入源、そしてお小遣いに振り向けられればと今後の賃貸経営を思い描いている。
新築押し付けに嫌気も不動産投資本で開眼
そもそもの不動産投資のきっかけについても、生活の将来不安という切羽詰まった感覚とは遠い。
聞いてみると、「大学卒業後に株式の取引をしたことがありますが、これは株主優待を狙ったものです。株の売買は証券会社の担当者におまかせだったので、自分から売り買いをする積極的な運用ではなかったです。その担当者が退職した後に証券会社との付き合いが自然消滅的になくなりました」と株で一儲けと野心を持ってのことではなかった。
その後に「金持ち父さん貧乏父さん」などの本を読んだことが不動産に興味を示すきっかけとなった。
最初の頃は、「不動産投資は富裕層が手掛けるもので、リスクも高いものだと思っていました。サブリース事件など悪いイメージも……」と不動産に対する印象は一般的な人と同じように良くはなかったが、本を読んだり、投資セミナーに参加するようになり、そこで2〜3社の不動産会社にアプローチした。
しかし、営業担当者に新築物件を執拗に進められたり、サブリース契約を迫られるなどでそれらの会社との商談は取りやめた。
悪いイメージがぬぐえない中で、読んでいた書籍で日本財託(東京都新宿区)という会社を知り、担当者の不動産投資の説明が分かりやすかったことが投資家の門を開くことにつながったという。オンラインでさまざまなアドバイスをもらい同社で契約した。
不動産投資家デビューを検討する人に向けては、「購入した物件を管理してくれる管理会社が重要だと思います」と契約までの一連の流れで強く感じたとアドバイスする。
大家業は手っ取り早い副業収入になり得る≠ニ昔から関心は高いものの、本業を持つ人にとって物件を管理することは時間的にノウハウ的に難しいためである。空室を生みにくい立地に重点を置きながら自分なりの資産形成を目指していく。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))