とんでもないボロ物件を購入して血の気の引く思いをしたが、労力と気力で、華々しく持ち直した復活ストーリーを、今回書いてみたい。まず前編では、その失敗した内容、後編では、どのように復活させたか、筆者の体験を紹介する。
■1年も買えない焦りの日々
不動産投資の勉強をはじめて1年間、まわりの投資家はどんどん購入するも、買えない日々が続いていた。高利回り物件を狙って買付をいれるも、毎回スピードで負け、連敗記録をのばし、焦りが募っていた。
このまま買えないで終わるかもしれないと思っていた矢先、チャンスは突然、訪れた。それがノールック買付した、神奈川県伊勢原市にある築25年の築古アパートだ。
なんと利回り20%。「これを買えば、一気に挽回できる!」販売図面を見た瞬間に即決、3分後に買付をいれた。
「どんな物件でも、現地を見てから買付をいれるべき」。
先輩大家さんの教えが頭をよぎったが、そんなことをしたら、また先をこされてしまう。今回、絶対にスピードで負けたくなかった。

案の定、20件強と非常に多くの買い付けがはいり大争奪戦となったが、スピードが奏功し、ご縁があり譲っていただけることになった。「ようやく、これで不動産オーナーになれる!」そう思った嬉しさは、今もよく覚えている。
但し、「スピード命」で購入したこともあり、物件の精査は、全くできていなかった。本来、建物のインスペクションをはじめ、客付家賃が妥当か、滞納はないか、原状回復状況、外壁屋根修繕にいくらぐらいかかるか等、確認すべきことは山ほどある。
根底にあったのは、「大丈夫、利回りが高ければ、何とかなる!」の精神だった。しかし、間もなく、厳しい現実に直面することになる。
■柱が3本ない、ボロボロの物件
物件引き渡し時、14世帯中8部屋が空室で、稼働率は43%と半空き以下。また、入居中の2部屋が8ヶ月と3ヶ月の長期滞納中。
その上、コインランドリー物件(部屋内に洗濯機置き場なし)で、外壁、屋根の修繕履歴は一度もなくボロボロ。極めつけは、シロアリ被害で、なんと柱が3本なかった。

実は、柱が3本ないことは、外壁屋根塗装の施工中に発覚したことで、購入時は知る由もなかった。倒壊の危険もあり、安心して入居できる状態では全くない。
高利回りだから、難題があるだろうとは思っていたが、ここまでヒドイとは、、、。完全に想定外だった。柱が3本ないと聞かされた時は、血の気がサーっと引いて立ち眩みがした。
物件は、日中でもおばけやしきのような暗さで、はたしてこのアパートに人が住んでいるのか、と思わせた。外灯は全て切れ、夜になると、スマホのライトなしでは歩くこともできない暗さだった。

隣地にお住まいの前オーナーは、優しい雰囲気の年配のご夫妻で、自主管理をされていた。そして、入居者がオーナーの優しさに甘え、滞納が続いていた。また、残債がないこともあり、満室稼働のモチベーションがなく、現状を維持すればいい、そんな雰囲気だった。

無論、客付の目線がないので、退去後も現状回復はしていない。また、アパートの外壁のところどころに、入居者が何かをぶつけたのか、大きな穴が空いており、管理状態も最悪だった。
共用部は清掃がされておらず、アパートのいたるところに、壊れた傘などのゴミが放置されていた。
敷地内のゴミ捨て場も、ゴミの分別はされておらず、散らかり放題だ。仮に、入居希望者が内見に来てくれたとしても、この状態なら入居したいと思うはずもない。退去がでれば、住人が減るの衰退を繰り返してきたのだろう。

どう見ても、1棟目としては明らかにハードルが高い、初心者には荷が重い物件だった。
高利回りに目がくらんで、精査もせずにとんでもない物件を買ってしまったのかもしれない、と途方に暮れた。株式投資なら失敗したと判断すれば、ボタン一つで損切りができるが、不動産はそうはいかない。
しかしながら、「ご縁」があったからこそ出会えた物件、不動産投資家としての経験値を上げるためにも、腹をすえて、テコ入れして必ず復活させる!ピンチはチャンス!そう心に誓った。どのように復活させたか、後編をご覧いただきたい。
執筆:親バカ大家 (石橋 仁)
https://twitter.com/hitoshi1114
■主な経歴
経済的自由を獲得したい、子供との時間を一緒に過ごしたい(幼稚園の送り迎え等)一心で、不動産投資をスタート。2015年に1棟目のアパートを購入、キャッシュフロー重視で物件を購入し、現在9棟98室を保有(返済比率37%・残債利回り17%)。大家歴8年目。
趣味は食べ歩き、旅行、そして子供と遊び、成長を見届けること。
米国株、仮想通貨にもアクティブに投資している。
座右の銘は『出来るか出来ないか、ではなく、やるかやらないか!』