最近、知り合いの不動産投資家の売却事例を聞くことが多くなった。それも、かなりの高値で売却できている。やはり、今は売り時なのだろうか。
そんな時、友人の物件に満額の買い付けがはいった。チャンスを逃すリスクを感じ、筆者所有物件でも売却検討を開始した。
■売ることを考えていなかった
筆者には、個人の所有で5年を超過する物件があるが、これまで、売却を真剣に考えていなかった。
理由を振り返ると、下記になる。
1)キャピタルゲイン(売却益)が出ても、インカムゲイン(家賃収入)が減ってしまう
2)獲得したキャピタルゲインで、良い物件を買えそうにない

1)は、キャッシュフローを積み上げることに主眼をおいていたため、手取りが減ることに心理的な抵抗があった。
ただ、遅かれ早かれ、資産の入れ替えを考えるなら、保有時のインカムゲインに見合う、キャピタルゲインを獲得できれば解決できる話だ。
2)が、かなり厄介になる。
売却を検討するほど、価格が高止まりしていることは、買う側にまわれば、なかなか物件が買えないことになる。
■市場の利回り推移を確認
2020年にコロナでリセッション(景気後退)入りし、物件価格が下落して買い場になると思いきや、むしろ上昇している印象しか受けていない。
印象ではなく、数字で冷静に判断するため、健美家にて毎月リリースしている収益物件市場動向マンスリーレポートを参照した。
2022年4月期が最新版として公表されているため、過去4年の利回り (%) を同月で比較する。
収益物件市場動向マンスリーレポート(2022年4月期)
1棟アパート利回り 1棟マンション利回り
2019年4月期 8.89% 8.30%
2020年4月期 8.79% 8.32%
2021年4月期 8.61% 7.99%
2022年4月期 8.42% 7.87%
2020年の1棟マンションの利回りが2019年より僅かに上昇したことを除けば、アパート、マンションとも、毎年、綺麗に右肩下がりしている。
数字をみるかぎり、利回りは下がり、やはり価格はどんどん上がっていることになる。真剣に売却検討すべきとあらためて感じた。
■友人の売却事例
そんな時、友人の投資家から、売りに出して5ヶ月で満額の買い付けがはいり売却がまとまりそうと、喜びの連絡があった。
詳細の記述はさけるが、千葉県、築30年以上の木造アパート、利回りは9%台だ。
上述のレポートを参考にすると、売れそうな物件だが、実は大きなネックがある。物件価格に対して、積算率が40%しかないことだ。相当、融資付けに苦労することになる。
積算が70〜80%以上あれば、静岡銀行等の融資が有力となり、利回りは8%台でも売れる可能性はあるが、積算がここまで低いと、売却のハードルは一気に上がる。
最初に、売却価格を聞いた時は、
「積算が低すぎて、満額で、売れるわけないよなー」
と感じていた。
友人も全く同じことを思っていたらしく、彼自身、満額の買い付けがはいったことに、かなりびっくりした様子だった。
売れたらラッキーで、売りに出していたこともあり、友人曰く
「売る気がないほうが、焦りもないし、売れるもんだね」

■売却のシミュレーション
友人の事例に触発され、早速、筆者の物件で、数パターン、詳細な売却のシミュレーションをしてみた。
ぼんやりと思い浮かべていた売却のイメージを、数字で可視化することができる。
ポコさん(前回のインタビュー記事)が言われていた、残債が毎月着実に減ることによる、売却時の手残りの増加、つまり、隠れた見えない貯蓄の意味も、とても良く理解できた。
売却時の手残りが、保有時のキャッシュフローの何年分あれば良いとするか等、判断はわかれるところだが、キャッシュフロー5年分以上の売却額の設定にはしたいところだ。
仮に、今年売りに出した場合と、3年後に売りにだした場合を、定性的に比較すると、下記のようなイメージになるだろうか。
2022年に売却する場合 (不動産投資市況が良い想定)
・相対的に高値で売却できる可能性が高い
2025年に売却する場合
・2022年レベルの高値で売却できるかどうかは市況次第
・3年間の残債が減った分だけ、売却時の手残りが増える
結局のところ市況は誰にもよめないので、売却判断は、投資家の考え方次第になる。ただ、いつまでもこの市況が続かない可能性は、頭にいれておく必要がある
■リセッション(景気後退)にはいる前までの売却が正解か?
現在、米国では40年ぶりの高いインフレ率を抑え込むため、FRB(連邦準備制度理事会)が急速な利上げを実施し、その影響をうけ、株式マーケットではS&P500指数が20%超下落、ベアマーケット(弱気相場)入りした。
ベアマーケット入りしたことで、今後のリセッションを予測する声も日増しに高まっている。仮に2023年にアメリカがリセッション入りすると考えるならば、連動して、日本の収益不動産価格も下落する可能性は否定はできない。(コロナ時のように、不動産価格に全く影響がない場合もありえることも、ご了承いただきたい)
上記を加味すると、少しでも売る気があるのなら、高値で売れる可能性がある今、売っておくのが正解なのかもしれない。
下記は、リセッションを見越した筆者の超希望的観測だ。
1)市況が高い今、物件を売却して、CASHを獲得しておく
2)リセッション到来で、地方を中心に物件価格が下落、買い場
が訪れる (安くなった都市部は海外投資家の買い支えを想定)
3)獲得したCASHをフル活用して、下落した物件を購入する。
■売れなくてもオッケーのスタンス
友人の事例を振り返ると、売れたらラッキーと思う金額で、売りに出し、期限を決めず気長に待つことが、ベストと感じる。
焦ると、足元をみられるし、指値に誘導されてしまうかもしれない。

売れなくても、インカムゲインが毎月入るし、毎月残債が減って、その分、将来のキャピタルゲインが増える。
もしも売れたら、インカムゲインがなくなって手残りは減るが、その分、一括で数年分のキャッシュフローのCASHを獲得できる。
つまり、
「売れなくてもインカムがあるし、残債も減るからオッケー、希望価格で売れたらキャピタルゲイン獲得でラッキー」
売却する場合は、そんなスタンスで挑みたい。
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執筆:親バカ大家 (石橋 仁)
https://twitter.com/hitoshi1114
■主な経歴
経済的自由を獲得したい、子供との時間を一緒に過ごしたい(幼稚園の送り迎え等)一心で、不動産投資をスタート。2015年に1棟目のアパートを購入、キャッシュフロー重視で物件を購入し、現在9棟98室を保有(返済比率37%・残債利回り18%)。大家歴8年目。
趣味は食べ歩き、旅行、そして子供と遊び、成長を見届けること。
米国株、仮想通貨にもアクティブに投資している。
座右の銘は『出来るか出来ないか、ではなく、やるかやらないか!』