利は元にあり、とは商売における古くからの格言であるが、不動産投資においても全く同じことが言えるだろう。物件を上手に仕入れることができれば、その分だけ高い利回り、または固い利回りが期待できるからだ。
投資家の心情として物件は少しでも安く手に入れたいものだが、そこで初心者にありがちなのが、相手の立場を顧みない無闇な指値（価格交渉）をしてしまうことである。
「鬼のような指値」という不動産投資用語もあるが、様々な条件が揃ってこそ成立するものである。ただ表面だけをなぞって”鬼指し”を連発していては、買える投資家になることは難しいだろう。
だが、なかには今回紹介するTEL指し系大家あごさん（以下、あごさん）のように、土地値（固定資産税路線価）1,000万円超、売り出し価格780万円の戸建を100万円で購入するなど、破格の指値を次々と成功させている投資家もいる。
しかもあごさんは、それらの指値を内覧前の電話の時点で成立させているというから驚きだ。
あごさんは愛知県在住、現在26歳の女性不動産投資家。二人の小さな子どもの育児と並行して、夫婦二人三脚で不動産投資を行っており、これまでに4軒の投資用戸建を現金で購入。まもなく決済予定5軒目が稼動すれば、月に30万円ほどの家賃売上となる見込みだ。
夫からの「不動産投資をやりたい」の一声に大反対
今ではすっかり不動産のとりこに
あごさんの不動産投資のスタートは約3年前、自動車関係の事業を家族と営む夫から「子どもも生まれるし、将来のために不動産投資を始めたい」と相談を持ちかけられたことがきっかけだった。しかし、あごさんは当初これに大反対。いわゆる”嫁ブロック”を発動したという。
「最初に相談された時は、不動産投資なんて危ない、借金なんて怖い、と思って反対しました。でも夫が熱心に本を読んで勉強しながら、不動産投資で家族の明るい未来が得られること、リスクに対しての対応策などを丁寧に説明してくれたので徐々に抵抗感が薄れ、それなら一緒に頑張っていこう!ということで始めることになりました」
双方ともに倹約家で、元々貯金体質だったというあご家。スタート時点で約800万円の自己資金があったため、リスクを抑えて始められる現金買いでの中古戸建投資を選択。さっそく気になる物件への問い合わせを開始し、ほどなくして築37年の戸建を370万円で購入した。
諸経費、リフォーム費（外注・DIY）で200万円ほど掛かり、総投資額は約600万円。家賃は月5.95万円で、運用経費を織り込んだ実質利回りは10％弱での仕上がりとなった。
「正直、今だったら買わないか、もっと低い金額でないと、というような物件ではあります。最初の物件で、リフォームも内装の見える部分は全てやったと言えるほど、時間とお金を使ってこだわってしまいました。夫婦で土日のたびに片道90分かけて物件に行き、泊まり込みでDIYをやる日々のなかで、意見を違えてあわや離婚寸前の大喧嘩、みたいなこともありました」
1軒目の苦労から得た教訓から投資スタイルを確立
「DIYしない」「利は元にあり」「夫婦で役割分担」
購入から入居付けまで無事達成したものの、苦労の多い投資となった初めての物件。だがそこで得たいくつもの教訓が、あごさん夫婦の現在の投資スタイルを形作っているという。
「まず、DIYをやらないと決めました。プロに任せた方が明らかに早く綺麗に仕上がり、貸し出すまでの期間を短縮できるからです。そして外注ありきで収支を成り立たせるために、物件を安く仕入れることと、リフォームを安価で請けてくださる業者の開拓に注力するようになりました。
その甲斐あって、2軒目以降は運用経費まで織り込んだ実質利回りで18％以上を確保できています。あとは夫婦で揉めないように役割分担をきっちり決めて、互いの領域には口を出さないようにしています（笑）」
現在は主にあごさんが物件探しや業者への問い合わせなど物件の仕入れに関することを受け持っており、購入後にどの程度リフォームを実施するか計画したり、リフォームローンを使う場合には融資を引いたり、ということを夫が受け持っているという。
互いの性格や得意分野の違いをふまえて役割を分け、任せるところは信頼して任せるというスタンスのもと、夫婦共同での不動産投資に励むあごさん。後編ではあごさんが家事や育児で忙しい合間での投資活動において編み出した電話での指値交渉のテクニック「TEL指し」の話や、TEL指しで実際に購入した物件の実例などを紹介する。
健美家編集部（協力：（たまあらい））
