2000年から不動産投資を始め、22年の実績がある岡山県在住の田口泰己さん。地元の中小企業に勤めていたが会社がM&Aされ、上司からのパワハラに悩み、歯を食いしばりながら慢性胃炎に耐えながら必死に働いていた。
40歳を過ぎ、将来への不安から不動産投資を開始。以後22年間で35棟149戸購入。新築、中古、区分、倉庫、1棟アパート、太陽光と様々なものに投資をしてきた。そんな田口さんの不動産投資体験談を紹介する。
新聞の折り込みチラシで投資物件を吟味。
ローン完済した自宅を共同担保に入れ物件購入
田口さんが不動産投資を始めたのは43歳。あまりの激務と仕事のストレスを抱えながらも、子供が幼いことから仕事をやめるわけにはいかなかった。
副業を検討するも本業で忙しく、手のかかるビジネスはできそうにない。そんなとき投資家のバイブルである、ロバートキヨサキの『金持ち父さん貧乏父さん』を読み、自分の代わりに「お金」に働いてもらう方法ならできるかもしれないと不動産投資に興味を持つ。
「当時は今ほど不動産投資に関する情報がない時代でした。新聞の折り込みチラシに、投資用の売り物件の情報が入り、それを見ながら、金融機関に物件を持ち込むことから始めました。とはいえ最初は相手にしてくれる金融機関がなく、知人のつてをたどるも厳しい状況でした」
金融機関をあたるうちに、会社員で、不動産投資の経験がゼロの身にとっては「築年数が浅く、鉄骨造などで耐用年数が長く、2000万程度の物件」なら融資が受けられそうだと感触をつかんでいく。
「20代でマイホームを建て、すでにローン完済していたため、自宅を共同担保に入れることができたことも幸いし、築18年の重量鉄骨2階建てを、地方銀行から融資を受けて購入しました」
投資エリアは自宅から20キロ圏内、土地勘のある岡山市内が中心だ。必要であれば駆けつけることができるようにとの配慮だったが、実際には管理は管理会社に一任し、電話で対応はするものの、呼び出されるようなことはなかった。住み慣れたエリアで、賃貸ニーズが高い場所をある程度把握したうえで購入したことが幸いした。
「空室時には管理会社に督促していましたが、空室が3~4ヶ月続くとやはり胃が痛むことがあり、かなり不安になりました。今のようにステージングや設備投資をするとか、そんな時代ではなく、情報もありませんでしたが、長期空室がなかったことは幸いでした」
物件を買い続けるには、金融機関の開拓が必須。
現金で、高利回り物件を購入してみたことも
その後も1棟目と同条件の物件が融資を受けやすいと考え、同規模の物件を見つけては金融機関に持ち込むもある程度の期間を経て、実績を積んでからでないと次の融資は困難とのことで、融資先を開拓することで買い進めていく。
「3000万円~4000万円の鉄骨系で築15年以内だと15年程度の融資が引けるため、その目線で探して購入していきました」
今では10行の金融機関と取引があるが、一時期は、高利回りを狙い、木造の平屋や区分マンション(競売物件)を現金で購入したこともある。
風向きが大きく変わったのが、2008年リーマンショックのときだ。
「リーマンショックのときに買い進めた投資家さんもいたようですが、私の場合、融資で苦戦し、私の属性では限界かと思い、不動産投資から一時期離れ、株式投資と中古車自動車販売に乗り出しました。どちらも時間がかるわりに利益は少なく、忙しい私には不向きでした」
その点、不動産投資は1度購入したら、管理会社に電話をする程度で、手間がほとんどかからなかった。物件探しや今後の経営判断など投資に充てる時間は、土日にまとめて行うことで本業に支障はでなかった。
2013年になると、不動産会社の知り合いから、土地から購入して、木造2階建てアパートを新築するプランを提案され、不動産投資に復帰する。
「そう頻繁にいい土地が売りに出るわけではないのですが、土地から探して新築を建てるプランは、土地を安く購入できれば、中古よりも、高利回りが実現できると実感しました」
その後、アベノミクスで銀行が融資姿勢に転じたことが追い風となり、木造アパートを3棟連続して新築。2020年以降は融資情勢が厳しくなり、自己資金が多く必要になってきたこともあり、規模感の小さいものに転じていった。
「近年は、ターゲットを絞って面白いモノを作ることで、高く貸せることを知り、ガレージハウスや、バイクガレージ付きの賃貸住宅を建てています。スキルや経験が身に付き、ゆとりができたことで冒険できるようになりました。新築ばかりでなく、良い物件あれば中古も購入しています」
サラリーマンとしての強みや属性を活かす!
「融資」を活用することが不動産投資の旨味
辛いサラリーマン生活から抜け出すことを考え、不動産投資を始めたが、不動産投資で給与を超える収入ができたことで、精神的にゆとりができ、社内で上司の顔色をうかがうのではなく、建設的な意見をドンドンいうように。すると昇給・昇進。定年まで勤め上げた。
「『金持ち喧嘩せず』といいますが、お金にゆとりができると心持ちが変わるものです。不動産投資を続けるには、むしろ会社員を辞めずに属性を活かした方が、融資が受けやすいものです。
現時点で、属性がうまく活かせないなら、年収を上げるような転職をしたり、スキルを身に付けたりすることも大切です。不動産投資は、融資を利用するからこそ、ほかの投資とは異なる旨味があります」
今では専業大家となり、本を出版したり、不動産投資を始めている人からの相談に応じたりしている。
「不動産投資を始めようという人から販売業者の資料を見せてもらうことがあるのですが、さすがに『ウソ』はありませんが、都合の良い数字しか提示しないことが多いですね。
抜け落ちている情報が多いため、業者のいうことを信用しないで、自分で正しく判断できるようになるまで勉強することです」
たとえば、必要な経費も考えて収支があうか、その場所の賃貸ニーズが高いか、ニーズとマッチングしているかも見逃せないポイントになる。
22年の長きにわたり不動産投資を続けるなかで、不動産投資がほかの投資やビジネスと異なることは、ある程度先が見通せることだという。
「不動産投資には多くのリスクがあるものの、あらかじめ全てのリスクを洗い出し、対応策を考えておくことで健全経営を維持できます。この点は、ほかの投資やビジネスと異なる点です」