愛知県に住む不動産投資家で、多くの手法を実践してきた成田勉さん。通信事業や保育園経営など、自営業としてさまざな業種に親しむも、賃貸経営ほど「先々の売り上げの見通しが立てやすい」事業はないと振り返る。
成田さんが不動産投資を始めたのは21年前にさかのぼる。21年間で230戸に投資をしてきた。売却した分を差し引くと、現在20棟所有し、家賃売上は1.5億円に及ぶ。いかにして、ここまで不動産を増やしてきたのか? 成田さんの不動産投資体験談を紹介する。

壮絶ないじめを体験。全寮制高校から夜中、はだしで逃げ、
20キロ先の叔母の家へ。フリーターを経て自営業で活路を見出す
著書に『高校中退父さんのみるみる収入が増える不動産投資の授業』などがあり、「高校中退父さん」の愛称で知られる成田さん。高校中退の話をできるのは、今が精神的にも金銭的にも満たされて、幸せに暮らせているからだという。
「高校で暴力を含む、壮絶ないじめを受けました。高校の寮に入りましたが、耐えきれず夜中、はだしで飛び出し、20キロ先の叔母の家に逃げました。高校中退後はフリーターをして配送業につくも、腕をけがして、それでも休めないブラック労働で2年以内に起業しようと心に決めました」
その後、回線営業の会社を立ちあげ、3年後には、前職の9倍の売上が出るほどに成長した。35歳のときには保育園事業に乗り出すが、無認可があだとなり、やりがいがあるものの、お金・時間・気持ちをすり減らことに。そんななかで興味を持ったのが不動産投資だ。
「21年前は不動産投資なんて言葉がない時代です。母が祖父の持っていた土地に、アパートやマンションを建てて貸していたので、親を見ながら、手探りの自営業感覚でやり始めました。
最初は、住宅ローンを使って建てた自宅の庭に、4戸のガレージを建て、1戸2万円、計8万で貸すことから始めました。市場調査から、駐車場よりも屋根着きのガレージが適しており、高く貸せると見込んだのですが、今では当時より5000円ほど高く貸せています」

その後、区分投資の投資手法を書いた本を読み、中古区分を買い始める。
「本では利回り15%の中古区分を買う投資法が有効とのことで、利回り15%を超えるワンルームを名古屋市昭和区で320万円、次に、刈谷市で3LDKのファミリー向け区分を630万円で購入しました。当時は、自営業は利益が出ていないと融資をうけるのが厳しく、現金で買いました」
通信業から保育園経営など自営業を続けるなかで、お金が貯まれば投資にまわしていたが、2007年のサブプライムショックが起こる前に、1日で、所有する金融資産が400万円跳ね上がる事態が発生した。
「1晩で400万円プラスになるなら、その逆に、一晩で400万失う可能性もあると思い、金融資産をかき集めて不動産に投資しようと思ったのです。そんなときに目についたのが北海道の江別市の利回り28%、24戸の学生アパートです。利回りの高さと、北海道が好きで旅行でよく訪れていたこともあり、3800万円、現金で購入しました」
しかしこの物件で多くを学ぶことになる。
1つは、北海道ならではの寒さによる、維持管理費がかかることだ。築21年の物件で、除雪対策にお金がかかるうえに、給湯器の故障や取り替えが、何戸もあり、出費がかさんだ。
2つ目の学びは、学生向けということで、4年で入居者ががらりと入れ替わり、空室対策に苦慮したことだ。管理会社を変更し、当時の北海道では目新しく、「インターネット使いたい放題」「家具家電付き」にするなど策を練ったが、それらの方法がうまくいくと周辺物件に真似されてしまい、早々に売却した。

「利回り28%で購入しましたが、修繕費や空室対策などでお金がかかり、売却後、改めて計算すると、所有していた間の利回りは15%でした。この経験から、異様に高い利回りは注意が必要だと学びました」
北海道では、ほかにも札幌市東区丘珠で4戸のアパートを800万円利回り27%で現金購入したが、7年所有している間に、札幌の中心部に物件が増え入居付けに苦戦するようになり売却した。
5棟目で初めてプロパー融資を活用
土地値を重視し、重量鉄骨の1棟アパートを購入
これまで現金で買い続けてきたが、5棟目にして初めて融資を使う。地方銀行のプロパー融資(保証会社の保証を付けずに銀行が直接貸し付ける融資)を受け、2008年、名古屋市内の利回り11%。9200万円、3DKが12戸入る軽量鉄骨造の1棟アパートを購入する。
「名古屋市内で、ほぼ土地値で売りに出ていたのを見つけ、土地値が高いことが幸いし、築22年でしたが25年間の融資が引けた珍しいパターンでした」
この物件を機に、地銀や信金から融資を受け、愛知、岐阜、三重の東海エリアで、築年数が浅めの重量鉄骨造で、利回り13〜15%のファミリー向け中古アパートを買い進めていく。2016年頃は、当時ブームとなっていた民泊を、名古屋でいち早く実践した。
その後も、中古戸建を購入して、「障がい者向けグループホーム」として、運営会社を立ち上げて運営したり、安く売りに出ていた土地を見つけて、新築アパートを建てたり、さまざまな手法を実践。
自営業で培った、時代のニーズを探りながら、事業性が高く、利益率が高いことなどを複合的に判断しながら投資をしてきた。
「賃貸経営ほど先の見通しが建てる事業はありません。投資を続けていけば資産は増えていくものです。大事なことは、大きな失敗をしないこと。不動産投資で大失敗をすると、リカバリーできない恐れもあるため注意が必要です」
次回は、これから不動産投資を始める人に向けて、多くの人を大家デビューさせてきた経験を踏まえた、成田さんのアドバイスを紹介する。
