「不動産業と出会えて幸運だった」と語る
元編集者の女性大家
FF@大家さんは、主に都内と横須賀エリアで活動している女性大家である。
大家になる前は、出版社で成人向け雑誌や、サブカル誌の編集者を経て、動画サイトなどを運営するIT企業のモバイルメディア事業にも携わっていた。
大家歴は、2023年現在で法人4期目、個人7期目。所有物件は、中古のアパート5棟、戸建て7件であり、そこには横須賀のベース賃貸(米軍所属の軍人や基地関係者との賃貸契約を行うこと)や民泊物件が含まれる。年間家賃収入は3000万円を超えているという。
「30代後半で、不動産業と出会えて幸運だった」と語るFF@大家さんの投資遍歴を紹介したい。

20代のFF@大家さんは、撮影用のパンツや読者の投稿写真がそこら中に転がっているなかで、上半身裸のまま仕事をする編集者を見ても誰も気に留めないようなファンキーな編集部に泊まり込んで仕事をしていた。
漫画家やコラムニストなど、サブカル界の奇才と呼ばれる人たちと、熱のこもったコンテンツを作っていたという。

こだわりの注文住宅を都内に建てるために
「賃貸併用住宅」を選択
30代に差し掛かるタイミングで、出産・子育てと仕事を両立するためにIT企業に転職。労働環境が整備されており、産前産後の約2年間の休職を経て復帰し、時短勤務も可能だった。
「スマートな会社だったのですが、心のどこかで濃密な編集者時代のような刺激を求めていたんですよね」
やがて子どもが小学校に入るタイミングで、それまで住んでいた賃貸住宅を出て家を買う話に。子育てできる広さの都内のマンションは7000万円から8000万円が相場だった。ただ、FF@大家さんはマンションの画一的なイメージが好きではなかったという。
都内のマンションと同じ予算で一戸建てを建てるにしても、満足いくものを建てられるのは郊外に限られる。会社員の夫は、都内に住むことを希望していた。
そのような中、FF@大家さんは子どもの頃に友達が住んでいた賃貸併用住宅を思い出す。自宅の2階を貸すところから始まり、駐車場を貸したり、敷地を広げてアパートを建てたりする様子を見ていたのだ。
「都内に注文住宅を建てるのは予算的に無理でも、賃貸併用住宅ならできるかもしれないと思ったんです」
賃貸住宅に関する書籍を読み漁り、知識を身につけた上で、金融機関からいくらまで融資を得られるか調べた。
賃貸併用住宅向けの住宅ローンは種類が限られており、一般的には、住居50%以上、賃貸50%未満でないと組めない。
唯一、賃貸部分が3分の2でも借りられる、ゆうちょ銀行とのスルガ銀行の提携ローンホームローン「夢舞台(2019年終了)」があったが、これは金利が3%台と高く、当時は怖くてて出させなかった。
そのため、通常通りの住居50%以上、賃貸50%未満の賃貸併用住宅としていくつかの金融機関に打診した。その結果、夫婦で1億円まで融資が出るとわかり、予算を土地6000万円、建物4000万円に設定した。
不動産会社とのやり取りで
編集者のスキルが役立つ
土地を探し始めると、不動産業界の魑魅魍魎が待ち構えていた。自社の利益ばかりを優先する不動産業者もいる。しかし、不動産業者とのやり取りでは、編集者のスキルが活かされたという。
「不動産業者が話にちょっとした嘘を織り交ぜてくるところなど、編集者時代に出会った怪しい人と似ているなと思いました(笑)」
1年間で50件ほど土地を見に行き、世田谷区にある125平米の古家が草木に囲まれた状態の整形地と出会う。営業マンと価格交渉し、現状引き渡し6000万円の土地を、更地引き渡し5800万円にしてもらい購入を決めた。
賃貸併用住宅が完成したのはその1年後である。内外装までこだわった1階の3部屋を貸し出すと、相場の8万円台より高い、9万2000円、9万6000円、10万円でそれぞれ入居が決まった。入居者にローンを払ってもらっている状態である。
満室になったタイミングで、FF@大家さんは会社を辞めた。


「土地探しから完成まで大変でしたが、編集者のときのようにアドレナリンがずっと出続けていたんです。情熱を傾ければ傾けるほど楽しいし、情熱に比例して家賃もいただける仕事だと思いました」

職業訓練校でリフォーム技術を身につける
さらに不動産会社で業界の裏側をのぞく
不動産の世界に身を投じると決めた後のアクションは早かった。まず、求職者の立場で都立職業能力開発センターの住宅リフォーム科に入る。半年間、模擬家屋を建てて壊してを繰り返し、下地作業から設備作業、内装の仕上げ作業まで学んだ。
不動産業者と近しい関係になるために、当時、都内の収益不動産会社が募集していた『不動産投資コラム執筆』のアルバイトにも就いた。 コラムを書きながら知識を蓄積し、不動産をより深く学んでいった。
大家の会にも加入し、積極的に情報収集をして、横須賀の築古のアパートを購入。2棟で1800万円、駅徒歩10分の物件。都立職業能力開発センター学んだリフォーム技術を活かす格好の機会だった。舞台づくりが得意な大学時代の演劇仲間の手も借りて、リフォーム費用は、依頼した場合の3分の1の費用に収まったそうだ。

大家仲間のツテで横須賀のベース賃貸にも挑戦。利回り30%台の戸建てを複数所有するようになる。さらに築古のアパートを買い増していった。

新築RCの計画が頓挫し
民泊事業にシフト
大家として手応えを感じつつあったFF@大家さんは、都内に土地を購入。5階建ての新築RCを建てる予定だった。江戸川区の某駅から徒歩5分、4車線・5車線ある大通りに面しており、広さは28.8平米。立地は良いが狭い。
ただ、制限が多い中で優れた建物を設計すると業界から評価される。依頼した建築士による建築模型は隈研吾賞を受賞したそうだ。
ところが、建築予定の土地は地盤改良しないと重い建物は建てることができないことが判明。高額な地盤改良費を払うと、絶対にペイしない。売却も視野に入れて土地を寝かすことに…。
奇しくもこれが、民泊事業を手掛ける契機となった。
さて、今回のインタビューはここまで。次回は不動産投資初心者も必見のFF@大家さんの民泊事業を紹介する。ぜひご覧いただきたい。

健美家編集部(協力:
(とやまたけし))