「民泊」という言葉もない時代に、沖縄県で旅館業を取得して、開業。その後、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言で大打撃を受け、賃貸業へ方向転換。今回、その足取りをインタビューしたので、紹介する。
■不動産投資をはじめたキッカケ
結婚し、1人目の子育てしながら、時間に縛られず、収入を得られる仕事(投資)をしたいと思っていた。
色々と調べていく中、夫が昔買った「金持ち父さん、貧乏父さん」を読んで、不動産投資がベストと直感する。そこで、手当たり次第に関連書籍を買って勉強した。
「不動産投資をやりたい、と家族に話をしたところ、父の土地を譲ってもらえることになり、その土地を使ってスタートすることにしました。とても、恵まれていたと思います」
海や観光地に近い立地を活かし、キッチン付きのヴィラを2戸、建築する。RC戸建て2戸で、建築費2,800万円、かなりの金額だ。
戸建てと聞くと、木造を想像するかもしれないが、台風の多い沖縄は鉄筋コンクリートが一般的、実に建物の8割以上が、RC造とのことだ。
■旅館業(民泊)からスタート
本当は、賃貸業に挑戦したかったが、沖縄は建築費用が高く、家賃も安いため、採算が合わない。そこで、まだ「民泊」という言葉もなかった2007年に旅館業を取得して、ヴィラの開業を決意する。
「リゾートホテルのような物件ではなく、宿泊特化型にこだわり、賃貸にも転用できるようキッチンもつくりました。広すぎると清掃コストがかかるため、67u、43uと、ほどほどの広さにしています」

また、観光地とはいえ周囲に住宅もあるため、その配慮から、夜遅くまで騒がないファミリーや、カップルにターゲットを絞った。
そしてスタッフを採用、お客様に最高の思い出をつくってもらうため、教育や仕組みづくりにも力を入れる。
「自分のつくったヴィラや、接客を含めた仕組みが喜ばれることは、この上ない嬉しさです」

評価はとても高く、楽天トラベルアワード13回受賞が、その証だ。
■2020年にコロナ突入、緊急事態宣言が発令
時は流れて2019年、インバウンドの推進により、外国人観光客が激増。民泊も一大ブームとなり、価格競争がはじまっていた。
このままでは、経営が厳しくなると考えていた矢先、新型コロナウイルス感染症が流行する。
「緊急事態宣言時は、1日で数百万円のキャンセルが入りました。年間売上4,000万円のところ、2020年は1,200万円、2021年は1,000万円に減少です」
2年間で、実質5,800万の売上が消えたことになる。70%以上の減収だ。
「沖縄県知事が、来県自粛を呼びかけると、キャンセルの嵐です。人の移動が悪、観光業が悪という状況で、スタッフもやりがいを失います。14年間、勤務したスタッフからも退職願いがありました」
■賃貸業、県外物件への挑戦
売上の激減、スタッフの退職も重なり、疲労はピークを迎えたが、悩んでいても解決しない。
体制を立て直すため、2020年に旅館業を縮小、2021年に賃貸業に参入する決断をした。沖縄県内は利回りがあわないため、県外で物件購入することになる。
「活路を見出すため、環境を変える必要がありました。コロナがなければ、賃貸業、そして県外物件に挑戦することは、なかったと思います」
「子供3人子育て中(小学生、中学生、高校生)の母親が、家を空けるのは容易じゃないです。新しいことに挑戦する時、家族に必ず話をして理解を得てから、スタートします。幸い、夫、子供達も、快く、応援してくれました」
サラッと、語ってくれたが、相当な葛藤があったに違いない。
県外に住んだことがなく、賃貸業もはじめてなので、情報収集と知識習得のため、ある大家塾に入会する。そして学びながら、日々、行動した。
■物件購入と、沖縄の収益不動産事情
「早速、千葉県で築古戸建ての買付をいれ、翌日、現地に行きました。仲介の方も、沖縄からの日帰り内見に、かなり驚いていました」
旅館業から切り替えて、即行動、そしてこのスピード感、なかなかできるものではない。仲介担当者の驚きも、頷ける。
「最初の物件は250万円の戸建て、学校も近く、周辺に飲食店もあり、駅から徒歩15分。沖縄にこんな安い物件は、ありません。経験を積むための、教材費程度の金額と思いました」


250万円が、教材費程度?内情を聞いてみた。
「沖縄の収益不動産は、県外の投資家さんがドン引きするレベルです。基本、RCのため建築費が高く、その割に家賃は低く、表面利回りは5%に届きません」
「戸建ても1,000万円以下はありません。1,200万円の中古戸建てを見つけたと思って詳細を見ると、ほぼ借地です。立地等も考慮すると、中古でも2,000万円からですね」

健美家で、沖縄の物件を検索してみたが、なるほど、驚くほど利回りが低い。実質、賃貸経営はできないことになる。
■修繕、そして、旅館業の経験も活かした客付け
安価で腕の良い職人を紹介してもらい、ステージング等の空室対策も学び、無事、リフォーム及び客付けをすることができた。

物件の近くにホームセンターがあったので、好奇心からDIY、和室の壁をモルタルで仕上げたり、室内塗装にも挑戦した。
雨漏り、ハクビシン、給水管凍結破裂などのトラブルも経験したが、お任せできる管理会社もいるし、先輩大家のアドバイスをもらえるし、スムーズに経営できている。


「遠隔地の沖縄からでも運営できるのが、賃貸業の最大のメリットですね!」
ECHOESやウチコミ!の登録では、楽天トラベルやじゃらんに掲載する、旅館業の経験が活きた。
「キャッチフレーズを考えたり、天気の良い日に、写真や動画を撮影して、内見前から新生活のワクワク感を伝えられるよう、工夫しています」
■今後の抱負
「賃貸業で、月間100万円のキャッシュフロー獲得を目指しています」
現在のキャッシュフローは、年間約300万円弱。これには、沖縄のヴィラの売上、利益は含めていない。旅館業は、外的要因の影響を受けやすく不安定だからだ。
※キャッシュフロー:家賃ー(ローン+固都税+管理費)
娘の大学受験、息子の高校受験が重なる2022年は、子供達のサポートのため、活動をセーブしていた。2023年5月から、活動を再開していくとのことだ。
「ちょうど、娘が進学で関東に住むため、会いに行きつつ、娘の意見も参考に、その周辺で物件を購入しようと思います」
今年の、筆者の家族旅行は、ジンベエさんのヴィラに泊まりたいと考えている。その際、物件購入の”続き”を聞いてみたい。