2022年3月11日、大東建託が水害対策に特化した賃貸住宅「niimo ニーモ 」の販売を開始した。昨年秋に開発に取り組む旨のリリースは出ていたが、以降の開発結果が新商品の発売に繋がったわけである。
浸水しても2階、3階で住み続けられる家
どんな住宅か。一言でいえば、1階をRC造の、打ち放しのコンクリート仕上げとし、2階以上を木造の居住区間とすることで、浸水しても早期復旧が比較的容易で住み続けられるというものである。
これは過去の同社物件の水害被害の実態を踏まえたもの。
資料によると「令和元年台風19号、20号において浸水被害を受けた当社管理建物のうち、地面から50㎝~1mまでの床上浸水の被害が61.6%と最も多い」とのこと。
また、同社の被害だけでなく、令和元年の浸水被害棟数のデータでも床上浸水8776棟に対し、床下浸水は29885棟と3倍以上。ここを防ぐことができれば被害はかなり軽減されることになる。
そこで、Gl+1.5mまでの浸水を想定、浸水しても暮らし続けられる住宅として開発されたというわけである。
RC造の1階に駐車場と離れ
実際の住宅は1階に屋根付き駐車場と、アネックスと呼ばれる「平常時は離れ的に仕事場や趣味の空間として使える空間」を用意、2階以上に居住空間を配する。
画像からも分かるようにべた基礎からそのままフラットに駐車場、アネックスに続いており、この部分は保護塗装は施工するものの、型枠を外した状態のむきだしのコンクリート仕上げ。いわゆる打ちっ放しで、こうしておくことで浸水した場合にも早期復旧がしやすいという。
また、3層を吹き抜けにすることで階段室が風の通り道となり、浸水後の湿気の早期の乾燥が可能になる。
居住空間を2階以上に配置するだけでなく、室外機、コンセントも浸水の影響を受けない位置に配置、破損を廃棄するという。
また、2階、3階は開口部を多く設け、明るく、湿気を防ぐ住まいとするとも。3階に設けられたルーフバルコニーは避難時の救助スペースとなると同時に、普段は物干しとして実用的に、アウトドアリビングとして憩いの場としても使える。
商品名の「niimo ニーモ」はいつもともしものどっち「にも」役立つというような意味で、こうした日常時と非日常時のフェーズをフリーにする防災の考え方をフェーズフリーというそうだ。
原価の材料費レベルで木造の1.3~1.4倍
気になるのは木造から混構造の建物になることでコストがどのくらい高くなるかという点。
質問してみたところ、建設費自体を非公表としているものの、原価の材料費レベルで同等条件の木造と比べて1.3倍から1.4倍になるとのこと。施工費その他もプラスになる可能性があると考えると、木造よりも高くなることは間違いない。
だが、それによって入居者が安心して暮らせ、災害があっても安全に住み続けられるとしたらどうだろう。地域によっては安心、安全は大きな売りになるはずだ。
地域の防災の拠点としても機能
また、同物件では初回限定で全棟に「おせっかい防災ボックス」を設置する予定。これは入居者向けの品ではあるものの、災害時だけでなく、普段から利用でき、かつ近隣の人たちと助け合う際にも役立つ品。
具体的には消毒液や救急セットのほか、ホワイトボードやマグネット、メモ用紙、マジックなどが用意されており、隣近所と連絡を取り合う際などには役に立つだろう。
同社では2018年に防災と暮らし研究室「ぼ・く・ラボ」を設立、各地の支店はそのステーション、さらにニーモはそのサテライト(オーナーの賛同があった場合)として位置づけられている。ニーモは災害時の支援物資の配布などの拠点として機能することが期待されているのだ。
つまり、この物件を作ることは地域に防災拠点を作ることでもあり、オーナーにとっては社会貢献のひとつともいえる。入居者だけが安心、安全というのではなく、この物件が近くにあることで地域にも安心、安全をというわけである。
初年度の目標は50棟。浸水被害に目が向いているタイミングだけに、気になるオーナーも多いのではなかろうか。
健美家編集部(協力:
(なかがわひろこ))