コロナ禍で、カントリーリスクを考えて投資や不動産購入で得られる海外長期移住ビザ(ゴールデンビザ)を取得する人が増えているという。住みやすさは?ビザの取得や維持がしやすいのは?税金が有利なのは?物件価格や利回りは?といろんな角度から検討するこのシリーズ。
今回は「2020年ドバイ国際博覧会」が開催されていることでも注目のドバイ。オイルダラーでなんでも高く思われているようだが意外にお手頃だという。

所得税、相続税、贈与税、
法人税、固定資産税はゼロ
ドバイは、アラブ首長国連邦(UAE)の7つ首長国の一つ。大きさは埼玉県と同程度だが、中東を代表する金融都市である。世界一高いビル「バージュ・カリファ」や世界最大の噴水「ドバイ・ファウンティン」や開業当時は世界最大のショッピングモールの「ドバイ・モール」など、未来都市的な開発でも知られ、世界からの観光客を集める。
ドバイは、所得税、相続税、贈与税、法人税、固定資産税、不動産取引税がゼロで、消費税(VAT)5%のみということから、法人設立の需要も高いという。しかし、イメージとして物価も不動産価格もとても高いイメージがあるが、実際はどうなのか、法人の海外進出や投資永住権のサポートを行う株式会社アエルワールド代表取締役の大森健史氏にうかがった。
実は思ったより高くないいドバイの物価、
住みやすくて狙い目の都市
「所得税や法人税がなく、物流や貿易のハブという点で、シンガポールに似ていると言われるドバイですが、不動産も物価もシンガポールよりはかなり安い。それでいてビザが取得しやすい狙い目の都市だと思います」と大森氏は、東京やシンガポールに比べて、ドバイでの不動産投資が割安だという。
たとえば「ドバイクリークという港湾の再開発エリアにある新築(完成2022年)で、約54uの1ベッドルームが147万AED〜で、日本円だと 4000万円前半から5千万円ほど。約100u2ベッドルームで250万AEDなので7500万円ぐらいです。
購入に際して、登記や手数料などを合わせた購入費用は物件価格の6〜8%ですが、政府系の大手ディベロッパーによる新規物件では免除される部分もあって、もう少し安く済むこともあります。
ドバイは、実は石油の埋蔵量は少なく、金融、貿易、観光が中心。人工的に開発した都市の雰囲気はシンガポールに似ていますが、同様の不動産をシンガポールで取得しようとすれば倍以上はするでしょう。
再開発エリアは街並みが整備されていて、緑もありますし、ハイレベルなインターナショナルスクールもあって住みやすい。スーパーで買い物をしてもシンガポールはもちろん、東京のデパ地下より安くて高価なイメージとのギャップに驚くほどですよ。
不動産は東京と比べてもかなり安く感じると思います。世界一高いビルのバージュ・カリファにもレジデンスが入ってますが、東京都心の3A麻布・赤坂・青山に比べて、グレードは負けてなくても半分ぐらいの価格ですよ」という。
「それでいて、ドバイでは購入価格100万AED以上 (約3100万円)のフリーホールド(自由土地保有権)エリア内にある居住可能な不動産を購入すれば、3年間有効で更新可能な居住ビザ申請が可能なんです。ビザの収入要件として月1万AED程度、または相応の資産がありますが、購入不動産は賃貸も可能で、利回りは実質6%程度というところでしょうか。
ビザは、購入者本人の申請費用が概算で22000AEDで、ビザを維持するためには6ヶ月に最低1回UAEに入国することが条件。配偶者や子供、両親のファミリービザも申請ができます」
購入物件は、未完成物件や土地は対象外。住むことができる物件でないといけない。シンガポールに比べて不動産価格も物価も手頃で、家族のビザ取得も容易。教育水準の高いインターナショナルスクールもあるので、教育移住の需要もありそうだ。
「弊社では、投資家ビザ取得申請についての不動産購入や賃貸、ビジネスのコンサルティングなど全般をサポートし、家族の人数によって異なるが不動産ビザの取得費用は概算で200万円程度〜(仲介手数料など諸費用は別)、起業ビザは約300万円程度〜。最初に手付金として80万円+消費税をいただいています」と大森氏。
購入でビジネスビザも同時に取得できる
起業家・SOHO向け物件
ドバイは海外からの起業家誘致に積極的で、ビジネスライセンス付きの物件が出たこともある。
ドバイには、ゴールドや宝石、エナジー関連商品などの商取引をするためのDMCC(ドバイ・マルチ・コモディティーズ・センター)という有名なフリーゾーンがあるが、不動産購入にあたり20%払えば完成まではDMCCのオフィスが使えて、3年間のビジネスライセンスも取れるというもの。
今年に入って不動産市況の急回復に伴ってかなりの数が売れたようで、最近は売り物件情報も少なくなってきている。
ドバイヒルズにあって、価格は1ベッドルーム60uのタイプで100.4万AED(約3100万円)。 2020年夏に分譲スタートしていてすでにかなり販売が進んでいる、完成は2022年だ。病院、学校、地下鉄の駅、650店舗が入るドバイヒルズモールまでも歩いて10分弱だという。
こうしたオフプラン(未完成物件)は、同様の完成物件と比較して割安であることが一般的で、大手不動産ディベロッパーが分割支払いプランを用意し、不動産登記費用(4%)が免除されることもあるそう。
未完成物件の場合、不動産投資ビザは完成を待って取得することになるが、それまでは賃貸に住んでビジネスをスタートすることができるのはかなり魅力的。
画像 未来都市のような「2020年ドバイ国際博覧会」の会場。ドバイは世界からの起業家誘致にも積極的
海外からのビジネス需要獲得に前向きなドバイは、銀行の口座開設なども容易。アジアとヨーロッパやアフリカを繋ぐハブとしてのポテンシャルがありそうだ。
1 AED (ディルハム) = 30.96円 2021年10月27日
取材協力/株式会社アエルワールド
画像提供/ドバイ政府観光・商務局
執筆:
(おのあむすでんみちこ)