今回は、不動産投資を行っていく上で「税金の還付」を受けられる場合があることについて解説したいと思います。分かりやすく、年間500万円の給与所得がある会社員が、本業とは別に賃貸経営をして不動産所得を得ているケースを考えます。
@不動産所得が赤字なら税金が下がる
賃貸経営をして得る不動産所得が赤字なら、給与所得と合算することで全体の所得が減り、そのぶん納める税金の額が下がります。ほかの所得から赤字の所得を引くことを「損益通算」といいます。
たとえば、給与所得が500万円で不動産所得が100万円の赤字なら「500万円ー100万円=400万円」に税金がかかることになります。
A不動産所得は「収入ー経費」
では、不動産所得はどのように計算するのでしょうか?
具体的には「賃貸経営で得た収入ー賃貸経営でかかった経費=不動産所得」となります。
たとえば、賃貸経営で月10万円の家賃を得ていたとすると、賃貸経営で得た収入は年間で「10万円×12カ月=120万円」です。
そして、賃貸経営で年間の赤字が220万円かかったとしたら、年間の不動産所得は「120万円ー220万円=100万円」の赤字となるのです。
B経費として認められるもの
では、賃貸経営をしていく上で経費と認められるものはどのようなものでしょうか。
たとえば、以下のようなものがあります。
1:固定資産税、都市計画税、印紙税などの税金・・・所得税、住民税、法人税は含まれない。
2:減価償却費・・・建物を買うのにかかった費用を耐用年数で割り、その金額を毎年の経費に計上するやり方です。
3:税理士や司法書士へ払った報酬
4:旅費交通費・・・所有する物件へ足を運ぶ、新たな物件を買うため下見に行く、といった、不動産に関係する移動にかかった分のみの電車代、車のガソリン代、宿泊費などです。
5:管理料・・・メンテナンスなどの物件管理で、管理会社に支払う手数料です。
6:通信費・・・不動産会社とやり取りするのにかかった電話代やインターネットの費用などです。
7:勉強や情報収集のための費用・・・不動産投資をする上で必要な書籍代、新聞代、セミナー受講代などです。
8:交際費・・・不動産会社や管理会社と打ち合わせをするにあたってかかった飲食代などです。
9:ローンの金利・・・不動産所得が赤字等の場合、建物の部分についてのみ、ローンの返済金利を経費にできます。
10:保険料・・・火災保険、地震保険に入るときに払う保険料です。
C減価償却費の計算方法
経費に計上される費用のうち、減価償却費の考え方が複雑ですので、少し解説したいと思います。
減価償却とは、上で述べた通り、建物を買うのにかかった費用を耐用年数で割り、その金額を耐用年数の期間中、毎年の経費に計上するやり方です。なお、減価償却の対象となるのは建物のみで、土地は対象とならないので注意が必要です。
法定耐用年数は以下のようになっています。
そして、毎年の減価償却費は、国税庁が示している「償却率」を「取得価額」に掛けることで計算できます。「償却率」は「定額法償却率」の列をみます。

耐用年数は、新築か中古かで変わってくるので注意が必要です。
たとえば、木造アパートを1棟買う場合を考えてみましょう。取得価額は5000万円です。
新築で買うなら、耐用年数は法定の「22年」で、国税庁の表によると、償却率は0.046。なので、毎年の減価償却費は「5000万円×0.046=230万円」です。
中古で築年数が10年なら耐用年数は以下のように計算します。
「法定22年ー10年」+「10年×20%」=14年
国税庁の表によると、償却率は0.072。毎年の減価償却費は「5000万円×0.072=360万円」です。
中古で築年数が法定年数を過ぎていたら(たとえば築25年や30年なら)、耐用年数は「法定22年×40%=4年」です。
国税庁の表によると、償却率は0.250。毎年の原価償却費は1250万円となります。
D会社員なら後で税金が還付される
会社員の場合、所得税や住民税は給与で源泉徴収によって自動的に徴収されています。
しかし、不動産所得が赤字になり、損益通算して全体の納めるべき税金の額が少なくなれば、源泉徴収によって税金を払いすぎていることになります。赤字であることをきちんと確定申告すれば、払いすぎた分が後で還付されることになるのです。
健美家編集部(協力:小田切隆)