不動産の取引価格は今最高水準にある。長引く新型コロナウイルス感染拡大であっても堅調に不動産価格は上がり続けてきた。
今年は、年明けからロシアとウクライナが戦争状態になり国際情勢が悪化し、エネルギー価格の上昇とともに国内のさまざまな物価が上がって懐具合が悪化する中で、不動産価格が下落に転じる話は聞かれない。
不動産販売の現場の営業マンからは、「世界情勢が悪化しているが、年内はこのまま高価格帯での取引が続く」という声が聞こえてくる。
特に高額帯の取引は、富裕層や会社経営者などの動きが活発だ。最近は渋谷区広尾駅から徒歩16分ほどの場所で高額な邸宅が売り出された(現段階で売れたかどうかはまだ確認できていない)。事務所として使える空間を併設した邸宅である。
令和元年6月に竣工した築浅の物件だ。外観はガラス張り。敷地247uほどの土地に鉄骨造3階建て。間取りは「5LDK+2Bath」に事務所スペースが付く。建物面積は約328uとなっている。現況は空室状態。
そこに未公開物件としてリストインターナショナルリアルティが高額なホームステージングを導入して訪れた内見者に説明に当たっている。販売価格は要相談となっているが、15億円を想定している。


アートと高級車で装飾して富裕層を引き付ける
ホームステージングとしては1階部分にアート作品を飾ってあったり、高級車のランボルギーニ―が置いてある。これらの作品と車は、内見に来た人が気に入ったら購入することもできる。邸宅を買わなくても購入できるという面白いスタイルで販売活動をしているが、同社では同様の販売スタイルで高額物件を取り扱うのは広尾で4回目という。高級物件と富裕層を引き合わせる仕掛けで取り引きにつなげたい考えだ。
室内に足を踏み入れれば、そこはモダンな美術館にいるような住まい空間を演出している。リビングダイニングの最大天井高は6.5m。ガラス張りで採光が取れて解放感がある。リビングにはバイオエタノールの暖炉を備えているほか、プロジェクターによる映画鑑賞も楽しめる。
事務所部分は居住・生活空間から独立して1階部分にある。この事務所を自ら使ってもいいし、貸し出すことで賃料収入を得ることも可能だ。ピロティ―となったカースペースには最大4台が駐車できる。ルーフバルコニーは約50帖超のスペースで、東京タワーなど街並みを臨みながらパーティーやバーベキューなどを楽しめる。


これら高級住宅街を歩けばインフレ経済に対する心配を肌感覚として感じることができない。広尾駅に近い麻布エリアを歩けば、防犯性の高いゲーテッド・マンションがあったり、防犯カメラを家の周辺にいくつも取り付けている戸建て住宅が広がる。
戸建て住宅の庭で飼い犬と走り待っている主婦らしき人の姿を見かけたり、駅周辺のカフェテリアには白髪でファッショナブルないで立ちの70歳前後の男性がビールを片手の読書する姿を見かけた。
都心部の資産価値、この10年間で大幅にアップ
高級住宅エリアは、株高と不動産価格の高騰により資産価値アップの恩恵を強く受けた人が多い。東京カンテイが毎年プレスリリースしている「分譲マンションの収益ランキング」でもそれが分かる。
駅ごとに調べているもので、同社が今年5月に発表した2021版を見ると、首都圏で資産価値の1位は東京メトロ南北線の六本木一丁目駅だ。
この調査は、新築竣工時から10年間賃貸運用してから売却した場合に、どの程度の利益を得られたかを示しており、六本木一丁目は、新築時の坪単価は平均で483万円だったが、10年後に中古で売り出す坪単価は1021万円と倍以上となっている。
これに10年間の賃貸運用益288万円を加えると、その差益は820万円を超えている。トップ5には、麻布十番駅(差益491万円)や代官山駅(差益437万円)などがラインクインしている。東京都心に漂う不動産バブル感はもうしばら続きそうだ。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))