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「コロナで東京一極集中の流れは変わった」を冷静に考える

不動産投資全般/専門家インタビュー ニュース

2020/12/21 配信

都市の問題に関しての第一人者、市川宏雄先生
テレワーク学会の会長でもあり、都市の問題に関しては第一人者の市川宏雄明治大学名誉教授

総務省の住民基本台帳人口移動報告で東京都の人口が2020年5月と7月に転出超過となり、東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)でも7月に転出超過となったことを受けて、「東京一極集中の流れが変わった」、「地方分散が始まった」といった論調がにわかに出現。

話題になった。不動産会社への問合せ、ポータルサイトの検索数も郊外に集まっているという。本当に流れは変わったのか。株式会社グローバル・リンク・マネジメントが2019年に設立した「グローバル都市不動産研究所(以下、同研究所)」の所長で都市政策の第一人者、明治大学名誉教授市川宏雄氏に聞いた。

論調が偏っている理由は?

同研究所では10月に「コロナによって東京一極集中の流れは変わったのか?〜東京都の人口推計と総務省住民基本台帳人口移動報告データから分析〜」と題した調査・研究レポートを発表した。

結論から先にご紹介すると、2020年5月1日に総人口が始めて1400万人を突破、それをピークに人口減少が続いてはいるが、総人口から考えると転出超過数はそれほどではなく、東京一極集中の流れが変わった、地方分散が始まったと言える状況にはまだないという。

詳細についてはレポートをお読みいただくとして、それなのに、メディアの論調が「東京一極集中が変わった」一辺倒なのはどうしてなのか。

市川氏はそこにずっと衰退し続けてきた地方のわだかまり、感情があるとみる。

「日本では1962年の『全国総合開発計画(全総)』で一極集中をしないようにするというテーゼを掲げており、今に至ってもその看板を下げられていません。

それに加え、ずっと地方が衰退し続けているというわだかまり、感情があります。特に一極集中、地方の衰退に危機感を抱いているのは地方の住民に加えて政治家もあるでしょう」。

地方と三大都市圏の人口比を考え、本来は人口比で政治家が選ばれるものであることを考えるとその危機感はお分かりいただけよう。

本来であれば人口が減少する地方から選出される政治家は減らなくてはいけないはずだが、現実はどうかということである。そうしたことを考えあわせると東京一極集中を責めることはいろいろな意味で受けるのである。

東京一極集中は産業構造変化の結果、必然である

だが、現実として東京一極集中は現在もこれからも否定はできない。その理由は産業構造にある。

「一カ所にすべてが集中することに過密が原因となって発生する都市問題というデメリットがあることは確かですが、ロンドン、パリ、ニューヨークなど世界的に見ても一極集中排除はどこもできていません。なぜかといえば第三次産業は大都市でしか成り立たないから。ある意味、時代の必然です」。

そのため、一時的に東京から転出して行ったとしてもそれが長く続くことはないというのが市川氏の見立てだ。

「オイルショック、バブル崩壊、リーマンショックなど過去にも東京から人が出て行ったことがありましたが、一年、二年ほどで戻ってきています。産業構造の変化に基づいた人の流れですから、この流れが急激に止まるということはあまり考えられません」。

東京が嫌になった、東京にいる必要がないなどとして地方に目を向けている人は確かにいる。不動産会社への問合せも郊外が中心になっているのは確かだが、その人たちが本当に引っ越すかどうかは別問題。移住も同様だ。

「よく言いますが、喉元過ぎればなんとやら。過去の、今のように医療が発展していなかった時期でも感染症の流行は長くて3年。今であればそれほどはかからないのではないでしょうか。換気や手洗いなどの習慣や建物の空気環境の向上などが残るでしょうが、その後は何事もなかったかのように人が戻ってくるでしょうね」。

女性は東京の魅力を選んでいる

それにそもそも東京には人を惹きつける魅力がある。大きいのは雇用の機会だろう。働き方、暮らし方も多様である。

この観点では見逃せないポイントがある。過去5年間、東京に多く出てきているのは20〜24歳の女性ということだ。これについては同研究所がレポートを出しており、非常に参考になる。

男性より女性のほうが郷里には帰りたくない人が多い
男性より女性のほうが郷里には帰りたくない人が多い

レポートによると2009年以降、若い女性の東京への流入が目立つようになっており、しかもその半数が故郷に帰る気はないとも。

ここで思い出すのはかつての消滅可能性都市選出の根拠だ。日本創成会議は20〜39歳の女性の数が、2010年から40年にかけて5割以下に減る自治体を消滅可能性都市に選んでいる。つまり、子どもを産む可能性のある年代の女性が減少しているまちには将来に懸念があるということ。逆に東京はそうした女性たちに選ばれ続けているということである。

雇用の機会だけであれば地方でも提供できないことはないかもしれない。だが、ファッション、食べ物、住宅、自由に生きられる多様な機会と人との交流はどうだろう。それが東京にある限り、女性たちは東京に留まる。

今回のコロナ禍では感染者に対する息苦しいまでの監視、干渉が話題になった地方があったが、そうした心理的な圧迫が少ないことも東京の魅力のひとつだろう。

「京都市、神戸市の女性は地元で働く選択をすることが多いものの、それ以外の地方中枢・中核都市の女性は東京に来る。それは東京に住むメリットが大きいということ。最近、札幌、福岡は頑張ってはいるものの、東京並みまでは難しい。人は魅力のあるところに行きたがるもの。魅力が少ないのに、『ここにいろ』は無理です」。

複数拠点を持つ暮らしの実現性が高まる

逆に東京への集中がもし止まったとしたら、日本は危険だ。現状は一極集中の東京が日本の経済を引っ張っているからで、そうした存在が無くなるとしたらどうなるか。あまり、考えたくない事態ではなかろうか。ただ、その一方で、一般論でいえば欧米でも首都圏から地方へという人の流れは確実に起こっているという。

「デュアルハビテ―ションはいまや世界の潮流です。避難のため、気分転換のため、家を構えるまで行かなくても複数の拠点を持つ人は増えています。マンハッタンでは所得レベルと感染発症数はリンクしており、所得が高い層は低い層に比べて罹患が少ない。

別荘に避難するなど都心から避難している例が多いからです。感染症のパンデミック以外にも災害その他何かあった時に逃げる場所があればリスクは回避、軽減できます。ヨーロッパでも大都市から地方へ一時避難という流れはあり、これは世界的な動きです」。

日本でもマルチハビテ―ションはあり得ると市川氏。「国交省は地方創生の掛け声はかけたものの、地方移住が進まないことを受け、2018年に看板を少し変えました。関係人口と言う言葉を作り、住むのは難しいとしても行く人を増やそうと方向転換したのです。地方を訪れる人を増やす方策を考えるのは十分にあり得るのではないかと思います」。

だが、それが単なる訪問でなくて移住になると問題となる。知っている人以外は入れたくないと考える地域が少なくないのだ。

「人が減っていると言ってもそれでそこに住む人たちが必ずしも困っているというわけではありません。ヨソ者が入ってきて自分たちの暮らしを変えるくらいなら、入ってこないほうが良いと考える地域もあるのです。

もちろん、寛容な地域もありますが、家族の誰かがその地に縁があるなどの事情がないと地方移住はそれほど容易ではありません。それよりはたまに行く、関わる程度の付き合いがしやすいのではないでしょうか」。

働き方、オフィスはどう変わるか

日本の場合、複数拠点を構えるような暮らし方ができるかどうかは働き方が今後、どう変わるかによる。同研究所ではwithコロナ時代の働き方、住まい方についてもレポートを出している。

「今回、テレワークをやってみた人のうち、3〜4割は今後もテレワークを継続したいと考えているようですが、そうは思っていない会社もあります。業種によっての可否などもありますが、いずれにせよ、今後、働き方が変わるのは間違いありません。それに伴い、都心部だけでなく、中核都市、郊外の主要駅など様々なところにオフィスニーズが生まれてくるでしょう。短期的には自宅で働くというやり方もあるでしょうが、やはり、自宅でずっとというのは難しい。バケーション型など多様性のある仕事の場も生まれてくるのではないでしょうか」。

ただ、全部が全部変わるわけではないと市川氏。肌感では働く時間、場所のうちの約3割くらいが変わるのではないかという。

となると、都心部のオフィスはどうなるか。このところ、大規模な再開発も多く、都心部のオフィスは増加している。不要になる懸念はないのか。

もちろん、変化はあるだろうと市川氏。

「今後も都心に大規模オフィスが必要という会社もあれば、情報系のように社員がばらばらのところにいても仕事になるので固定のオフィスは不要という会社もあり、業種、業態によってニーズが別れていくはず。また、コロナ終息後の回復期には人もオフィスも必要と考える会社もあるはずで、全体として単純にニーズが減るとは言いにくいのではないかと考えています」。

大手デベロッパーが冷静なワケ

ここでひとつ、大事な視点がある。それはオフィスの契約は3〜4年と住宅に比べて長期のものであるという点だ。

「世の中ではオフィスニーズがどうのこうのと騒ぎになっていますが、大手デベロッパーは比較的冷静です。不思議に思いませんか? それはオフィスには長い契約期間があり、終息するまで様子を見ているという状況だからです。

冬場はインフルエンザ同様感染が続くとしても、それ以降、たとえば来年夏くらいに終息するとしたら、今、動くのは無駄。もちろん、来夏になっても混迷した状態が続くようであれば、それはオフィスビルの問題ではなく、日本、世界全体の大問題です」。

都心各所で進む大規模再開発もすでに工事が始まっているものについては粛々と進行するだろう。「2023〜2026年くらいに完成予定のものについては変更はないでしょうが、その先に着工する物件は今のところ、様子見状態。しばらくは足踏み状態が続くでしょう」。

都市は社会資本の大きな投資があって成り立っているもの。投資を回収しない状態で簡単に都市が捨てさられることはないと市川氏。

「開発でも数年、都市計画となると20年、30年と長期で考えるものです。経済や社会の変化があったとしてもそれほど大きくは方向転換しません。慌てて短期を見ただけの意見に右往左往するより、長期的な視野で考えていただきたいものです」。

健美家編集部(協力:中川寛子)

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