コロナ下で学生や外国人の賃貸ニーズが下火になり、高齢者の入居を受け入れるオーナーや管理会社が増加しているという。教えてくれたのは、65歳以上の部屋探しサイト『R65不動産』だ。高齢者の入居を可能とする他社の管理物件を掲載している。掲載数は現在2000件を超え、前年比2倍に増えている。
高齢者の入居には孤独死を懸念する大家や管理会社が少なくない。高齢者向けの賃貸住宅の近況や利点、注意点などを聞いた。

2020年12月に対応地域を広げ、掲載件数が急増。
事故物件の告知義務が変更されたことも背景に
日本では少子高齢化の動きが顕著であるもの、65歳以上が入居可能な賃貸物件は全体の5%しかないとの調査結果がある。
高齢者の住まいとして親しまれてきた公営住宅は人口減少とともに10年で25,000戸も減少した。民間の賃貸住宅は、サービス付き高齢者向け住宅や介護施設などに比べて高齢者が生活をするうえで自由度が高く、物件数も豊富なことから、高齢者の需要が高まっている。
こうした社会情勢を踏まえて株式会社R65不動産では、2016年の設立以来、65歳以上からの部屋探しを支援している。
このコロナ禍で、掲載件数は前年比2倍の2000件と、1年で掲載件数が倍増している。まずはその理由を、広報の飯田鉄弥氏に聞いた。
「大きな要因として考えられることは、コロナの影響で学生や外国人の入居ニーズが減り、空室の管理物件に高齢者の入居を検討する管理会社や大家さんが増えていることです。もともと当社の掲載物件は管理会社と大家では、8:2の割合で管理会社が多かったのですが、昨今では大家さんからの問い合わせが増えています」
単身の高齢者の入居においては、孤独死のリスクが懸念される。しかし今年5月、国土交通省が事故物件の告知義務のガイドライン案が発表された。
事件性の高い殺人や自殺、火災などによる死亡は3年間の告知義務が発生するが、病死や老衰などのよる孤独死は告知義務が発生しないとの内容になっている。このことも大きく影響しているのかもしれない。
「我々もこの件は、高齢者向けの賃貸住宅市場にとって、ポジティブなことであると受け止めています。大家さんの意識を変えるきっかけになっているかもしれません」
さらにもう1つ、掲載件数が増えた背景にR65の掲載地域に中国・四国地方を中心に新たに7つのエリア(山口県下関市、岡山県倉敷市、徳島県徳島市、愛媛県松山市、愛知県蒲郡市、額田郡幸田町、千葉県我孫子市、君津市、高知県高知市)を追加し、計17都道府県に拡大したことも考えられる。
大家にとって高齢者を受け入れる利点は
入居期間6年以上が7割と長期にわたること
大家にとって入居者として高齢者を受け入れる利点は、入居期間が長いことであると飯田氏はいう。
「学生さんは賃貸住宅に2〜4年住んだら退去する人が7割です。それに対して65歳以上の7割が6年以上入居するとの調査結果があり、高齢者は一度入居したら、長く住む傾向にあります。ファミリー層と比較すると、ファミリーの4倍長く住む傾向にあります」
入居期間が長ければ、入退去に伴うクリーニングやリフォーム、新たな入居者の募集などの手間が省けることになる。

高齢者の見守りサービスを推奨。
電気の使用量の変化をAIで察知
孤独死による物件価値が低下するのを防止するため、R65では「見守りサービス」の導入を推奨している。
「当社が推奨している見守りサービスでは、対象物件の電気使用量のデータを元に通常と異なる電気の使用量をAIで検知し、異常があれば、自動音声による電話とメール通知で登録者へ知らせています」
万が一孤独死が起きてしまった時のための家賃補償や原状回復費用等を補償する保険も付いて見守りサービスは月額980円〜(詳細は、R65あんしん賃貸パック)となっている。
ちなみに代表取締役の山本 遼氏も大家としてシェアハウスを経営しており、コロナ禍での賃貸経営の難しさを感じており、次のように述べている。
「シェアハウスの経営で空室率0%を維持することは難しく、私自身、今回のコロナ禍の影響を受けています。新型コロナウイルス感染のリスクにより、例年よりも空室が目立ち、かつ高齢者は孤独死のリスクから受け入れへの抵抗感がある人もいるでしょう。見守りサービスや保険の活用で、少しでも空室の解決に繋がればと思っています」

首都圏を中心に、再びコロナの感染者が増え、自宅療養者が増えている。一人暮らしの入居者が自宅で亡くなるケースも耳にする。電力の使用量の変化で、いち早く異変に気づくことができる見守りサービスは、高齢者が暮らす賃貸住宅を経営するうえで安心材料になりそうだ。
健美家編集部(協力:高橋洋子)