このところ、「風の時代」なる言葉を耳にすることが増えた。西洋占星術に由来する言葉なのだが、単に本日の運勢的な意味を想像してはいけない。約200年単位での社会の変化を指するものであり、過去の変化を知ると必ずしも単なる占いとは言えないのである。
西洋占星術では約20年に一度、木星と土星が大接近して時代が変化、それがさらに約200年に一度変化するという。火、土、風、水の4種類がこの世を構成する元素と定義されているのだが、約200年ごとにその時代の中心となる元素、エレメントが変わるとされているのだ。
約200年前に起こった変化が産業革命
前回の変化は約220年前頃、つまり18世紀末に起こったとされており、この時には時代は火から土に変わった。火の時代のエレメントは争いであり、武力。そこから土の時代への転換期に起こったのが産業革命である。武力から工業生産、経済力へという転換と考えれば良いだろうか、確かにその時期に社会は変わった。
最近まで続いてきた土の時代は土が表すように足元にあって固いもの、不変と思われるものが中心となってきたと言われる。形のあるものが重んじられる、物質主義の時代であり、目に見える資産が重んじられてきたとも。固定概念、前例踏襲の時代でもあった。
風の時代は見えないものを重視、変化を常とする
それが風の時代に変わったのは2020年12月22日から。どんな時代なのかについては様々な意見があるが、ひとつ、共通するのは土とは違って目には見えないものであり、しかも、常に変化しているものであるということ。
そこから情報や知識、教育、コミュニケーションや創造力、思考力などといった見えないものがより重要になり、知ることを求める時代になるという。ツールでいえば目には見えないが人を繋ぐインターネットなどだろう。風の融通無碍なイメージからするとこれまでの固定概念から人の考え、行動はもっと自由で多様になり、所有の意味も変わるのではないかとも思われる。
時代の転換期のコロナ禍という意味
それ以外でも変化は多々想定できるが、大事なことはこの変化の時期がコロナ禍中にあるという点だろう。今回のコロナ禍が世界の歴史に与えるインパクトについては後世の評価を待つしかないわけだが、前回の産業革命がこの200年間に影響を与えてきたことは言うまでもない。もし、コロナ禍がそれに匹敵するのだとしたら、私たちは非常に面白い変化の時代に生きていることになる。
実際、変化はさまざまな場面で起きている。働き方、暮らし方、生き方、モノの考え方、価値観その他、社会でニュースになっている出来事はもちろん、多くの人は自分の中での変化を感じているのではなかろうか。
個人的には東京五輪前後で旧来の差別的な考えの人々が立て続けに糾弾されたという点に固定概念や昔からこういうものだからという考えが通用しなくなっていることを感じている。これまで許容されてきた古い、固い考えが否定され、柔軟に時代に合わせた思考をする必要が生じてきているのである。
これからの経営により柔軟な思考を
当然、不動産経営にも同じような影響が出てくるのではないかと考えられる。オフィスではそもそもの存在価値が考え直される時期に来ているし、店舗も同様。これまで安定した優良なお客さんと思われていた大きな組織より、小さな、コミュニケーションを大事にする業種に生き残りの可能性があるのかもしれにのだ。
住宅でいえば都市から郊外へという流れはありながらも、郊外の不動産そのものがボトルネックとなっており、もっと自由な発想で住宅が作られるようになる日が待たれる。貸し方、借り方の変化も必要になってくるだろう。
多くの投資家が手掛けてきた若い単身者の住まいニーズは価格帯、地域によっては消失しており、その一方で高額賃貸住宅はこれまで以上の活況を呈している。今はまだ変化の過程であるという言い方と同時に、今後はずっと変化し続けるのだとも考えられる。いずれにせよ、常識やかくあるべしが通じない時代がやってくることだけは間違いないのではなかろうか。
ちなみに風の時代が本格化するのは2023年以降だそうで、その次に時代が風から水に変わるのは2159年12月21日。つまり、今生きている私たちはこれからずっと風の時代を生きることになる。柔らかい頭で変化に臨みたいところである。
健美家編集部(協力:中川寛子)