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ニーズは戻るか。プロが語るオフィス2023年以降問題

不動産投資全般/市況 ニュース

2021/10/04 配信

オフィス仲介大手の三鬼商事株式会社オフィスマーケットデータによると2021年8月時点における東京ビジネス地区の平均空室率は6.31%となっており、2020年2月の1.49%を底に18カ月間増え続けている。コロナ禍でオフィスニーズが減っていることの例証としてニュースでもしばしば取り上げられているのでご存じの方も多いだろう。

オフィスの需給は空室率5%が目安

一般にオフィスの需要と供給は5%が一致ラインとされている。それを上回る現在の状況は供給が需要を上回っていることになる。

また、不動産鑑定評価では標準的なオフィスビルの空室率を4〜5%として算出することが多い。これは空室率が4〜5%を超えると賃料の下落が生じうることがあるため。つまり、今の状況はオフィスが余り始めている、賃料下落が始まりそうな状況といえ、実際、東京では賃料下落は空室率と軌を一にして始まっている。

もちろん、この状況は東京に限ったことではない。数字は各地域で異なっているものの、札幌、仙台、横浜、名古屋、大阪、福岡と全国共通。地域によっては多少持ち直した月もあるが、総じて空室は増える傾向にある。

東京の場合で見ると最初に空室が増えたのは渋谷区。2019年4月の段階では空室率が1.02%と都心五区(千代田、港、中央、新宿、渋谷)のうちでもっとも低かったが、スタートアップも含め、IT系の企業が多く、リモートが容易だったこともあろう、早々に退去が出るなどで上がり始めたという。

その次に空室が増え始めたのは同じIT系でも富士通、東芝などの大手が所在する港区。富士通は2023年3月末までの国内のオフィススペースを半減させるとしており、東芝も同様にオフィス削減を発表している。

一方で千代田区は大手企業の本社機能が集中しているため、あまり動いておらず、特に丸の内は他エリアからすると無風と言っても良いほど動きがない。中央区も製造業が多いため、こちらも千代田区同様。全体として空室は増えているが、地域で見ると、多少ばらつきはあるわけである。

これからのオフィス動向を過去の例から考えてみる

と、ここまでは新聞等でもしばしば取り上げられている話だが、ここではもう少し先の話をしたい。テレワークの進展でオフィスニーズが減少傾向にあり、空室が増えているのは確かだが、この傾向は今後どうなるのか。

「ヒントになるのは過去の空室率の変化です」と教えてくれるのは都心を中心に幅広くオフィスを仲介するケン・コーポレーションビル営業部の面々。「これまででオフィスの空室率が大幅に上昇したことが2回あります。それが2003年、いわゆる2003年問題が話題になった時期と、リーマンショック時です」。

その言葉から三鬼商事のオフィスデータを過去に遡って確認してみると確かにその時期にはオフィスの空室率が大きく上昇している。

まずは2003年前後。2001年4月に4.03%だった空室率が2002年12月には7.36%になり、2003年は6月、8月に8.57%と当時としてはマックスの数字となっている。その後、少しずつ持ち直し、2004年12月には6.10%、2005年12月で上昇前に近い4.22%となっており、2003年を中心に4年ほど空室率の高い時期があったことが分かる。

もうひとつのリーマンショック時は2007年12月が2.65%だったのに対し、2008年12月には4.72%、2009年12月には9.17%に及んでおり、さらに2010年、2011年、2012年と8〜9%が続き、2013年12月にようやく7.34%と下落傾向が見え始め、リーマンショック前に近くなってきたのが2016年12月の3.61%。よく失われた10年という言葉を聞くが、まさにその通りの減少が起きていたわけである。

空室率はまだ上がるかもしれない

さて、これらの過去から2つ、学びたい。

ひとつは現在6.31%という空室率はまだ上がる可能性があるということ。景気の動向次第ではリーマンショック時の9%、もしかしたらということもあり得るかもしれないのである。

もうひとつは2003年問題の再来があるかもしれないという点。ここで一度、2003年問題をおさらいしておこう。これは同年に複数の大規模開発が竣工、大量のオフィスが同時期に供給されることによって起こったオフィス余りを差す言葉である。

「バブル期にはたとえば90年12月は空室率が0.39%だったように空室がゼロに近い状態になっており、その後、バブルが崩壊、空室率がぐんぐん上がった時期があったものの、少し持ち直しだしたのが2000年頃。金融ではビッグバンと呼ばれるような規制緩和があった時期でした。そのタイミングで大量供給が行われたのが2003年前後です」と都心のオフィスビルに詳しい不動産会社。

2003年問題の大きなファクターとなった汐留シオサイト。13棟の超高層ビルが建ち並ぶ
2003年問題の大きなファクターとなった汐留シオサイト。13棟の超高層ビルが建ち並ぶ

汐留シオサイト、品川駅東口の品川インターシティ、丸の内の丸ビルなどに加え、なんといっても大きかったのが六本木ヒルズである。こうした大量供給によって東京中心部、特に新築ビルの空室率は大きく上昇したのである。

それを踏まえてこの先を考えるとしたら、2023年以降のオフィスの大量供給を避けては通れない。2018〜2020年は大量のオフィス供給のあった時期ではあったものの、幸いにしてコロナ以前にほぼ入居が決まっており、影響は少なかった。そして、2021年、2022年はオフィス供給が少ない年のため、オフィスニーズが減っていると言われていても大崩れしていないのはそのためだという。

ところが2023年以降は違う。かつての2003年並み、あるいはそれ以上のオフィスが供給されることが予測されているのである。六本木ヒルズが着工から10年かかったことを考えると、大規模ビルの計画は市場動向と合わないことはよくある話だが、それにしても、である。2003年のように同時期に大量に竣工した例はあったが、その時代はオフィスニーズが高かった。過去の数字で挙げた通り、2003年の空室率アップはリーマンショック時よりも早々に経済成長によって収束しているのである。

でも、今はどうだろう。コロナ禍後、オフィスニーズはその時のように盛り上がるだろうか。それを考えると非常に心配になるタイミングなのである。

虎ノ門、高輪ゲートウェイ、浜松町その他大規模開発が目白押し

開発が続く虎ノ門エリア。手前左が虎ノ門ヒルズ、手前右が虎ノ門ビジネスタワー、左奥で工事が進んでいるのが虎ノ門ヒルズステーションタワー、右奥は虎ノ門二丁目地区第一種市街地再開発事業 業務棟
開発が続く虎ノ門エリア。手前左が虎ノ門ヒルズ、手前右が虎ノ門ビジネスタワー、左奥で工事が進んでいるのが虎ノ門ヒルズステーションタワー、右奥は虎ノ門二丁目地区第一種市街地再開発事業 業務棟
虎ノ門・麻布台の建設現場。広大さがお分かりいただけるだろうか
虎ノ門・麻布台の建設現場。広大さがお分かりいただけるだろうか

具体的に2023年以降に完成する大規模開発としては虎ノ門ヒルズステーションタワー・虎ノ門・麻布台プロジェクト(2023年)、高輪ゲートウェイ(2024年)、日本橋一丁目中地区再開発・東京駅前八重洲一丁目東地区市街地再開発・八重洲二丁目中築第一種市街地再開発(2025年)、TOKYO TORCH(東京トーチ) TORCH TOWER(2027年)などとなっており、浜松町周辺でも多数の計画があり、巨大オフィスが続々誕生する。

浜松町駅周辺でも複数の開発計画がある。写真は手前が浜松町二丁目地区の工事現場。中央の黒い建物がこれから解体、建替えられる世界貿易センタービル
浜松町駅周辺でも複数の開発計画がある。写真は手前が浜松町二丁目地区の工事現場。中央の黒い建物がこれから解体、建替えられる世界貿易センタービル
ツインタワーに建替えられる予定の旧東芝ビル。すでにS棟の工事は始まっており、2023年度に完成予定。既存ビル解体後に始まるN棟は2026年度に着工、2029年度に完成予定
ツインタワーに建替えられる予定の旧東芝ビル。すでにS棟の工事は始まっており、2023年度に完成予定。既存ビル解体後に始まるN棟は2026年度に着工、2029年度に完成予定

「これらのオフィスとなると入れる会社は限られてきます。与信の問題を考えると資本力のある大手以外は入居にハードルがあると言っても良いでしょう。そして、大手の移転となると移転決定してから実行までに2年、3年かかることもあります。住宅の感覚でいうと2023年の竣工はまだ先と思われるかもしれませんが、オフィスビルであればもうすぐといっても良いタイミングです」とケン・コーポレーション。

「これまでであれば、こうしたビルは竣工前に満室になることが多く、噂が流れるものですが、まだ、めどが立っていないのか、虎ノ門も八重洲も噂は聞こえてきません。このままだと竣工には間に合わないかもしれません」(前掲・不動産会社)。

オフィス市場は住宅と違い、新築はもちろん、中古でも情報がほとんど公開されない。水面下で交渉が行われ、主なところが決まってから情報が出てくるのである。

「実際の広告でも募集価格、坪賃料などが明記されていないものが大半です。それはどんな会社がいつから借りるかなど個別の要因で賃料が決まることが多いため。住宅と違い、築年数が古くなっても賃料が下がることもなく、個別交渉ということが多いのです」(ケン・コーポレーション)。

統計としては空室率やオフィス賃料の動向は分かるが個別のビルの情報がなかなか分からないのはそうした特殊事情のため。どこのビルがどうとは分からないものの、全体として2023年以降竣工のビルについてはあまり芳しくないらしいのである。

その後も大量供給が続くことを考えると日本の経済そのものへの影響が気になるが、貸主もいろいろ工夫をし始めている。

「まるまるワンフロアでは難しいという場合には分割して貸せるようにしたり、家具その他を備え付けたオフィスも出てきていますし、他社との協業の場のあるオフィスを作るなどこれまでにない貸し方、作り方の例も出てきています。また、一度、密を避けるためにオフィスを分散してみたものの、効率を考えて再度集約するという例もあり、業種によってはオフィス不要になることがあっても、全体としてはオフィスが不要になることはないのではないかと思われます」とケン・コーポレーション。

2023年まで残りはわずか。コロナの状況はもちろん、経済がどうなるかも含め、注目していきたいところである。

健美家編集部(協力:中川寛子)

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