新型コロナが落ち着きを見せ始めて生活を正常に戻そうという動きが出始めている。今年は3年ぶりにまん延防止等重点措置などの制限のないゴールデンウイーク(GW)を迎えて各地とも人で賑わいを見せた。
この次の視点は訪日外国人の解禁となる。政府は1日当たりの入国者数を上限1万人としているが、2万人に拡大する案が浮上しており、6月にも訪日観光客の受け入れを再開する方向で検討している。
日本政府観光局(JNTO)のデータを見ると、2021年の訪日客の総数は、累計24万5862人で、前年比94.0%の減少になっている。コロナ前の2019年は、累計3188万2049人が訪れていた。
本来なら円安で日本に旅行がしやすく日本各地に訪日客がお金を落としていってもおかしくはないが、現状は旅行が制限されているため、この効果は限定的になっている。外国人は人口減少で落ち込む国内需要を補うのに欠かせない存在であることが分かった。
これは賃貸住宅市場でも同じである。特にワンルームタイプなど独身者や学生などの独り身世帯の賃貸住宅は、若年層の人口が減り続けていることで、賃貸オーナーが入居者を誘致するのに苦労している。
特にコロナ禍でワンルームタイプが避けられるようになったことで、さらに苦境に追い込まれている。このため、これまでオーナーが入居者として嫌がっていた外国人は、そうした家主の救世主となり得るかもしれない。
築年数にこだわらない、広さも求めない
3月1日から外国人留学生等の新規入国を一定の要件で認めているが、入国できていない待機留学生はおよそ15万人。政府は5月末まで希望する留学生の相当程度が入国できる見込みとしている。コロナ感染の水際対策で抑制されていた留学生が本格的に日本に戻ることに期待する賃貸管理会社も見られるようになった。
投資用マンション販売・管理の日本財託グループは、同社が管理する物件で外国人向けの仲介会社から依頼や問い合わせが増えているという。都内で外国人向けを専門に扱う会社は、「待機留学生15万人の4割が首都圏に流入するとの報道も見られる」と徐々にインバウンド需要が回復することに期待している。
築古、狭小、事故物件などもチャンスか
留学生と一口に言っても言語、習慣、宗教が異なり様々であるが、一般的に居住面積や築年数について必要以上にこだわらない。家賃と学校の距離、生活の利便性などを求めているので、そうしたエリアでの築古3点ユニットタイプにも商機がありそうだ。
国によっては、湯船に浸かる習慣がなくシャワーで済ませる外国人は珍しくないため、築古でリフォームを考える際に外国人向けとして最小限の水回りリフォームで済ませることもできそうだ。

都内に住む東南アジア出身の華僑系の人は、「家賃が安ければ事故物件でも構わないという人は多いですよ。その一方で、新築であっても近くにお墓がある物件や、窓からお墓が見えるような物件は避けますね」とアドバイスする。
コロナ禍でダメージが大きかったゲストハウスでは、訪日客の取り込みを本格化する。コロナ前に外国人向け賃貸としてマンスリー形式で物件運営していた個人投資家の辰巳博さん(45歳、仮名)もその一人だ。
「コロナで干上がっていたが、ようやく動き出せそうだ。私のところは、お風呂やトイレ、キッチンといった部分は共同で使用する家具付きの下宿スタイルで運営しており、都内で6畳の広さを6万〜7万円で提供する。その中には水道・光熱費、インターネット代が含まれて1カ月から貸し出す」と再開に向けて動き出し始めた。
コロナ感染が完全に終息したわけではないが、経済社会活動を取り戻す動きとともに、留学生と訪日客がどこまで回復するか。留学生の動向が賃貸住宅業界で注目を集めている。
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健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))