急速な円安を背景に、中国人投資家の日本不動産投資が加速している。円相場は対香港ドルで1998年以来の安値圏にあり、対人民元では約30年ぶりの安値を更新。日本の不動産が歴史的な安値で購入できるチャンスとあって、本土を中心に香港、台湾の中華系富裕層がコロナ前以上に日本の不動産を爆買しているという。
需要な都心に集中、
円安で日本の不動産に一層の割安感
東京都内の中国人向け不動産仲介業者によると、コロナ禍からの回復も相まってか、今年に入って中国本土の投資家からの問い合わせが急増しているという。ほとんどが東京都内、それも都心の物件だという。
圧倒的に動きが早いのは、都内の高層マンションの区分所有で、成約額の大半は1億円前後。中にはマンション一棟やホテルを10億円ほどでドカンと購入する富裕層もいるのだとか。逆に、郊外型の木造アパートの需要はほとんどないという。
「ほとんどの客は中国本土から動かず、物件を実際に見ることなくバーチャル見学だけで購入を決める」とのこと。
日本にも展開している台湾不動産大手の信義房不動産が7月14日に発表したプレスリリースによると、今年上半期の成約件数は前年同期より40%以上増加した。成約平均価格は第2四半期(4~6月)は7148万円で、第1四半期(1~3月)より7%増加。1億円以上の物件の成約数も伸び続けている。
同社の日本語サイトでも、成約物件の80%以上が都心5区(千代田、港、中央、渋谷、新宿)に集中していて、2,000万~7,000万までの物件が全体の60%を占めていると紹介されている。
同様の動きは香港の投資家にも見られる。アメリカに本社を置く大手不動産会社の日本支社では、香港の不動産投資家からの問い合わせが殺到し、取引数も前年比で大幅に増えているという。
東京オリンピック後も堅調に上昇を続ける首都圏の不動産価格の推移を好感していたところに歴史的な円安の到来で体感価格が2-3割安とくれば、貪欲な中国系投資家が買わない手はないだろう。
コロナ収束後にさらなるバブル到来の予感
大阪、福岡にも中国マネーの流れ
欧米の投資家と異なり、中国系投資家の中には、純粋な投資目的に加えて、将来の自己居住やセカンドハウス利用を念頭に日本の物件を購入するケースも多い。
コロナによる外国人の日本への渡航制限の解除が進めば、こうした中国系投資家の来日も増え、ますます日本の不動産が買われていくだろう。
そうなると、現在のような東京一極集中から、リゾート地の北海道や沖縄、グルメスポットとして中国人に人気の大阪、京都の物件も中国人のターゲットになっていくことが予想される。
実際に、先月、大阪市内の収益物件を売却した日本人投資家は、「買い手は本土の中国人だった」と明かす。現地の中国人代理人を使って、本土からノールックで大阪市内の物件を買いまくっているのだとか。
勢いと存在感を増す一方の福岡にも、すでに中国人の目は向いている。福岡市内のある不動産会社には、近年、中国系投資家からの問い合わせが増え続け、中国語を話せるスタッフを増員したという。
福岡空港から台北まで約2時間半、香港まで約3時間半、上海まで約4時間。まさにアジア各地への玄関口とされる福岡は、中国系投資家にとって心理的ハードルが低く、投資にうってつけの都市となるだろう。
福岡空港ではコロナ後の需要回復を見据え、国際線ターミナルの大規模な増改築工事が進められている。
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健美家編集部(協力:
(おおさきりょうこ))