多様化するワーケーション
拠点移動型(不動産型)も登場
ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語「ワーケーション」。コロナ禍でリモートワークを採用する企業が増えたことも追い風になり、ワーケーションの市場は一気に広がったといえる。
(株)矢野経済研究所が2022年に実施したワーケーション市場に関する調査によると、2021年度699億円を見込んでいる国内ワーケーション市場規模は、2023年度には1,084円にまで膨らむとの予測を発表している*。
休暇を取りながら働くという旅の一形態に過ぎないのでは?と思われるかもしれないが、ワーケーション志向の広がりにつれて、休暇活用(観光等)型だけでなく拠点移動型(不動産型)や企業がオフィス以外の拠点を利用しての会議型や研修型など多様化している。
自治体、法人・個人192会員からなる一般社団法人日本ワーケーション協会の理事である古地優菜氏にワーケーションのトレンドについて聞いた。


まず、古地氏は本協会の設立について「海外で先行していたワーケーションですが、日本では受け入れ体制ができていないことから、情報共有やワーケーションをしやすい環境づくりを目指して2020年7月に設立した。
ちょうど菅義偉氏が官房長官に在任中でコロナ禍における観光促進策としてワーケーションの推進に言及し、各省庁でもワーケーション促進普及の事業も出るなど、一気に注目が集まった」と背景とともに語った。
「その後、ワーケーションツアーやテレワークなどハード面の環境整備の推進事業が出たりで、盛り上がったものの、ワーケーションとはどんなもので事業者は何をすべきかというところがわからないという状況だった。
確かにワーケーションには観光的な側面もあるがそれだけではない。観光は行った人が一時的にお金を落とすが必ずしも継続するものではない。ワーケーションは、もっと長く地域に関わることで、結果的に地域にお金が落ちる地域振興の一つのあり方だと捉えている」と言う。
東京中心ではなく、地方をワーケーションによって活性化するところに意義を置いているわけだ。ワーケーションの一つのタイプとして協会のHPで取り上げられている拠点移動型(不動産型)では、地方のリフォームした空き家やシェアハウスの活用も想定されている。
ワーケーションで不動産に
求められる条件や設備は?
不動産をワーケーションに活用するためにはどんな条件が求められるについては
「ハード面では@WiFi:最低必要条件だが、さらに企業研修対応も考えるなら、たとえば5人で使用して環境を担保できるか、使用に際してパスワードを設定しているかなど、その質やセキュリティが求められる。A個室:ワークに集中でき、個別の打ち合わせやリモート会議などもできるので個人も法人も欲しがる。今は、あとづけの電話ブース的な個室を設置する施設も。B机や椅子 :長時間座ってのワーケーションしやすいものがあるか。Cコンセント:数と位置。よく机からベッドより遠いことがある。その際に延長コードの貸し出しがあるか。設備機器でいるとホワイトボードやプロジェクターも需要がある」
と語った。

「コワーキングスペースは無人化を進めているところもある。規模が小さいコワーキングスペースやシェアオフィスは、たとえば今全国で800店舗を運営している『いいオフイス』の店舗オーナーになれば、無人運営ができてアプリ検索で顧客に見つけてもらい、使用料も回収できる。
サテライトオフィスも同様のものがある。地方の空き家スペースの活用事例では、山梨県富士吉田市の『まるごとサテライトオフィス』が宿泊だけでなく、居酒屋の昼の空き時間をワーキングスペースに利用してもらい、専用の機器を置いて使用料を回収するようなことも展開している」
とワーケーション施設の運営のための方法もいろいろ広がってきているという。
日本ワーケーション協会の活動については
「会員構成は、自治体、企業、個人(3人以下法人含む)が3分の1ずつ、ワーケーションの利用者と運営者の双方がいるので、会員同士のマッチングやオンライン勉強会の開催している。ワーケーションの実践者や事業者、地域の魅力を訴求している人など70名を超える公認ワーケーションコンシェルジュを認定していて講師やアドバイザーとして派遣などもする。」
「2023年、新事業としてワーケーション施設の認定制度を実施。ハード面など細かく条件を設定しており、認定されれば協会のHPに掲載する。応募は会員でなくても可能。詳しくは協会HPを参照いただきたい」
とのことである。
執筆:
(おのあむすでんみちこ)