株式投資で配当金生活を楽しむように、J-REIT(ジェイリート)で分配金を毎月もらおうというシリーズ。
J-REITの分配金は、株式投資の「配当金」と同じ意味だ。しかし、J-REITの分配金利回りは3~6%と、株式投資よりも高配当なものが多い(一部のホテル特化型リートは除く)。
10月決算のJ-REITをいま買うと、3ヶ月後の来年1月に分配金がもらえる。FIRE(経済的独立&早期リタイア)への第1歩に、10月決算の注目銘柄3つをご紹介する。

10月決算のJ-REITは9銘柄!
注目はNTT都市開発、トーセイ、みらい
10月決算期の銘柄は次の9銘柄だ。
NTT都市開発リート投資法人
ケネディクス・オフィス投資法人
いちごオフィスリート投資法人
スターツプロシード投資法人
星野リゾート・リート投資法人
インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人
トーセイ・リート投資法人
積水ハウス・リート投資法人
投資法人みらい
※インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人は上場廃止の予定。
※証券コード、銘柄名、投資口価格、予想分配金利回り、NAV倍率。
「投資口価格」は、J-REITの場合の「株価」に相当する。
投資口価格と予想分配金利回りは2021年10月1日終値現在。
10月決算リートでは、トーセイ、みらい、NTT都市開発の3銘柄が注目だ。
築古物件をバリューアップして高利回りに!
小粒だがピリリと辛い、独自路線のトーセイ・リート
トーセイ・リート投資法人は総合型リートだが、資産規模は723億円と小型だ。スポンサーは、東証1部とシンガポール証券取引所にも上場している不動産会社、トーセイ株式会社。
同リートの投資対象エリアは東京経済圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)が中心だ。50億円以下の中小規模のオフィスや住宅、商業施設、物流施設が投資対象。

同リートで特徴的なのが、取得競争の激しいメジャーな立地を避け、マイナーな立地の物件が目立つ事だ。そして、築年数が古い物件が多い。
マイナーな立地の築古物件を取得することで、物件の取得価格が低くなり、利回りが高くなる構図だ。
同リートの戦略はスポンサー会社の3つの強みを活かしている。「目利き力」「リーシング力」「再生力」だ。
エリアや築年数に因われず、競争力の高い物件を厳選して取得し、バリューアップを行い、その物件に応じた適正な賃料設定を行って高い稼働率を維持し、高利回りを叩き出す作戦だ。

他のJ-REITに比べると「築古物件ばかり」という辛口な意見もあるが、築古物件を再生して高利回りを叩き出す不動産投資家と同じ手法だと言えるだろう。
築古物件ばかりとはいえ、高利回りのJ-REITなので、投資主(株主と同義)に個人投資家の割合が多いのも特徴の一つだ。
コロナ禍で、2021年4月期はオフィスの解約などは多かったが、住宅と商業施設は堅調で、全体の稼働率は97.1%を維持している。
新たに4物件を購入し、2物件を売って売却益も得た。安定した分配金を維持するための原資として、売却益は内部留保している。
今後は資産規模800億円を目指している。東京経済圏の物件が高騰している中、次にどんな物件を取得するのか注目だ。
トーセイ・リート投資法人
予想分配金:第14期(2021年10月期)3,530円、第15期(2022年4月期)3,530円
保有物件数:52
取得価格合計:723億円(2021年3月31日現在)
三井物産とイデラキャピタルが共同スポンサー
物件取得が加速するか?投資法人みらい
投資法人みらいは総合型リートで、資産規模は1,539億円だ。
スポンサーは総合商社の三井物産とイデラキャピタル(中国の復星企業集団が親会社)の共同スポンサーだ。
三井物産は、物流施設特化型リートである日本ロジスティクスファンド投資法人(日本ロジ)のスポンサーでもある。
そのため、投資法人みらいは日本ロジが扱う大規模物流施設「以外」の物件を取得しているようだ。
同リートは、「コアアセット」としてオフィス・商業施設・ホテル・居住施設等を保有している。
そして、今後の成長を見込んで「グロースアセット」を少しずつポートフォリオに組み込む形を取っている。

「コアアセット」は三大都市圏を中心としたオフィス、商業施設、ホテルだ。エリアは東京圏が60.7%、大阪圏が16.9%、名古屋圏が8.9%、その他が13.5%。
「グロースアセット」は、リノベーションなどを行って収益力アップを目指す物件や、今後の市場拡大を期待できそうな物件だ。
コロナ禍の対応策として打ち出した「みらいリバイバルプラン」の一つに、大阪市内のビジネス街のバジェット型ホテルを「セットアップ型サービスオフィス」へとコンバージョンした。
それが以前紹介した「BizMiiX淀屋橋」だ。

2021年6月時点での稼働見込みは27.7%。まだ稼働率は低いが、東京に比べてライバルが少ないこと、コワーキングスペースの利用者とは異なるターゲット層を狙っていること、オフィスや在宅とは違う「サテライトオフィス」の需要が今後は増えると期待しているようだ。
奈良の商業施設「ミ・ナーラ」は再リニューアルを行い、核テナントを入れ替えて、首都圏に展開する食品スーパー「ロピア」や、ナフコなどを誘致して売上アップを果たした。
同リートは、独立系のイデラキャピタルが共同スポンサーであるためか、今ひとつ人気が高くならない。
しかし、三井物産もスポンサーなので、物件取得の面でもう一段の飛躍が期待出来そうだ。
投資法人みらい
予想分配金:2021年10月期(第11期)1,260円、2022年4月期(第12期)1,260円
保有物件数:34
取得価格合計:153,904百万円(2021年6月15日現在)
プレミアから、名実ともにNTTグループに!
名称変更したNTT都市開発リート
NTT都市開発リート投資法人は、オフィスとレジデンスの2種類の物件で運用する複合型リートだ。資産規模は2,600億円。
スポンサーは不動産会社のNTT都市開発株式会社。
同リートは元々「プレミア投資法人」という名称だったが、スポンサーとの関係を明確化するため、今年4月1日付で名称変更した。
NTT都市開発(株)の親会社が日本電信電話株式会社(NTT)だ。
NTTの経営方針が変わり、「不動産事業を強化」することになったため、NTT都市開発とリートの一体感を高めるべく、投資運用会社も含めてブランドの統一した。
同リートのポートフォリオはオフィス69.5%、レジデンス30.5%。景気変動の影響を軽減するための組み合わせで、テナントも法人や個人と分散している。
物件は東京経済圏が中心だが、今後はNTT都市開発と連携して、地方の主要都市にも拡大する予定だ。
コロナ禍の影響でオフィス需要の変容が出てくるものの、同リートの入居テナントはNTTグループが多い。上位10社のうち7社までがNTTグループだ。
引き続き、安定した運用が見込めるだろう。

2021年4月期には、スポンサーから大型(Sクラス)ビル「品川シーズンテラス」の持分を取得した。
また、「アーバンネット麹町ビル」を売却し、売却益19億2,100万円を得ている。
そのため、同期の分配金は前期から1,101円アップして4,024円に。
NTTグループの「街づくり戦略」に合わせて、今後もスポンサーから優良なオフィスビルを取得できる可能性が高まっている。

NTT都市開発リート投資法人
予想分配金:第38期予想(2021年10月期)3,130円、第39期予想(2022年4月期)
2,710円
保有物件数:58
取得価格合計:2,600億円(2021年9月30日現在)
10月決算銘柄を買って分配金をもらうには、権利付き最終売買日である10月27日15時までに購入しておく必要がある。
最後に、投資判断は自己責任でお願いしたい。
健美家編集部(協力:野原ともみ)