株式投資で配当金生活を楽しむように、J-REIT(ジェイリート)でも分配金(株式投資の「配当金」と同義)を毎月もらおうというシリーズ。
J-REITの分配金利回りは3~6%と、株式投資よりも高配当なものが多い(一部のホテル特化型リートは除く)。
分配金を毎月もらって、経済的自立と早期リタイア、FIRE生活への1歩にしよう!
1月決算のJ-REITをいま買うと、3ヶ月後の4月に分配金がもらえる。1月決算の注目2銘柄をご紹介する。
1月決算のJ-REITは16銘柄!
注目は森ヒルズリートと産業ファンド
1月決算期の銘柄は多く、昨年上場したばかりの1銘柄を加えて16銘柄だ。
※証券コード、銘柄名、投資口価格、予想分配金利回り、NAV倍率。「投資口価格」とは、J-REITの場合の「株価」に相当する。
投資口価格と予想分配金利回りは2022年1月11日終値現在。
なお、J-REIT(ジェイリート)とは、証券市場に上場している金融商品「不動産投資信託」のこと。J-REITを購入すると、株を買うぐらいの小口資金で、大規模大家さんの仲間になれる感じだ。
分配金利回りは3~6%と、株式投資よりも高配当なものが多い。詳細については過去記事を参考にしてほしい。
そして、1月決算の注目銘柄は森ヒルズリート投資法人と産業ファンド投資法人の2つだ。
東京都心で職住近接の大規模プロジェクトを開発する森ビル
「ヒルズ族」を生んだ文化を受け継ぐ、森ヒルズリート
森ヒルズリート投資法人は、住居や商業施設も含むものの、実質はオフィス特化型リートと言える。
資産規模は4,107億円。スポンサーは「東京都港区の大家さん」と言われる森ビル株式会社だ。
森ビルが開発したビルで一番有名なのは「六本木ヒルズ 森タワー」だろう。2003年4月に竣工し、地上54階+地下6階、オフィスや住居、商業施設、美術館などがある複合ビルだ。
当時、破竹の勢いだったIT系企業が同ビルにオフィスを構え、企業経営者や著名人が住居エリアに住んだことから、「ヒルズ族」と言う言葉まで出来たほどだ。
ビジネスとライフを一体化させた同ビルは、社会的なインパクトを与えた。
森ビルグループは、「六本木ヒルズ」以外にも東京都心部で大規模な再開発を行い、「アークヒルズ」「表参道ヒルズ」「虎ノ門ヒルズ」などを完成させている。
森ヒルズリート投資法人に付けられた「ヒルズ」という名前は、森ビルグループが作り上げた上記の大規模再開発に由来している。
環境や文化芸術にもこだわった、職住近接型の大規模プロジェクトのブランド名が「ヒルズ」なのだ。
前述したように、森ヒルズリートの特徴は東京都心への集中投資だ。森グループが開発した東京都心5区と周辺という「プレミアムエリア」に建つ「プレミアム物件」を取得し、運用している。
オフィスが全体の9割弱で、住居と商業施設で1割強を占める。建物の規模が3万㎡以上と大型オフィスビルが多いため、物件数は11物件と少な目だ。
リートがビル1棟丸ごとを保有する形ではなく、「六本木ヒルズ」などの区分所有分を追加取得している。
また、同リートはビルの安全性や、環境や地域コミュニティを重要視している。保有する物件のほとんどが制振壁や制振ダンパーなど耐震性能を備え、非常用電源や防災備蓄も準備している。
上記の図にもあるように、「ポートフォリオPML」(Probable Maximum Loss、大地震による予想最大損失率のこと。
数値が低いほど耐震性に優れている)は0.90%。この数値は、J-REITの中で一番低い。
そして、同リートは配当を重視した運営しており、約11年間に渡り、分配金を毎期連続増配してきた。
しかし、残念ながらコロナ禍でのオフィス受難の煽りを受け、今期の第31期(2022年1月期)は予想分配金が前期より3円下がった2,910円となる模様。連続増配が中断されてしまうようだ。
とはいえ、今後もスポンサーの森ビルは東京都心にプレミアムな物件をどんどん開発していく予定だ。
オフィス需要は陰っているように見えるが、森ビルが開発した立地やクオリティなど付加価値の高い物件を選ぶ企業は減らないだろう。
森ヒルズリート投資法人
予想分配金:第31期 (2022年1月期) 2,910円、第32期 (2022年7月期) 2,860円
保有物件数:11
取得価格合計4,107億円(2021年8月2日現在)
ユニークな着眼点と提案力を持つ産業ファンド投資法人
物流施設だけでなく、研究開発施設やインフラ施設も保有
産業ファンド投資法人(IIF)は、日本初の産業用不動産特化型リート。産業用不動産とは、物流施設、工場や研究開発施設、インフラ施設などを指す。
2007年に上場した。スポンサーは、総合商社の三菱商事と欧州の金融グループUBSだ。
なお三菱商事とUBSは、日本都市ファンド投資法人(JMF)のスポンサーでもある。
日本都市ファンド投資法人は、日本リテールファンド投資法人(商業施設不動産特化型リート)とMCUBS MidCity投資法人(オフィス重点型リート)が昨年3月に合併して誕生した総合型リートだ。
産業ファンド投資法人と日本都市ファンド投資法人は、投資対象の棲み分けをしている。
産業ファンド投資法人の資産規模は3,609億円。ポートフォリオの比率は、物流施設が約半分を占める。工場や研究開発施設で3割強、インフラ施設が2割弱だ。
研究開発施設の例として、「IIF川崎サイエンスセンター」ではジョンソン・エンド・ジョンソン社がテナントで入居している。
最先端医療機器の研修や学会が開催され、羽田空港に近い立地を活かし、国際会議も開かれている。
インフラ施設では、「IIF 羽田空港メインテナンスセンター」や「IIF 名古屋港タンクターミナル(底地)」などを保有している。
「IIF 羽田空港メインテナンスセンター」は、日本航空が航空機の格納や機体整備に使用している。2008年に411億円で同物件を取得し、同リート内では最大の資産規模だそうだ。
「IIF 名古屋港タンクターミナル(底地)」は、様々な化学品メーカーの液体化学製品の保管をしているタンクターミナル。現在、約30基のタンクがあるが、まだ増設余地があるそうだ。
同リートは、企業が持つ不動産や公的な不動産を効率的に運用するための提案を行い、協業することで、「日本の産業活動を不動産面から支えていく」理念を追求している。
提案例として、上記で紹介した「IIF川崎サイエンスセンター」の場合を見てみよう。ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社(以下、J&J 社)と共同して開発した物件だ。
J&J 社は研修施設を探していたが、自社で施設を所有したくなかったそうだ。そのため、同リートが施設用地を購入。その後、J&J社が土地を借りた上で、最先端の施設を建設。その施設を同リートが購入して、J&J社が賃貸する方法を取った。
このように、保有物件の運用だけでなく、企業や公的機関に斬新な提案をして共同開発するところが、他のJ-REITと違う道を進む同リートの優位な特徴だ。
上記の円グラフにあるように、テナントへの賃貸借期間が10年以上と長いことも特徴だ。
産業ファンド投資法人
予想分配金:2022年1月期(第29期)3,046円、2022年7月期(第30期)3,070円
2021年7月31日現在
保有物件数:74
取得価格合計3,609億円(2021年7月31日現在)
なお、物流特化型リートの紹介は、「新春お年玉企画」として紹介した。良かったらこちらも参考にしてほしい。「新春お年玉企画」の2銘柄も1月決算銘柄だ。
1月決算銘柄を買って分配金をもらうには、権利付き最終売買日である1月27日15時までに購入しておく必要がある。
最後に、投資は自己責任でお願いしたい。
健美家編集部(協力:野原ともみ)