株式投資で配当金生活を楽しむように、J-REIT(ジェイリート)で分配金を毎月もらおう!というシリーズ。
J-REITの分配金は、株式投資の「配当金」と同じ意味だ。しかし、J-REITの分配金利回りは3~6%と、株式投資よりも高配当なものが多い(一部のホテル特化型リートは除く)。
11月決算のJ-REITをいま買うと、3ヶ月後の来年2月に分配金がもらえる。FIRE(経済的独立&早期リタイア)への第1歩に、11月決算の注目銘柄をご紹介する。
11月決算のJ-REITは8銘柄!
注目は阪急阪神リートとユナイテッド・アーバン
11月決算期の銘柄は8銘柄ある。
ユナイテッド・アーバン投資法人
平和不動産リート投資法人
大和証券オフィス投資法人
阪急阪神リート投資法人
アクティビア・プロパティーズ投資法人
日本プロロジスリート投資法人
大江戸温泉リート投資法人
SOSiLA物流リート投資法人
※証券コード、銘柄名、投資口価格、予想分配金利回り、NAV倍率。
「投資口価格」は、J-REITの場合の「株価」に相当する。
投資口価格と予想分配金利回りは2022年11月1日終値現在。
注目の2銘柄は、
阪急阪神リート投資法人
ユナイテッド・アーバン投資法人
2025年の万博など開発が進む関西圏
関西に強い阪急阪神リート投資法人
阪急阪神リート投資法人は総合型リートだ。
同リートのスポンサーは阪急阪神ホールディングスグループ。2006年に関西の私鉄、阪急ホールディングス(阪急電鉄)と阪神電気鉄道が合併してできたグループだ。
同グループは関西圏での鉄道事業から始まり、沿線での住宅や商業施設の開発、阪神タイガースや宝塚歌劇といったエンタテインメント業など、多岐に渡る。
そのため、同リートの物件も関西圏が中心で、商業施設が多い。関西圏の「地域特化型リート」だ。
他のJ-REITは、主に東京をメインに物件を保有していることが多い。
つまり、阪急阪神リートを自分のポートフォリオに組み入れることで「地域分散投資」になる。
さて、同リートのポートフォリオのデータを見てみよう。
第34期末(2022年5月31日)時点で、取得資産総額は1686.4億円で、総物件数は32物件だ。
用途別投資比率では、地域密着型商業施設44.5%、都市型商業施設22.4%、ホテル6%と、商業用途区画全体で73%を占める。事務所は25.9%だ。
地域別投資比率では、梅田エリア23.8%、阪急阪神路線エリア43.6%、その他関西圏7.7%と関西圏で75.2%になる。東京都20%、その他地域4.8%だ。
関西以外の人にとって「梅田エリア」というのはわかりにくいと思うが、JR大阪駅近くにあり、阪急電鉄と阪神電気鉄道のターミナル駅が「梅田」駅だ。
例えて言うと、東京の東急電鉄にとってのターミナル駅がある「渋谷」のように、重要なエリアなのだ。
そのため、スポンサーの阪急阪神ホールディングスグループ最大の事業拠点が、この「大阪梅田エリア」だ。大型開発事業や建替えを行い、同エリアの資産価値を向上させている。
今年春には、旧・阪神百貨店を含む大阪神ビルディングと新阪急ビルディングを一体にして建て替えた「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」が全面開業した。
JR大阪駅の北側に広がる「うめきた2期地区開発事業」は、2024年に先行街びらき、2027年度に全体街びらきを予定している。
また関西圏全体としては、2025年に「大阪・関西万博」が開催され、2029年頃を目処に大阪IR(総合型リゾート)開業や、2031年には関西国際空港と梅田駅近くを直接結ぶ「なにわ筋線」の開業予定が控えている。
このように、2025年の万博を筆頭に関西圏では活性化に向けて様々な計画が進んでいる。
翻って同リートを見てみると、ポストコロナ期に向け、資産入替を行っている。
第34期では、利回りの低かったスフィアタワー天王洲(東京)を売却し、H-CUBE MINAMIAOYAMA(東京)とコープこうべ協同購入センター西宮(兵庫)の敷地を購入した。
コロナ禍で苦戦していたホテルでは、ラグザ大阪や北野阪急ビル(大阪)のホテル部分のマスターリース契約を、ホテル需要が回復すれば大きくなっていく変動賃料も獲得できるように変更した。
テナントの入れ替えとしては、飲食店舗の退去後にサテライトオフィスを誘致したFUNDES神保町(東京)やコトクロス阪急河原町(京都)。阪急電鉄本社ビルでは、賃料増額改定も行った。
財務基盤も盤石で、第34期末での平均借入コスト(投資法人債含む)は0.73%、借入金と投資法人債の平均残存年数は4.9年、LTVは43.9%だ。
格付けも、日本格付研究所(JCR)からAA-(安定的)、格付投資情報センター(R&I)からA+(安定的)を得ている。
今後も関西圏の商業物件を中心に、資産規模の拡大と分配金の伸長を目指している。
阪急阪神リート投資法人
予想分配金:2022年11月期(第35期) 2,980円、2023年5月期(第36期) 3,000円
保有物件数:32
取得価格合計:1686億円(2022年7月19日現在)。
コロナ禍で思わぬ打撃を受けた総合型リートだが
内部留保が潤沢なユナイテッド・アーバン
ユナイテッド・アーバン投資法人は2003年に上場した老舗の総合型リートだ。スポンサーは総合商社の丸紅。
2010年に日本コマーシャル投資法人を吸収合併し、「負ののれん」などの内部留保を潤沢に持つ。
同リートの投資エリアは主に首都圏で、62.4%を占めている。大阪圏や名古屋圏を含む地方は37.6%だ。
物件の種類は多岐に渡り、商業施設29.1%、オフィスビル29.7%、ホテル23.6%、住居7.4%、その他(物流施設など)10.2%だ。
総合型リートの場合、その物件の多様さゆえにリスク耐性が高く、安定していると考えられていた。
しかし、コロナ禍では都市型商業施設やオフィスビル、ホテルなど複数のアセットが同時に影響を受け、苦戦を強いられた。
同リートも資産入替え等を行うことで、ポートフォリオの改善や収益力アップを目指している。
今年6月には、KIC 狭山日高ディストリビューションセンター(埼玉県日高市に新築された物流施設)とガリバー八王子みなみ野店(八王子市の商業施設)を取得した。
7月にはUUR コート札幌篠路壱番館(札幌市の住宅)を売却。
9月には「自己投資口を取得」した。これは「株式での自社株買い」に相当する。
J-REITが「自己投資口取得」をする意義は、投資口価格(株価)が割安だと評価されている事への是正だ。
そして、取得した自己投資口を消却し、投資口数が減らす事で、1口当たりの分配金が増加し、資本の効率性が向上する。
実際に、「自己投資口取得」を行った9月中旬以降の投資口価格(株価)は上がってきている。
10月には、福岡市「天神ロフトビル」に入居中の(株)ロフトが、2023 年3月末で定期建物賃貸借契約を満了し、退去することを発表。このビルは2007年にロフトが九州に初出店したランドマーク的なビルだ。現在、新しい入居テナントを誘致中。
同月31日には、10 階建てのファミリー向け賃貸マンション「アムール横浜」(横浜市)を取得した。
同リートとしては、商業施設の割合を減らして、住居を増やしていきたいと考えているのだろう。ただ、昨今の高騰でなかなか取得は難しいようだ。
とはいえ、100億円もの潤沢な内部留保を持つ同リートなので、コロナ禍でも分配金は下げない。第38期までの分配金下限は3,100円と公表している。
格付けも、日本格付研究所(JCR)からAA(安定的)を得ている。
財務基盤は、第37期末での加重平均金利は0.46%、加重平均残存期間は4.2年、LTV(有利子負債比率)は35.4%と安定している。
ユナイテッド・アーバン投資法人
予想分配金:第38期(2022年11月期)3,100円、第39期(2023年5月期)3,100円
保有物件数:136
取得価格合計:6,807億円(2022年8月31日現在)
11月決算銘柄を買って分配金をもらうには、権利付き最終売買日である11月28日15時までに購入しておく必要がある。
最後に、投資判断は自己責任でお願いしたい。
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健美家編集部(協力:
(のはらともみ))