株式投資で配当金生活を楽しむように、J-REIT(ジェイリート)で分配金を毎月もらおう!というシリーズ。
J-REITの分配金は、株式投資の「配当金」と同じ意味だ。しかし、J-REITの分配金利回りは3〜6%と、株式投資よりも高配当なものが多い(一部のホテル特化型リートは除く)。
5月決算のJ-REITをいま買うと、3ヶ月後の8月に分配金がもらえる。FIRE(経済的独立&早期リタイア)への第1歩に、5月決算の注目銘柄をご紹介する。

5月決算のJ-REITは8銘柄!
注目はアクティビア・プロパティーズと平和不動産リート
5月決算期の銘柄は次の8銘柄だ。
ユナイテッド・アーバン投資法人
平和不動産リート投資法人
大和証券オフィス投資法人
阪急阪神リート投資法人
アクティビア・プロパティーズ投資法人
日本プロロジスリート投資法人
大江戸温泉リート投資法人
SOSiLA物流リート投資法人
※証券コード、銘柄名、投資口価格、予想分配金利回り、NAV倍率。
「投資口価格」は、J-REITの場合の「株価」に相当する。
投資口価格と予想分配金利回りは2023年5月2日終値現在。
注目の2銘柄は以下だ。
アクティビア・プロパティーズ投資法人
平和不動産リート投資法人
スポンサーは東急不動産のアクティビア・プロパティーズ
お膝元の「広域渋谷圏」オフィスは好調
アクティビア・プロパティーズ投資法人は、商業施設とオフィスビルを保有する複合型J-REITだ。2012年6月に上場している。
スポンサーは東急不動産株式会社。
物件は「都市型商業施設」と「東京オフィス」をメインに取得している。内訳は都市型商業施設が29.0%、東京オフィスが52.2%、アクティビア・アカウント18.8%だ。

「都市型商業施設」とは、東京都や三大都市圏などのターミナル駅に隣接したエリア、もしくは繁華街に建ち、ランドマークのように目立つ商業施設のことだ。
都市型商業施設の場合、人口の多い大都市圏の中でも集客力が高いため、小売販売額も安定的だ。
また、変化する消費者のニーズに対応した多種多様なテナントの出店を取り込む事が容易な点や、視認性の高い施設の供給が少ない事による希少性がある。そのため、一般的な商業施設よりも優位だと同リートは考えている。
また、入居テナントは固定賃料で長期契約が中心だ。
「東京オフィス」とは、東京23区でオフィスが集積するエリアの中で、駅近に建つオフィスビルのことだ。
多くの企業が集まる地域なのでテナントの入居需要が旺盛で、他の地都市と比べて空室率が低く、賃貸オフィスビルの高い流動性が優位な点だと同リートは考えている。
スポンサーが東急不動産なので、山手線の南側にあるオフィス地域、特に「広域渋谷圏」と「五反田エリア」は成長性が高いとして、物件を集中させている。
「アクティビア・アカウント」とは、上記2つのカテゴリーに入らない物件のこと。東京圏や三大都市圏等にある商業施設やオフィスビル物件だ。
では、同リートの前期(第22期/2022年11月期)の決算説明資料を見てみよう。
利回りが低く築年数が15年以上だった「A-FLAG北心斎橋」と「ルオーゴ汐留」を売却し、代わりに2023年1月「A-FLAG西心斎橋」を取得した。
「A-FLAG西心斎橋」は地下鉄「なんば」駅や「心斎橋」駅から徒歩4〜5分と、国内外の観光客が集まる大阪ミナミの好立地に建つホテルだ。
2022年12月に開業したばかりの新築で、海外のホテルブランド「メルキュール」と、スポンサーグループ「東急ステイ」の2つのブランドを冠している。

「ルオーゴ汐留」の売却益は、「A-FLAG西心斎橋」を買換資産することで特例が活用し、内部留保を積み上げる。
この内部留保は、大口テナント退去といった一時的な収入減や費用増加が発生した際に取り崩して、分配金の原資にする。
今期2023年5月期(第23期)の分配金予想は、内部留保から329円をプラスして、前期分配金を50円上回る9,350円としている。
次期2023年11月期(第24期)の分配金予想は、内部留保からの887円とルオーゴ汐留の売却益をプラスして、9,300円としている。

ところで、オフィスの賃貸状況は若干持ち直してきたものの、まだ厳しい状況のようだ。
特に新橋・汐留・品川エリアが厳しく、2022年6月末に旗艦物件の「汐留ビルディング」から大口テナント(NTTコミュニケーションズ株式会社)が退去して以来、稼働率の回復に時間がかかっている。
また、「A-PLACE品川」も大型テナントの解約があり、その後に新規契約できたものの、別のテナントの解約などが続いているようだ。

その一方、「広域渋谷圏」は引き続き好調で、第22期の平均稼働率は99%だった。既存テナントの増額改定もできている。
渋谷エリアの空室率は、下の図にあるように、東京都心5区や港区に比べて低下してきているようだ。

また、同リートの大阪エリアの物件も安定しており、増額改定もできている。
商業施設に関しては、国内の行動制限が緩和され、インバウンドも戻りつつあるため、売上は上がってきている。
また、同リートは2023年3月に自己投資口の取得を発表した。2022年2月に続いて2回めだ。
オフィス市況の軟調ぶりを懸念され、同リートの投資口価格(株価)が割安な状態となっていたのを改善するためだ。
そして同じく3月には、スポンサーの東急不動産グループから「霞ヶ関東急ビル」306億円を取得した。代わりに、「東急プラザ銀座」の底地(共有持分30%)390億円を同グループに売却した。
「東急プラザ銀座」とは、東京メトロの銀座駅近くに2016年に開業した大型商業施設だ。オープン当初は話題になったが、コロナ禍では苦戦していた。
今年3月に、スポンサーの東急不動産ホールディングスが「東急プラザ銀座」を三井住友トラスト・パナソニックファイナンスに売却すると発表した。運営は東急不動産のまま。所有せずに「持たざる経営」へのシフトと考えられる。
あくまで想像に過ぎないが、好立地の「東急プラザ銀座」の底地ならば安定的に地代が入るため、同リートとしては、売らずに持ち続けたかったのではないだろうか?スポンサーの意向で、底地を売却したのではないかと推察している。
なお、「東急プラザ銀座」の売却益は内部留保などに回すようだ。
同リートの物件取得価格はトータル5,498億円と、大型J-REITの1つだ。自己投資口の取得をしたものの、利回りは高く、NAV倍率も低いままなので、投資口価格(株価)は割安な状態と考えられる。
アクティビア・プロパティーズ投資法人
予想分配金:2023年5月期(第23期)9,350円、2023年11月期(第24期)9,300円
保有物件数:47
取得価格合計:5,498億円(2023年4月5日現在)
平和不動産リートは分配金を14期連続で増配
中規模オフィスやレジデンスの稼働率も高い
平和不動産リート投資法人は、オフィスと住居を保有する複合型J-REITだ。
スポンサーは平和不動産株式会社。東京や大阪、名古屋、福岡の各証券取引所のビルを所有している会社だ。
同リートは2005年に上場し、2010年にはジャパン・シングルレジデンス投資法人と合併した。その際に「負ののれん」が発生し、上手に活用している。
ポートフォリオは東京都区部が中心で、中規模なオフィスとシングルやコンパクトタイプのレジデンスに投資している。
オフィス49.99%、レジデンス50.01%。地域別では、都心5区37.78%、東京23区26.58%、首都圏10.82%、その他24.82%だ。(2022年11月30日現在)

規模別では、3,000平米未満が38.39%、3,000平米以上5,000平米未満が29.69%、5,000平米以上10,000平米未満が26.57%、10,000平米以上が5.35%と、中規模のオフィスやレジデンスが多い。
では、第42期(2022年11月期)の決算説明資料を見てみよう。
2年連続で公募増資を行い、「心斎橋フロントビル」「栄センタービル」「岩本町ツインビル」など計6物件を取得した。
代わりに、「グレイスビル泉岳寺前」を2期に分けて売却した。第42期と第43期にそれぞれ5.4億円の譲渡益を計上する。
また、第43期初に「HF中野坂上レジデンス」(東京都中野区)、「HF今池南」「HF伏見」(名古屋市)の3物件を25.2億円で購入した。
今年2月に「HF上野EAST」(東京都台東区)、4月に「HF大森町」(東京都大田区)とオフィスビルの「ステージ錦」(名古屋市)を取得した。
そして、同リート第42期(2022年11月期)の期中平均稼働率は、コロナ禍前の第37期(2020年5月期)以来の97.7%をマークした。オフィスの期末稼働率は99.2%だった。
分配金も14期連続で増配しており、一口当たりのNAVも17期連続で高くなっている。

同リートは中規模なオフィスやレジデンスを取得することで、ゆっくりだが着実に成長を続け、分配金の安定と向上を目指している。
平和不動産リート投資法人
予想分配金:第43期(2023年5月期)3,130 円、第44期(2023年11月期)3,150 円
保有物件数:125
取得価格合計:2210.45 億円(2023年4月28日現在)。
5月決算銘柄を買って分配金をもらうには、権利付き最終売買日である5月29日15時までに購入しておく必要がある。
最後に、投資判断は自己責任でお願いしたい。