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「何億円もの一括返済が強いられる」ことも! 「1法人1物件」に警鐘、元メガバンク支店長の現役不動産経営者が打ち明ける

融資/融資戦略 ニュース

新たに収益物件を取得する際、個人名義あるいは法人名義のどちらを選ぶのか。それぞれにメリット・デメリットがあり、購入する物件の価格や規模、個人の資産状況などに応じて使い分けたり、最初は個人で買い進め、所有物件が増えるに伴い法人を設立するなど、様々な方策やプロセスが考えられるだろう。

そんな中、物件購入に対する“あるスキーム”が問題視されつつある。「1法人1物件」という名称を聞けば、ピンとくる人もいるのではないだろうか。
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「これは、ひとつの資産管理法人でひとつの物件という手法で、10棟も20棟も買い進めることを指します。要は、所有する物件の数だけ法人を設立し、それぞれ別の金融機関から融資を受けるわけですが、そこで“ある情報”を意図的に隠すことで資金調達を有利にしている投資家が少なからずいるのです」

こう話すのは、1983年に都市銀行に入行して支店長も歴任したという、菅井敏之氏。2004年から不動産投資を始め、48歳で銀行を退職。2012年には東京・田園調布に『SUGER COFEE(スジェール・コーヒー』をオープンし、人気にカフェとしても知られることに。

いまは8棟の物件、トランクルーム、カフェの経営、さらには資産形成のための銀行の活用法や不動産融資などに関する講演・セミナーでも活躍している。

元銀行員としてお金を「貸す側」、不動産投資家としてお金を「借りる側」、どちらの経験もあるからこそ、1法人1物件のスキームがリスキーだと指摘する。

ある情報とは「資産管理法人の借り入れ情報」のことだ。個人で不動産を購入する場合、信用情報は「個人信用情報機関」に登録され、借り入れ状況は記載されるという決まり。与信ギリギリの融資を受けていれば、金融機関は新たに資金を貸すことはない。これは、ごく当たり前の話だ。

「ところが法人の場合、そのような仕組みがありません。そこで、他の資産管理法人で融資を受けていることを隠して新設の法人を立ち上げ、融資を受け物件を買い進めている不動産投資家がいるのです。一般的なビジネスの場合、他からの借り入れ状況は申告するのが通例です。近年増えてきたサラリーマン大家に対する資産管理法人融資についても、金融機関は『まさか黙っているはずがない』と思うわけで、いわば銀行の錯誤・不知を利用した手です」

Aという物件を買うためにA法人を立ち上げて銀行から融資。次にB物件のためにB法人を立ち上げて、他行から融資…これを延々と繰り返すわけだ。

その際に、別法人を持っていて借り入れがあることは決して口にしない。これが1法人1物件のスキームだが、目立ち始めたのはいまから4年前ほど。一部の不動産投資家の間で流行り始めたそうだ。

「どこの誰だかわかりませんが、まさに隙を突いたやり方です。一方で、このスキームを使えば急ピッチで資産を増やせることから、物件を売りたい一部の不動産仲介会社が目を付け、セミナーまで行うようになりました」

意外なことに、このスキームを利用しているのは、エリートサラリーマンや医者、士業といった、比較的年収が高いといわれる属性の人たちだという。

対象物件は区分というよりは1棟モノが多く、金融機関からしても「高収入で無借金の人なら高額の融資をしても問題ない」と判断するようだ。

背後には、他法人の借り入れ=隠された借金があり、本来であれば過剰融資。一方で当事者からすると、「入居者に困らず、経営がうまくいっているなら返済は滞らず問題はない」と捉えるかもしれない。

「近年は物件価格が高騰し、古い物件をフルローンで借りている方も少なからずいます。空室が増え、修繕費は嵩み、税金もバカにならず、気づけばキャッシュフローはマイナスに…。ひとつの物件なら収入から補てんできるかもしれませんが、同時多発的に起こるとにっちもさっちもいかず、気づけば返済は滞り始め…そうなりやっと金融機関も『何かおかしい』と気づくわけですが、実際にこういったケースは起き始めています」

菅井氏いわく、10行ほどは事態を深刻に受け止めて実態調査に乗り出す、あるいは審査前の調査を重点化、スキームを利用していない旨を書面に記すといった動きがあるという。

他方、スキームの利用者からは、「銀行から聴かれなかったから問題ない」「融資したい銀行、物件を売りたい不動産仲介会社、買いたい投資家、みんなウィンウィンだ」という声も。果たしてどうだろうか。

「問題なのは、結局のところ“ウソ”をついているということです。知り合いの弁護士に聞いたところ『偽計業務妨害に当たるのでは』といった見解もありました。立証が難しく刑事罰に問われなかったとしても『期限の利益の喪失』、すなわち一括返済を求められるケースはすでにあります」

本来、銀行が個人の与信や借り入れ状況をチェックし、仮に融資を断るのは「これ以上はリスクがある」と判断するからであり「貸さない親切」と捉えることもできる。それにも関わらず、1法人1物件を利用するのは、リスクコントロールを無視した行為だ。

「バブルやサブプライムなど、歪んだ市場には必ずしっぺ返しがあります。また、真面目に頑張っている賃貸事業者、コツコツと資金を貯めている人にとっては、市場が高騰することで迷惑なことこの上ないのです」

「法人の借り入れ情報は共有されないからバレない」と思う向きもあるが、問題が浮き彫りになると、そうはいかない。滞納者のヒアリングによる指南した仲介会社の特定、登記情報サイトを活用した名寄せ、金融機関の合併など、様々な経緯で発覚する可能性があるという。

「銀行へ呼び出され、個室で回収のプロを相手に、どこまでウソをつき通したり、自分の主張を押し通せるでしょうか? 正直、難しいと思います」

発覚した際、銀行の対応はどうだろうか。菅井氏は「各行によってバラツキはでると思います」と前置きしたうえで、次のように仮定した。

「私が行員なら真っ先に本部へ報告します。自宅・他物件への担保設定を申し入れし、保全を実施。財務状況を徹底的に把握し、いつでも差し押さえできるよう準備するでしょうね。約定通りの返済をしていても正常先とはみなさず、要注意先、破たん懸念先として管理し、融資金利はリスクに見合った水準でないといけませんから、約定金利の引き上げも検討、本部から期限の利益の喪失、回収の指示が出れば、そのように対応します」

「1日でもはやく物件を処分して、正常な形にすることです」、菅井氏は、スキームの利用者に対して、このようにアドバイスする。「とにかく早期撤退、これに尽きます。

今後、エリアや物件によっては客付けが厳しくなる可能性は高く、2〜3年後には破綻者が増え、社会問題になるのではないかと危惧しています。それを世間の方々が目の当たりにした時、『自分たちの預金を使い、こんなことをしている奴がいた』と反感を買えば、銀行も世論を背景に厳しい対応を余儀なくされます」

資産を増やしたい、安定した老後を過ごしたい――そんな思いで始めた不動産投資が、己の首を絞めるようでは本末転倒だ。

経営がうまくいっていても、銀行に指摘されると一巻の終わり、市況の悪化で経営が立ち行かなくなると発覚するだけ…差し押さえ、任売・競売へと続いていけば、ライフプランそのものが狂ってしまう。そうならないためにも、こういった手法は使わない、使っているなら撤退する、そういったアクションが求められそうだ。

■取材協力
菅井敏之(すがい・としゆき)氏
公式サイト:『お金が貯まるのは、どっち?』(http://www.toshiyukisugai.jp/
『SUGER COFEE』(https://www.sugercoffee.jp/

健美家編集部(協力・大正谷成晴)

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