銀行には支店長の判断により承認を出せる融資制度が存在する。
多くの場合、融資案件とは審査部の承認を経て実行される。しかし、条件が限られるものの、支店長の決済で実行まで漕ぎつけることができるのである。
銀行によって条件が異なることが多いこの分野だが、一般的な部分について理解を深めていこう。

1.本来、支店と審査部は相反する目的を持つ
銀行はアクセルとブレーキを併せ持った組織である。営業部に代表される収益確保(ノルマの達成)の部隊と、審査部に代表される安全確保(倒産コストの抑制)の部隊に分かれる。
支店はそのどちらの役割も担っている組織と言えるが、支店長及び現場の行員は、支店同士でノルマ達成率の競争を強いられているため、多くの場合では推進に重点を置いた組織となりやすい。(審査部出身の支店長であっても、自身の業績のためならリスクの高い案件も取り上げようと動くことがある)
つまり多くの場合において、支店と審査部は対立する関係にあり、少しでも多くの案件を取り上げたい(ノルマを達成したい)支店と、自分たちの承認した案件が焦げ付くことを回避したい審査部では目指すべき方向性に差が生じているのである。
この状況を鑑みれば、「支店長決済の融資商品」というのはアクセルを踏む人間が決済を持つ、という銀行では珍しいシステムにより成り立っていると言えよう。
2.アクセルの暴走を防ぐため、融資条件は限られている。
「推進を行う必要がある支店長に決済をゆだねる」という事は銀行にとってもリスクである。
そのため、多くの場合支店長決済融資には制約が課されている。
一般的な制約は、以下などが挙げられる。
・融資期間
5年以内など短期〜中期程度の融資期間のみ取り扱う。
・融資金額
500万円、1,000万円、などその会社のスコアリングに合わせて上限が定められる。
・金利
定められた金利を上回っていないと取り扱いができない。
・担保の有無
担保付き融資は本部決済となることが多い。
銀行によって差異があるため、一概には定義できない分野の話にはなるが、「賃貸物件を保有するため」という資金使途においては適用する機会は少ないだろう。
逆に、運転資金調達のロジックが成り立つ会社であれば、この支店長決済の取引を視野に入れることが可能になるため、頭には入れておきたいところだ。
また、支店長決済であるがゆえに、資金使途のチェックが厳格でないこともあり、決算書さえ整っていれば(スコアリングがある程度あれば)、不動産賃貸業であっても小規模な融資の取り扱いが可能なケースがある。
3.支店長決済融資の有効活用方法は2つ。
一般的な支店長決済融資の場合、
・金額が小規模
・期間が5年以内
などの制約があるため、物件購入資金に充当することは現実的ではない。
しかし、見方を変えれば支店長決済融資も十分有効に活用することができる。
それは
「手元資金拡充」
「新規銀行開拓」
の2つである。
「手元資金拡充」については期間5年前後などの制約があるものの、比較的低利での資金調達が可能となるため、流動性の確保に効果を発揮する。
「新規銀行開拓」については、小規模な融資と言えどプロパー融資取引により関係性が築けるので、支店長決済融資をくさびとしつつ次の長期融資を目論むことができる。
自社の資金繰りをコントロールできる人であれば、借りれるものは借りるという考えで前に進んでも良いのではないだろうか。
4.まとめ
支店長決済融資はその条件を良く理解し、資金繰りのコントロールを行うことができれば、有効な商品である。
収益不動産への融資というハードルを越える前の踏み台として、積極的に利用しておくと良いだろう。
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執筆:
(はんざわおおや)