融資を継続して引くためのコツとして、「銀行にとって黒字の顧客になる」という視点は重要である。なぜなら多くの銀行は融資によって一定の利ザヤを得ることにより、経営を維持しているからだ。
この「銀行にとっての黒字」を正確に把握するには、銀行が負担しているコストを正しく理解する必要がある。その中で一見分かりにくいのが「信用コスト」だ。
具体的な数字は開示されないことが多い「信用コスト」だが、その考え方を理解することにより、自身の銀行との付き合い方を見直すきっかけになる。今日の記事ではこの「信用コスト」について解説していきたい。

1.信用コストとは?
信用コストとは「信用貸し金額×倒産率」で表される。つまり、万が一貸出先が倒産した時に銀行が被る損害額に、その企業が倒産する確率を掛けたものである。
つまり、1億円の貸出をしている取引先の倒産率が5%だったとしたら、500万円が信用コストとして計上される、という計算になる。
実際にはここに担保や預金を加味して計算されるため、担保が7,000万円、預金が1,000万円あれば
(10,000万円-7,000万円-1,000万円)×5%=100万円
つまり、信用コストは100万円という事だ。
今回の事例において銀行が受け取る金利を2%とすると、
10,000万円×2%=200万円
信用コスト控除後利益は
200万円(利息収入)-100万円(信用コスト)=100万円
という計算になるのである。
(他にも銀行側の資金調達コストや事務コストなど控除されるコストは存在する)
銀行はこの信用コスト控除後利益を黒字にしないと取引する意味がないと考える。なぜなら、この貸し出しにより銀行は赤字になるからだ。
よほど他の取引が厚い、大きなメリットのある顧客でない限り、赤字になる貸し出しは行わないのが銀行である。(逆に言えば、支店にとって無視できない取引ぶりがあれば、黒字のギリギリとなる金利水準での取引が可能ではある)
2.倒産率はどうやって決まるか?
先述した通り、信用コストとは「信用貸し金額×倒産率」で表される。つまり担保や預金の金額多ければ、信用コストが少なくなると同時に、倒産率が低くても、信用コストは少なくなるのである。
ではこの倒産率は何で判断されるか?
銀行によって細かい判断は分かれる分野だが、ほとんどの銀行は「格付」を元に倒産率を決めているであろう。
格付が優良であれば倒産率は低くなり、信用コストは下がる。
結果として低い金利での取引であっても銀行は黒字になる。
逆に格付が低ければ倒産率は高くなり、信用コストは上がる。
ある程度の金利を貰わないと、銀行にとって割に合わず、結果として高い水準の金利が設定されるのである。
格付を良くするためには以前の記事でも解説した「債務償還年数」が鍵となる。
格付を良くするためには納税という痛みを伴う必要があるが、この信用コストの観点からも、財務状態を改善することは大事だ、という結論になるであろう。
・取引金利を下げる
・または銀行を儲けさせ「おかわり融資」を受ける
というメリットを享受できるのであれば、納税の痛みも乗り越えることができるのではないだろうか。
3.まとめ
信用コストは目に見えないコストであるが、銀行の収益性判断においては大きな割合を占めるコストである。
規模拡大のフェーズにおいては、節税よりも納税を意識し、銀行との取引基盤をより強固にしていく事が有効であろう。
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執筆:
(はんざわおおや)