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複数の土地所有者が道路を所有する「共有私道」のトラブルについて、法務省が「対応ガイドライン」を改訂

政策(不動産投資関連)/法改正・制度変更 ニュース

2022/06/29 配信

不動産投資のみならず、日常生活においても厄介な「私道」という問題。

特に、複数の土地所有者が道路を共有する「共有私道」については、ライフラインの敷設や改変、アスファルトの更新など、共有者の合意形成が大きなハードルとなるケースも多い。

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さらに近年は、相続時の名義変更登記がなされないまま、所有者不明の土地が全国規模で増加していることからも、共有私道におけるトラブルはより複雑になることが確実視されている。

そんな声を受けて、法務省は2018年に「複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書 ~所有者不明私道への対応ガイドライン~」をリリースし、民法上のルールを踏まえた上で、35件に渡る事例とともに、その適切な対応を詳しく解説してきた。

このことについては、2018年に当ニュースでも報道しているので、記憶に新しい方もいるのではないだろうか。

さらに、2023年4月に施行を控える民法の改正を受けて、共有私道にも法解釈の変更が予定されている。

そこで今回は、法務省が新たにリリースした対応ガイドライン「第二版」を通して、その変更点を確認していきたい。

■今回の民法改正は、共有私道にどのような影響を与える?

2023年4月に施行される「改正民法」では、土地の利用円滑化の観点から、共有私道に関わる部分について、大きく分けて3つの見直しが実施される。

【共有制度の見直し】
・共有物の「管理」の範囲の拡大・明確化
・賛否不明共有者以外の共有者による管理の仕組み
・所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の仕組み 等

【財産管理制度の見直し】
・所有者不明土地管理制度の創設
・既存の相続財産管理制度の合理化 等

【相隣関係規定の見直し】
・隣地でのライフラインの設備設置・使用権に関するルールの整備
・越境してきた竹木の枝を土地所有者が自ら切り取ることができるルールの整備 等

これらの改正により、共有私道にかかる工事や問題の解決については、

・変更が軽微で、著しいものではない場合
・一部の共有者が賛否を明らかにしない場合
・共有者の所在等が不明だった場合 等

において、残りの共有者による問題解決が、改正前より円滑になることが期待されている。

■ガイドラインのポイントと検討について

さらに、今回のガイドライン第二版においては、共有私道において実際に起こりうる37の事例について、そのポイントと検討について具体的な記述がなされている。

・舗装の補修や更新
・新規の舗装
・側溝の再設置
・私有排水管の新設
・上下水管の新設や取替、補修
・ガス管の新設や補修
・電柱の新設や取替
・階段の新設や拡幅
・手すりの設置
・ゴミボックスの設置
・竹木のせり出し

このような、共有私道の保存や管理、変更といったケースにおいては、従来の民法でも

・各共有者が単独で可能(保存)
・各共有者の持分の価格に従い、過半数で決する(管理)
・共有者全員の同意が必要(変更)

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という、3段階のルールが適用されていたが、今回の法改正によって前述のとおり、共有私道の変更が軽微な場合、一部の共有者が賛否を明らかにしない場合、その所在等が不明だった場合等においては、残りの過半数や裁判所が選任する財産管理人によって、改正前よりも速やかな改善が期待できると見込まれている。

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ではこれから、法改正によって変更となった2つの事例について、第二版の解説を抜粋してみたい。

【事例5】 新規舗装の事例(共同所有型)

砂利道である共同所有型私道につき、アスファルト舗装工事を行いたいが、所有者の一部が所在等不明のため、工事の同意を得られない

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これらの工事は、通路敷に工事を施しアスファルト面等を土地に付合させるものと評価でき(民法第24条)、物理的に変更を行うものであり、歩道から車道への変更という意味で道路の機能を変えるものと評価することができる。

改正前民法の下では、砂利道である通路をアスファルト舗装する行為は、一般に、共有物に変更を加えるものであり、共有者全員の同意が必要であると考えられてきた(改正前民法第251条)。

改正民法においては、共有物に変更を加える行為であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)については、持分の過半数で決定することができることとされた(改正民法第251条第1項、第252条第1項)。

そして、砂利道のアスファルト舗装は、一般に、形状に関しては、砂利を除去して下層路盤・上層路盤を整備してアスファルト面を施工するなど、ある程度の変更を伴うものの、著しく変更するものではなく、また、効用に関しても通路としての機能を向上させるに留まるものであることを勘案すると、軽微変更に当たると考えられる。

そのため、本事例では、①~⑥の所有者の持分の過半数の同意を得ることによって、路面をアスファルト舗装する工事を行うことが可能と考えられる。

【事例34】 樹木の伐採事例(共同所有型)

共同所有型私道上に生育している樹木を伐採したいが、共有者の一部が所在等不明であり、伐採の同意が得られない

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共有私道上に生育した樹木は、特段の合意がない限り、共有私道に付合する物(民
法第242条本文)であり、これを伐採する行為は、現行法においては、一般に、共有物に変更を加える行為であり、共有者全員の同意が必要であると考えられる(改正前民法第251条)。

改正民法の下では、樹木の伐採が私道の通路としての形状又は効用に著しい変更を伴うものではないと考えられる場合には、軽微変更(改正民法第252条第1項)に該当し、共有者の持分の過半数で決することができると考えられる。

例えば、美観を向上させるため特に植えられているなどの特段の事情がない樹木を伐採することは、当該私道の通路としての形状や効用を著しく変更するものではないため、軽微変更に該当すると考えられる。

なお、上記のルールは、共有者の一部が所在等不明であるケースに限って適用されるものではないため、例えば、本事例で④の所有者が所在等不明ではなく、樹木の伐採に反対しているケースや賛否を明らかにしないケースであっても、①~④の共有者の持分の過半数の同意があれば、軽微変更に該当する樹木の伐採を行うことが可能であると考えられる(改正民法第252条第1項)。

また、共有者の一部に所在等不明者や賛否不明者がいるために①~④の共有者の持分の過半数が確保できない場合であっても、改正民法の下では、所在等不明共有者以外の共有者による管理の裁判や賛否不明共有者以外の共有者による管理の裁判を得ることにより、所在等不明共有者等を除いた残りの共有者の持分の過半数で決定して、樹木の伐採を行うことができる(改正民法第252条第2項第1号及び第2号)。

■ まとめ

今回取り上げた民法改正と併せて、2023年4月からは不動産登記法等の改正も予定されており、所有者不明土地の問題については、一定の歯止めが掛かる効果が期待されている。

一方、共有私道のオーナーが道路の維持や改変において頭を悩ませる機会は、土地を手放さない限り、今後も付いて回ることになるだろう。

そういう意味でこのガイドライン第二版は、具体的な事例が数多く掲載されており、私道を共有するオーナーにとっては、トラブルを解決する大きな指針になると思われる。

国土交通省による「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と同様、国によるガイドラインの発表や改訂は、今後も積極的に活用したいところだ。

参考資料:

・複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書~所有者不明私道への対応ガイドライン~(第2版)/法務省

・所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)の概要/法務省

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執筆:五位野健一(ごいのけんいち)

五位野健一さん

■ 主な経歴

北海道生まれの不動産投資家兼ライター。通称ゴイケン。
長年の東京生活を離れ、2012年より郷里で自主管理の戸建賃貸を複数運営。
同時に、不動産投資に特化した執筆も幅広く展開している。
宅地建物取引士、第二種電気工事士、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート
趣味はフライフィッシング、ワイン、リサイクルショップ巡りなど

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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