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マンション建て替え要件「5分の4」から緩和へ! 価値の高まった物件が市場流通へ

政策(不動産投資関連)/法改正・制度変更 ニュース

2022/11/30 配信

建て替えや大規模修繕の影響緩和が国で議論されている
建て替えや大規模修繕の影響緩和が国で議論されている


建て替えは「4分の3」「3分の2」への緩和を議論

大規模修繕も共用部変更は「4分の3」から引き下げへ

政府が、老朽化した分譲マンションの建て替えや大規模修繕に関する法律の要件を和らげ、行いやすくする方針だ。

具体的には、建て替えに必要とされている「すべての区分所有者の5分の4の賛成」を「4分の3」「3分の2」に引き下げる案などが検討される。

建て替えで新しくなったり、改修で寿命が延びたりしたマンションが、より頻繁に市場で取引されるようになる可能性が高い。政府の検討がどういう結論に落ち着くのか、不動産投資家もしっかり議論の動向を見極めたい。

要件の緩和は区分所有法を改正して対応する。葉梨康弘法務大臣(当時)がこの秋、法制審議会に諮問した。審議会で検討をつづけ、どのように改正するのか決めていく方向だ。

いまの区分所有法では、次の行動に必要な区分所有者の同意の割合を、それぞれ以下のように定めている。

現在の建て替えなどの要件。法制審の資料から
現在の建て替えなどの要件。法制審の資料から

いまたっているマンションを取り壊し、新たなマンションをつくる「建て替え」は、区分所有者の「5分の4」。

マンションの骨格をいじらず、間取りや設備、内装、外装などをいじる「大規模修繕」に関し、共用部を著しく変更する場合は「4分の3」。

これらについて、政府はそれぞれ要件を緩和したい考えだ。

「建て替え」については、「5分の4」から、「4分の3」や「3分の2」に、「大規模修繕」についても「4分の3」からそれ以下へと引き下げる方向としている。

区分所有者がより簡単に賛成できるようにし、スピーディーな「建て替え」や「大規模改修」を可能にしたい考えだ。

増える老朽化マンション 2041年には425万戸に
古いマンションは「所有者不明」の問題も

政府がこのような要件緩和に乗り出す背景には、国内に老朽化したマンションが増えているからだ。

法制審に示された資料の中の国土交通省による推計によると、2021年末現在で、築40年以上になるマンションは約116万戸に上る。さらに、築40年以上のマンションは、20年後の41年末には約425万戸と、約3.7倍にまでに増えるとみられる。

40年超マンション増加
老朽化したマンションが増えることは安全面でよくないし、人が住まず、一種のゴーストタウン化すれば、治安上も悪影響がある。老朽化したマンションの「建て替え」や「大規模改修」を進め、再生をはかることは重要だ。

ただ、マンションの区分所有者の集会への出席率は悪いうえ、老朽化マンションにも土地の「所有者不明問題」と同じく、「区分所有者不明問題」がある。

単に区分所有者が出席する気がない場合であれ、不明な場合であれ、欠席した人の票は「反対票」とみなされる。このため、あまりに高い「賛成」比率の要件のままだと、なかなか「建て替え」や「大規模改修」に向けて事態を進めることができないのだ。

なお、法制審の資料の中で示された国交省のアンケート調査によると、築10年以上20年未満のマンションでは、いわゆる普通決議の投票率が83.4%であるのに対し、築40年以上のマンションは78.9%で、古いマンションほど投票率が下がる傾向にある。

つまり、古いマンションほど、区分所有者の集会へ参加意欲は低い。

一方、同じく法制審の資料に示された18年度の国交省の調査によると、区分所有者の所在が不明だったり、連絡がつかなかったりするマンションの割合は約3.9%に達する。完成した年の古いマンションほど所在不明などの住戸があるマンションの割合が高くなるという。

被災したマンションの要件も「5分の4」から緩和へ
「大規模一部滅失」の売却決議期間は「1年」から延長

また政府は、政令で指定された大規模災害のさいのマンション再生のため適用される被災区分所有法についても、緩和を検討する。

被災したマンションの敷地売却などの要件も緩和される
被災したマンションの敷地売却などの要件も緩和される

現在、地震など大規模な災害で壊れたりしたマンションについては、所有者の「5分の4」の同意を取り付ければ、敷地の売却や取り壊しを行うことができる。法制審はこの「5分の4」を引き下げことを検討する。

さらに、建物の価値が半分を超えて失われる「大規模一部滅失」に関しては、敷地の売却を決議できる期間を、今の「1年」から「3年」に延ばすことなどを議論する予定だ。

その理由について、法制審は、「被災した区分所有者にとって、1年間の期間制限は短すぎ、決議の準備をすることが困難である」と説明している。

以上みてきたように、全国各地でつくられてきた大量のマンションはどんどん老朽化していくし、地震国・日本では地震が頻発し、被災したけれど、なかなか手のつけられないマンションも増えていく。

これらが引き起こす安全性などの問題点は小さくなく、国は、建て替えや大規模修繕の要件緩和といった対応策を次々に打ち出していくだろう。

建物の価値が上がったマンションは、市場に売りに出される頻度が高まることが予想される。こうしたマンションを手に入れ、新たな入居者を集めて住んでもらうことができれば、地域の活性化に役立つ「社会貢献」にもなるだろう。

不動産投資家は、今回みてきたような建て替えや修繕をすませたマンションが自身の戦略に組み込めないかを念頭に、制度改正の行方に注目していきたい。

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取材・文:小田切隆(おだぎりたかし)

■ 主な経歴

経済ジャーナリスト。
長年、政府機関や中央省庁、民間企業など、幅広い分野で取材に携わる。

■ 主な執筆・連載

  • ニュースサイト「マネー現代」(講談社)
  • 経済誌「月刊経理ウーマン」(研修出版)
  • 「近代セールス」(近代セールス社)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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