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自然死は告知義務なし「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」策定、公開へ

政策(不動産投資関連)/緩和措置 ニュース

2021/10/13 配信

2021年10月8日、国土交通省が策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が公開された。これまで不動産取引にあたり、対象となる不動産において過去に人の死があった場合の調査、告知に関する判断基準がなく、個別に判断をせざるを得なかったが、今後はこのガイドラインが参考になる。

国土交通省では2020年2月から「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」において検討を進めており、同検討会での議論に加え2021年5月から6月に実施したパブリックコメントを踏まえてガイドラインをとりまとめた。

告知が不要な場合としては以下のものが挙げられている。

●賃貸借取引、売買取引とも対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死については原則として告げなくてもよい。

→老衰、持病による病死などいわゆる自然死は当然に予想されるものであり、統計においても自宅における死因割合のうち、これらが9割を占めるという。それを事故扱いにするのはおかしいという認識である。

→過去の判例でも自然死が心理的瑕疵に該当しないとしたものもある。

→自宅の階段からの転落、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥など日常生活の中で生じた不慮の事故についても自然死同様に原則として告げなくても良いものとした。

ただし、死亡後、長期に渡って人知れず放置されたことなどによっていわゆる特殊清掃、大規模リフォーム等が行われた場合には契約を締結するかどうかの判断に重要な影響を及ぼす可能性があるものと考えらるため、宅地建物取引業者は買主・借主に対してこれを告げなければならないとされている。

国土交通省のガイドライン概要から
国土交通省のガイドライン概要から

賃貸借取引の対象不動産において自然死・日常生活の中での不慮の死以外が発生、または上記にあるよう特殊清掃等が行われることとなった死が発生していてもその後、おおむね3年が経過している場合には原則として告げなくて良い。

→ただし、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案はこの限りではないとされている。

→また、借主が日常生活の中で通常使用する必要があり、借主の住み心地の良さに影響を与えると考えられる集合住宅の共用部分についても賃貸借取引の対象不動産と同様に扱うとされている。

→上記の共用部分としてはベランダ等の専用使用が可能な部分のほか、共用の玄関・エレベーター、廊下、階段のうち、買主・借主が日常生活において通常使用すると考えられる部分が該当するとされている。

賃貸借取引及び売買取引の対象不動産の隣接住戸または借主もしくは買主が日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分において、自然死・日常生活の中での不慮の死以外が発生、または上記にあるような特殊清掃等が行われることとなった死が発生していても判例等も踏まえ、賃貸借取引及び売買取引いずれの場合も、原則として、これを告げなくてもよい。

→ただし、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案については前出同様。

詳細に書かれているのでぜひ、概要版だけでなく、ガイドライン本編もご覧いただきたい
詳細に書かれているのでぜひ、概要版だけでなく、ガイドライン本編もご覧いただきたい

また、ガイドラインは告知にあたり、宅地建物取引業者がどこまでの調査、告知をすべきかについても詳細にまとめている。ポイントとしては人の死に関する事案が生じたことを疑わせる特段の事情がないのであれば、宅地建物取引業法は自発的に調査すべき義務までは負わせていないとしている点。

告知すべき事案があることがあらかじめ分かっていれば別だが、売主・貸主・管理業者以外に自ら周辺住民に聞き込みを行ったり、インターネットサイトを調査するなどの自発的な調査を行ったりする義務はないとしているのである。また、仮に調査を行う場合でも正確性の確認が難しいこと、亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要があるともしており、慎重な対応が必要というわけだ。

ただし、当該不動産についての情報収集時に人の死に関する事案があったことを把握した場合にはそれを告知する必要がある。その場合には告知書(物件状況等報告書)その他の書面に記載することで調査義務は果たしたものとされる。

なお、告げる場合は、買主、借主に対して事案の発生時期(特殊清掃等が行われた場合には発覚時期)、場所、死因(不明である場合にはその旨)及び特殊清掃等が行われた場合にはその旨を告げるものとされており、亡くなられた方や遺族等への配慮についても言及。氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はないとしている。

また、ガイドラインが取り扱かっているのは原則として居住用不動産。オフィスの場合、取引当事者がそれぞれの影響の度合いから判断すべきことになると考えれば良いだろう。
以上、ガイドラインを簡単に説明した。これまで死因がなんであれ、人が亡くなったということだけですべてが事故物件とされてきたが、人の死は事故ではなく、当然に起きるもの。忌避、嫌悪する人がいるのも確かだが、ルールが明確化されたことで流通、取引が促進されることを期待したい。特に高齢者の入居については多少なりとも懸念が軽減されたと考えて良いだろう。

一方でインターネット上では期限を切らず、延々と事故物件として掲載され続けるケースもあり、今後はこうした問題も検討していく必要があるのではなかろうか。

2014年に欧州連合(EU)は欧州司法裁判所による判決を契機として「忘れられる権利」を総称として制定している。現状では人に関する情報についての権利だが、事故物件情報は物件の情報であるとともに、亡くなられた方に関する情報でもあると考えると、適用はあり得るのではなかろうか。10数年前の、他住戸での死亡が建物全体に不利を与え続けるのは誰にとっても得な話ではない。変化を期待したい。

健美家編集部(協力:中川寛子)

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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