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所有者不明の共有私道はどうする?法務省がガイドラインを発表

政策(不動産投資関連)/制度・サービス ニュース

2018/03/31 配信

不動産における「私道」は、不動産投資家にとってやっかいな問題の一つと言える。

特に、接道義務を満たさない再建築不可物件といった、都市部の戸建賃貸において高利回りを狙う場合、私道は避けて通れないハードルではないだろうか。

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■共有私道が抱える問題

ご存知のように、私道とは民有地に設置された道路であり、土地所有者が自らの敷地内に設けるほか、複数の土地所有者が私道の用地を「共同所有」したり、それぞれ土地の一部を提供する「相互持合」などの形で維持されているケースも多い。

そして、私道について維持管理を協議したり、新たにライフラインを敷設するなどの改変が必要な場合、そのような「共有私道」では、所有者全員の同意を取り付けることが事実上の決まりになっているという。

しかし、昨今の報道でもクローズアップされているとおり、相続時の名義変更登記がなされないことによる所有者不明の土地が全国で増えており、それは私道においても例外ではない。

仮に、共有私道において一部の土地所有者がわからなくなった場合、所有者全員の同意を取ることが困難となり、私道の利用に多大な影響を与える恐れがある。

また、私道には民法や建築基準法だけでなく、都市計画法や地方税法、道路法、ライフラインにかかる電気事業法や水道法、ガス事業法など、さまざまな法律によって権利や義務、規制がなされている。

それらも共有私道の問題解決をより複雑にし、わかりにくくしている一因だと言える。

そのような声を受けて法務省は、昨年から有識者による「共有私道の保存・管理等に関する事例研究会」を立ち上げ、共有私道の実態調査を行った上で4回の会議を実施してきた。

そしてこのほど、「複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書 ~所有者不明私道への対応ガイドライン~」を取りまとめ、リリースしている。

■全員の同意がなくてもOKな場合とは?

これによると、民法における共有物に関するルールとしては、共有物を「物理的に改変、処分」する行為を行わない限り、共有者全員の同意は必要ないとされている。

つまり、「現状を維持」したり「性質を変えない範囲での利用・改良」する行為については、一部の所有者が不明であっても同意要件を満たすというわけだ。

共有物に関する民法のルール

今回のガイドラインでは、この民法上のルールを踏まえた上で35件に渡る事例を紹介し、その適切な対応について詳しく解説している。そのうち、いくつかの事例を紹介してみたい。

【事例1】 舗装の陥没事例(共同所有型)

共同所有型私道の一部が陥没してアスファルトの補修工事が必要となったが、共有者の一部が所在不明のため、工事の同意を得られない。

事例1

私道の共有者は①~③であったが、①の所有者が所在不明、②と③の所有者は工事に賛成している。

この場合、アスファルトの補修については一般的に、共有物の「現状を維持する保存行為」にあたるため、各共有者が単独で補修工事を行うことができ、①の同意を得る必要はない(民法第252条ただし書)。

【事例6】 新規舗装の事例(相互持合型)

砂利道である相互持合型私道にアスファルト舗装工事を行いたいが、共有者の一部が所在不明のため、工事の同意を得られない。

事例6

このケースでは、未舗装の道路としての通行に支障がない以上、②~⑥の所有者が承諾なく①所有の路面を、アスファルトに新規舗装する工事を行うことはできない(民法第251条)。

ただしこの場合、②~⑥の共有者が不在者財産管理人等の選任申立てを行い、選ばれた管理人の同意を得ることで解決を図ることも可能だとしている。

【事例16】 給水管の補修事例(相互持合型)

相互持合型私道の地下に設置されている給水管から漏水したため、私道を掘削し、給水管を修復する必要が生じたが、所有者の一部が所在不明のため、工事の同意を得られない。

事例16

相互持合型私道では特段の合意がない場合、それぞれの所有土地部分を「要役地」とし、互いの所有地部分を他方の通行のための「承役地」とする「地役権」(民法第280条)が、黙示に設定されていることが多い。

また、建物の建築と同時に私道を開設し、給水管を設置したような場合には、土地の提供者は相互に私道下を利用できる地役権を設定した、と考えるのが合理的である。

今回のような給水管が破損して漏水した場合、②の所有者は地役権にもとづいて、給水管を単独で補修工事を行うことが可能である。

◇まとめ

いかがだろうか。今回のガイドラインにはこの他にも、共同所有型と相互持合型に分けてさまざまな事例を解説しており、私道を共有するオーナーにとって大いに参考になると思われる。

私道におけるトラブルは単に隣人との関係悪化にとどまらず、時には法的な賠償責任が発生するケースも十分にあり得る。

所有者不明の土地が将来的に増加していく中、われわれも今後、法的な知識を持って対処することがより一層求められることになるだろう。

参考資料:

・複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書 ~所有者不明私道への対応ガイドライン~(法務省)

・共有私道の保存・管理等に関する事例研究会(法務省)

健美家編集部(協力:五位野健一)

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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