単身高齢者、障がい者等の入居については悩ましいところがある。社会的な意義や空室にしておくより良いのではという考えの一方で不測の事態を考えると、簡単には踏み切れないと思う不動産所有者も少なくないはず。
東京都中野区がそうしたオーナーの懸念を払拭する全国初の制度を導入した。名付けて単身高齢者等の住宅確保支援制度「中野区あんしんすまいパック」。
これは区が民間事業者と協定を結び、民間事業者が入居者の安否確認、入居者が死亡した場合の葬儀費用・家財の片づけや原状回復等にかかった費用補償(葬儀と合わせて合計100万円以内)を行うというもの。
中野区は初回登録料の1万6200円を全額負担する。その後にかかる月額1944円は入居者負担。入居者には週に2回、安否確認の電話がかかり、その結果は指定連絡先にメールで送られる仕組み。これなら入居者の体調不良などが早めに分かり、不測の事態を回避できるようになるだろう。
補助対象者は前年の所得額が256万8000円以下となっており、これは単身高齢者の公営住宅入居資格と同等。2019年1月にサービス事業者と協定締結後に開始、初年度は40件の利用を見込んでいる。

中野区ではひとり暮らし高齢者数は2015年時点の約2万2000人から2020年には3万人超まで大幅に増加、さらにその後は、漸増すると予測されており、そうした人たちへの対応に加え、空き家対策としての側面もある。
高齢者の安否確認を主とする見守りサービスはベンチャーなどの参入もあり、近年増加傾向にあり、それに入居者死亡時の保険などを組み合わせた商品も登場している。
とはいえ、まだまだ普及にはほど遠い状況であり、今後の普及に当たっては公的な機関による利用がきっかけになるはず。
制度開始時の協定事業者は1社だけだが、区では今後、協定事業者を増やし、利用者、不動産所有者が選択できるようにしていくという。となれば、業界が活性化、より利用しやすくなっていくだろう。
安心して貸せる状況が作られていく端緒となるかどうか。中野区の今後の動きに注目すると同時に、どの自治体でも単身高齢者の一人暮らし増は懸念事項であることを考えると、他自治体での追随する動きにも期待したい。
健美家編集部(協力:中川寛子)