賃貸住宅に関する入居者からのクレーム、トラブルは絶えないが、その一つにLPガス料金に関するトラブルがある。
LPガスとは、液化石油ガスのことで、プロパンガスとも呼ばれる。このLPガスの料金について高すぎるといったものが多い。特にマンションやアパートの入居者とオーナーとの間のトラブルが増えている。
こうしたことから、国土交通省は今年6月1日に「賃貸型集合住宅におけるLPガス料金の情報提供について」の周知依頼を各業界団体あてに出している。
発出内容を抜粋すると次のようになる。
「入居者がLPガス業者を選択できず特定のLPガス業者と供給契約を締結しなければならない場合、賃貸借契約後にLPガス料金を巡るトラブルが発生していることを受け、今般、賃貸型集合住宅の入居者に対する賃貸借契約時におけるLPガス料金の透明化の促進のため、経済産業省資源エネルギー庁より、LPガス事業者に対し、賃貸型集合住宅を管理している所有者又は不動産管理会社に対してLPガス料金について情報提供を行うことが依頼されました」(原文まま)というものだ。
国交省は、借り主がLPガス料金に関する情報を適切に入手できるようガス料金が記載された資料について情報提供するように賃貸住宅関係団体宛てに通達している。
LPガスに関するトラブルは今に始まったことではなく以前からよく指摘されていたものだ。これまで都市ガスを使っていた人がLPガスを使っている物件に引っ越した後にガス料金の請求書や保証金の高さにびっくりしたという声が多い。
独立行政法人国民センターにも相談事例が寄せられており、「LPガスの保証料について、料金未払いの担保であり、基本的には解約時点で料金の未払い等がなければ返金されるとしているが、補償金の有無について契約内容と相違がないかを書面で確認することと、補償金を支払った場合は預かり証を必ず出してもらい解約時まで保管すること」と相談に対して回答している。
このほかLPガスについて、料金についての説明がない、事業者に解約を申し出たら設備の撤去費用を請求された、といったトラブルも寄せられているという。
ガス業者と家主に求められる
入居者への情報提供
そもそもLPガスの料金はなぜ高くなっているのか。何人かの事情通の話を総合すると、特に新築の集合住宅ほど高くなりやすいという。
マンション・アパートでは、LPガス導入の初期費用をガス事業者が負担していることが理由の一つとされている。その初期費用を家主が負担すると、家主はその分を家賃に転嫁せざるを得ずその分割高になってしまう。それを避けるためにガス業者に負担してもらっているというものだ。こ
のため、都市ガスを引くことができる地域であっても都市ガスを引く工事費用を端折るためにLPガス業者に頼んでいる賃貸オーナーが見られるようだ。
つまりLPガス料金のカラクリとして、初期費用を負担させられたガス業者が、その分をガス料金に上乗せして回収することとなり、家主が初期費用を負担したとしても、家賃に上乗せすることは十分に想定できることから、どちらが負担するにしてもそのしわ寄せが入居者に跳ね返ってくる仕組みとなっている。
なかには初期費用を回収しても料金を下げない悪質なガス業者もいるとされ、こうした悪質なケースを踏まえると、新築に限らずに中古の賃貸集合住宅であっても割高なガス料金のままになっている物件はゼロではなさそうだ。
国民生活センターでは、ガイドラインには、事業者は標準的な料金を公表することが明示されているとする。ガス業者との契約は賃貸オーナーなので、入居者がガス会社の入れ替えをしたくてもできないだけに情報の発信は重要になる。
経済産業省資源エネルギー庁は、LPガス販売事業者宛てに、LPガス販売事業者名、連絡先、料金等の記載があるLPガス料金表などを、賃貸集合住宅を管理するオーナーや管理会社(賃貸仲介含む)に情報提供することを通達した。
2017年の液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針の策定・改正を踏まえてLPガス料金の透明化を求めている。
健美家編集部(協力:若松信利)