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JR東海 VS 静岡県 「素通り」めぐる因縁の対決 リニアの開業遅れ不可避

都市計画・再開発(地域情報)/全国 ニュース

2021/04/05 配信

リニア3

南アルプス・静岡工区の大井川に対する悪影響懸念
開業遅れで不動産投資戦略にも狂いが出る

予定されていた、JR東海によるリニア中央新幹線の2027年開業(東京ー名古屋間)は絶望的な状況だ。

今回は、改めてその理由を説明してみたい。最大で唯一の理由は、静岡県内にある工区の工事に川勝平太・静岡県知事が同意せず、JR東海が着工ができないでいるからだ。

同意しない理由は、大井川の水資源が失われるといった環境問題。以前から静岡県とJR東海は仲が良くなく、今回「因縁の対決」が再燃したともいえる。開業が遅れれば沿線の開発を見越した不動産投資の戦略にも狂いが出るだけに、今後の動向には目が離せない。

神奈川県のHPから
神奈川県のHPから

改めて、リニアの計画をみておこう。予定では27年の開業にあたり、東京~名古屋間で次の6駅が設置されることになっている。

 ①「東京都ターミナル駅(品川駅地下)」

 ②「神奈川県駅(相模原市橋本駅付近)」

 ③「山梨県駅(甲府市大津町付近)」

 ④「長野県駅(飯田市上郷飯沼付近)

 ⑤「岐阜県駅(中津川市千旦林付近)」

 ⑥「名古屋市ターミナル駅(名古屋駅地下)」

37年には、さらに大阪まで延伸される。

これまで、今年1月7日配信の「リニア『橋本駅』周辺、『第2の横浜』になるか?2027年リニア開業は遅れる懸念あるが」、3月13日配信の「リニア『山梨県駅』に期待!東京都心へわずか25分 通勤・観光ニーズ高まり投資にうまみ」で解説した通り、沿線駅の周りはにぎわいが増すことが考えられ、不動産投資にもチャンスが生まれることになる。

しかし、この見通しに暗雲を投げかけているのが、静岡県によるリニア工事の「妨害」だ。

問題となっている工区は、南アルプスの地下を通る南アルプストンネルの工区のうち、静岡最北部を通っている「静岡工区」だ。これまでの経緯を振り返ってみる。

国土交通省作成の資料から
国土交通省作成の資料から

まず、国がJR東海による品川―名古屋間のリニア工事実施計画を認可したのは14年10月。南アルプストンネルの両端に位置する、山梨県内の山梨工区は15年、長野県内の長野工区は16年に,、それぞれ工期10年として工事がスタートしている。

静岡工区に関しては、17年にJR東海とゼネコンが工事契約を結んでおり、すぐ工事を始め、26年に完了する計画だった。

国交省の仲介で昨年4月、有識者会議を設置
川勝・静岡県知事は「中立性なし、座長解任を」

だが、静岡工区の工事に対し「待った」をかけたのは静岡県の川勝知事。はっきりと着工反対の姿勢を示したのは17年10月だ。理由は環境問題で、静岡県が工事に同意しないため、静岡工区は着工できなくなった。このため、リニアの開通が危ぶまれるようになったのだ。

反対理由としている環境問題は、大井川の水資源が大量に失われるため、周辺の住民らの理解が得られないというもの。南アルプスの生態系への悪影響も理由となっている。

静岡県は大井川の水資源への影響を着工反対の理由としている
静岡県は大井川の水資源への影響を着工反対の理由としている

JRは「水をすべて大井川に戻す」としているものの、静岡県側はやはり環境への影響の懸念がぬぐえないとして反対し、平行線だ。

昨年4月には、JR東海と静岡県の対立を仲介するため、国土交通省が有識者会議を設立した。

10回目となる今年3月22日の会合で示された中間報告素案では、JR東海が作った計画を基本的に認める形になった。

具体的には、南アルプストンネルの掘削で湧水が出ても、その水を川に戻すトンネル設置などによって、大井川の地下水量への影響を抑えられるというものだ。

これに対し、静岡県の川勝知事は23日の記者会見で、有識者会議について「中立性を保っていない」と批判。座長の福岡捷二・中央大研究開発機構教授を「解任させるべきだ」とした。

JR東海、有識者会議、国交省鉄道局は「三位一体」で、福岡座長は「JR、国土交通省鉄道局に近い」と主張。JR東海が示した水を大井川に戻す工法についても現実的でないとし、「トンネル工事に黄色信号がともった」と述べた。妥協点は見いだせず、議論は平行線のままだ。

しかし、そもそも川勝知事がここまで強硬に反対する真意については、国やJRの関係者も「よくわからない」のが本音だ。

ある人は、今年6月に予定される静岡県知事選での再選を目指し、ある一定の層の支持を確実にするのが狙いではないかという見方をする。再選した場合、やはり強硬姿勢を続けるのか、選挙を乗り切ったことで軟化するのか注目だ。

また、別の人は「リニアが静岡県に恩恵をもたらさないことが、反発が真の理由ではないか」と考える。リニアが通るほかの都県と違って、静岡県内は「素通り」されるだけで駅が作られず、経済効果が見込めないからだ。

新幹線「のぞみ」停まらず、かつては「通行税」浮上
JR東海、2022年3月期のリニア投資4300億円、500億円増額

「素通り」をめぐる静岡県とJR東海の対立は、以前からの「因縁」ともいえる。かつては、新幹線「のぞみ」が静岡県を素通りすることをめぐる対立があった。

静岡県とJR東海は「のぞみ」をめぐっても対立
静岡県とJR東海は「のぞみ」をめぐっても対立

「のぞみ」は、「ひかり」「こだま」が停まる静岡駅や浜松駅などには停まらない。静岡県は不満で、02年には当時の石川嘉延知事が、素通りを続けるなら「通行税をかけることも検討する」と発言し、話題になった。自分の家の庭を通り道だけにされているようなもので、プライドも許さないのだろう。

素通りする理由について当時、あるJR関係者は、「静岡県に停まると『のぞみ』のブランド価値が落ちる」と辛らつな言い方をした。別の人は「静岡県で停まっていては、東京側から来る『のぞみ』がうまく加速できない」という、分かるような分からないような説明をした。

もっとも、JR東海は着実にリニアの工事を進める考えだ。3月25日には、22 年3月期にリニア中央新幹線計画へ4300億円投入すると発表した。21年3月期を500億円上回り、連結ベースの設備投資額7480億円の約6割を占める規模だ。

JR東海は新型コロナウイルスの感染拡大で旅客が大幅に減り、業績が苦しい。21年3月期の連結純損益は2340億円の赤字(前期は3978億円の黒字)に転落している。

リニアを予定通り開業させることで、自社の業績を改善し、さらに発展させる成長戦略としたい考えだ。

取材・文 小田切隆

【プロフィール】 経済ジャーナリスト。長年、政府機関や中央省庁、民間企業など、幅広い分野で取材に携わる。ニュースサイト「マネー現代」(講談社)、経済誌「月刊経理ウーマン」(研修出版)「近代セールス」(近代セールス社)などで記事を執筆・連載。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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