
エリアAはJR井田川駅含む 公共交通でのアクセス良
エリアBは亀山インター周辺 車でのアクセスに便利
2037年の開業を目指すリニア中央新幹線に関し、「中間駅」の設置に向け三重県も動きはじめた。同県が中間駅の候補地として示しているのは、亀山市内の3地点。23年度には、県内にリニアの経済的な効果を広げるための「三重県リニア基本戦略」をつくり、誘致の動きを本格化させるという。1月21日配信の「奈良のリニア新駅、候補地は『JR平城山駅』など3カ所に!今年、選定へ作業本格化」で紹介した奈良県と同じく、こんご賃貸需要が一気に高まる可能性があり、新たな不動産投資戦略の選択肢として注目していきたい。
三重県は昨年11月に開いた会合で、リニア中間駅の候補地として、すでに決めていた亀山市内の3エリアを挙げ、ここから一つに絞らず、3つともJR東海に提案する方針を決めた。選定はJR東海にゆだねられる。
候補地は具体的には次の3つだ。

まず、「エリアA」。亀山市東部のJR関西本線の井田川駅を含むエリアだ。

井田川駅は、関西本線はもちろん、国道1号や鈴鹿亀山道路などからのアクセスが良く、公共交通機関を使ったとき、とても便利な場所にある。つまり、公共交通機関を使ってリニア駅まで出たい三重県民にとり、かなり適した場所だといえる。
また、安楽川を隔てた北側の亀山市熊褒野町が工場の集積地となっているほか、南東方向に隣接する鈴鹿市内のエリアには、ホンダの鈴鹿製作所や鈴鹿サーキットがある。産業を誘致し、集積するうえでも有利といえるだろう。
2つ目は「エリアB」。東名阪自動車道の亀山インターチェンジ(IC)を含むエリアだ。
亀山ICは、もちろん東名阪自動車道のほか名阪国道、国道1号から容易にアクセスできるので、このエリアにリニア駅ができた場合、車を利用する三重県民にとって使い勝手がよくなる。
北東の方向のすぐ近くにはシャープの亀山工場があるので、産業の誘致には便利だ。また、昔から刃物で有名な宿場町・関宿が近いので、観光客を呼び込むうえでもメリットのある場所となるだろう。

エリアCはJR下庄駅の北エリア 津市や和歌山方面から便利
三重県が3つのエリアに優劣なしと判断、JR東海が選定へ
そして3つ目は「エリアC」。JR紀勢線・下庄駅の北のエリアだ。三重県の県庁所在地である津市や和歌山方面からリニア駅へのアクセスが良くなるので、三重県でだけなく、和歌山県にもより大きな恩恵が及ぶことになる。
津市の産業集積地である中勢北部サイエンスシティへのアクセスも良くなるので、やはり産業誘致の面からも便利な場所となる。
11月の会議では、いくつかの角度から、この3つのエリアのメリットを検討した。
まず、「交通利便性」に関しては、中間駅をどのエリアに置いたとしても、三重県民にとって大差ないと指摘。産業・観光面の発展への期待や、事業所立地の促進効果についても、どのエリアであれ大差ないと結論づけた。

また、災害などへどこまで対応できるかの「開発の実現性」についても話し合った。
その中で、エリアA、Bでは河川の洪水や浸水、液状化の、エリアCでは土砂関係災害のリスクがあると指摘。そして、それぞれに対策をほどこすことによって、リスクを低減することが可能になると結論づけた。
このように、三重県は3エリアとも候補地としてメリットに大きな違いはないと判断。3つのエリアともJR東海に提案し、判断をゆだねることにした。
現状、3エリアでの不動産投資は活発ではない
リニア開業に向け需要盛り上がる可能性あるので選択肢に
不動産投資家にとり気になるのは、これらのエリアの賃貸需要はどうなっていくかだ。
現状では、たとえば、エリアAの井田川駅の駅近では物件の売り出しが出てこない。しかし、少し離れた場所ではあれば、400万円〜500万円の戸建て住宅が売りに出されているのが目につく。エリアCの下庄駅の付近で検索しても亀山市内全域でみても、やはりほとんど出てこないのが実情だ。
また、亀山市の空室率を調べてみると25.6%で、津市の23.6%、四日市市の20.6%よりも高くなっている。
しかし、これまで説明してきたように、リニア新駅が出てきて工場や企業がさらに進出してきたり、観光関連の産業が発展したりすれば、そこで働く人たちを中心に賃貸需要が盛り上がるのは間違いない。
また、大阪や名古屋、東京方面へのアクセスが格段に良くなるので、これらの方面へよく出張に出かけたり、通勤したりする人の賃貸需要も増すだろう。
今のうちから亀山市内の情報にアンテナを張るようにし、安い物件を仕込むようにしていくのも賢い不動産投資戦略ではないだろうか。

なお、念のため、リニア中央新幹線の計画をおさらいしておくと、2027年に東京ー名古屋間を先行開業し、37年に大阪まで全面開業することになっている。JR東海によると、全面開業後、東京と大阪は最短67分で結ばれる。
ただ、大井川の水資源への工事の悪影響を懸念する静岡県が反対し、建設工事がなかなか進んでいないため、計画どおりの時期に開業することは難しい情勢になっている。
取材・文:
(おだぎりたかし)