「デザイン計画」として
駅前エリアの改良が進行中
広島県の中核都市に指定されている福山市は、福山駅周辺の活性化を図るべく「福山駅周辺デザイン計画」を進めている。
「再開発計画」ではなく「デザイン計画」という名称が用いられているのは、いわゆる箱モノを作るだけではなく、ITインフラの構築や情報発信の強化など、ソフト面による都市改良のアプローチも計画されているからだ。
具体的には、福山駅周辺のエリアを4つに分けてそれぞれの課題解決を図りつつ、新たな都市機能を持たせるべく、民間投資を呼び込むとしている。

※引用:福山市
駅の北側には、福山市が持つ最大の観光資源である福山城や、ふくやま美術館などがある。
北口では福山駅と福山城との間にある広場を福山城公園と一体的に整備することで、駅の南北を通行しやすくするほか、観光客が「城の中に駅があるような印象」を持てるようにする。
そのほか、「市の花」とされているバラの花壇を整備して街のイメージアップを図る予定だ。

※引用:福山市
2021年11月時点で北口の道路整備工事は始まっており、今後2023年度末の完成を目指すとされている。
そのほか、福山城の景観保全を目的として城周辺で高さ制限が設けられるうえに、城のライトアップなどが行われる予定だ。
駅の南東に区画されている伏見町エリアは、福山市の魅力を発信する拠点として整備される。
健康・スポーツ事業を推進するために、スポーツジムを設けるほか、スポーツ電動自転車をレンタサイクルとして導入する予定だ。

※引用:福山市
レンタサイクルについては、観光客の利用を促してサイクリングロードの周知やインバウンド需要の取り込みなどを図る。
そのほか、民間店舗のリニューアルやリノベーションを促したり、オープンマーケットの開催エリアを設けることなどが決定済だ。
駅南西側の三之丸町周辺エリアは、職住混在のオフィス街として整備される。
三之丸町周辺エリアの整備で中心となるのは、もともとキャスパという商業ビルがあった跡地の活用だ。
キャスパの跡地では、穴吹興産などが北棟・中棟・南棟の3棟に分かれた複合施設を建設する予定であり、北棟について2021年11月に着工する。
※引用:福山市
北棟の内容は、1〜2階が商業施設・3階がオフィス・4階〜25階が約190戸の住宅。竣工は2023年度内が予定されている。
中棟は2021年6月に着工済で、1〜2階が商業施設・3〜9階がオフィス・10階が商業テナントとなる。南棟は同じく1〜2階が商業施設で、3〜5階がオフィスとなる予定。
3棟はそれぞれ独立した建物だが、2階に各棟をつなぐデッキが設けられる。
1番南側の中央公園周辺エリアは「学びの拠点」として整備されることが決まっており、民間事業者のノウハウを活用した施設の設置と維持管理が導入される予定だ。
そのほか、エリア内の図書館では電子図書の貸し出しサービスや外国語資料の導入などが試行される。
箱モノに頼らない
都市デザインは機能するか
再開発計画というと大規模な複合施設などを建設することも多いが、福山市が策定する「福山駅周辺デザイン計画」では、いわゆる箱モノは三之丸町周辺エリアの複合施設だけだ。
道路やバス乗場の整備などもデザイン計画に含まれているものの、どちらかというと、福山市はコストがあまりかからない都市の活性化を目指しているような印象を受ける。
市の統計によると、福山市の人口は2019年頃から緩やかに減少中だ。
その一方で世帯は増加しているため、単身者や子どもがいない家庭などが増えているものと推察される。
コロナ以降の人口推移は不透明だが、今後は福山市でも人口流出に歯止めをかける施策が求められるようになるだろう。
箱モノに頼らない都市のデザイン計画がどこまで都市の活性化に貢献するか要注目だ。
取材・文:
(はたそうへい)