広島市中心部と北西部を結ぶ新交通
2023年度中に事業特許を国土交通省に申請
広島市の県庁所在地であり、中国・四国地方の中心的な役割を担う広島市。8つの区で構成される人口約118万人の都市で、市の中心部は都会的な街並みや堀や公園に囲まれた広島城などがあり、中国山地と瀬戸内海に育まれた豊かな自然にも恵まれている。
多様な農林水産物や自動車部品関連など輸送機械器具の生産が主な産業で、ビジネスはもちろん、観光やグルメを楽しむのにも適したまちだ。

市内にはJR西日本、路面電車の広島電鉄など、多様な交通機関が乗り入れているが、そのひとつが広島高速交通が運営する新交通システム「アストラムライン(広島高速交通広島新交通1号線)」だ。
広島市中心部と北西部の住宅地を結ぶ路線として建設が進められ、1994年8月に中区の本通駅から安佐南区の広域公園前駅に至る18.4qの全区間が開業した。
現在は通勤・通学など日常の移動を支えるだけではなく、広島広域公園内に建設された「エディオンスタジアム広島(広島広域公園陸上競技場)」へのアクセス路線としても使われている。

そんな同線だが、延伸計画が本格化している。広島市は広域公園前駅〜JR西広島駅間を結ぶ約7.1qの「西風新都線」について、2023年度に軌道法に基づく事業特許を国土交通省に申請する方針だという。

出所:広島市ホームページ
延伸計画では、アストラムラインを南に延伸し、JR山陽本線が乗入れるJR西広島駅に接続させることで、基幹公共交通の環状型ネットワークを形成。
「西風新都・デルタ間」によるヒト・モノ・カネ・情報の好循環を生み出すとともに、西風新都の都市づくりを一層推進し、広島高速交通の経営改善にも貢献したい考えだ。いずれにしても、広域公園前駅からJRへのアクセス性を高めるという点で、非常に効果的と考えられる。
経由地は団地が広がる五月が丘地区や住宅地の石内東地区、己斐地区で、それぞれに、五月が丘1駅、五月が丘2駅、石内東駅、己斐上駅、己甲斐中駅(すべて仮称)を設置。五月が丘地区では、アストラムラインの利用促進や活性化を図るため団地内を経由するルートを設定し、できるだけ新たな用地取得を避けるため、団地内の幹線道路を活用する。他地区についても市有地などを活用し、利用促進のため商業地域付近に駅を設置する。

出所:広島市ホームページ
用地取得を少なくし既存道路の幅に収めるため、延伸部は単線になる予定で、各駅で行き違いができるようにする。全体の事業費は約570億円で、広島市が約289億円、国が残りを負担する方針。
これにより1日平均約1万5200人の利用を見込む。今後は、令和一桁台半ばに用地買収、工事着手、令和一桁台後半(2020年代後半)に部分開業(石内東地区)、令和10年代初頭(2030年前後)に全線開業を目指す。
ちなみに、アストラムラインでは、JR西広島駅から本通駅の約3.2qを結び環状線とする将来計画「新交通都心線」の延伸計画も持ち上がっている。
これが実現すると都心部と郊外の連携が強化され、地域住民の交通の便は一層良くなり、コンパクトシティの実現にもひと役買うだろう。沿線の開発も進み、まちづくりもより活性化するはずだ。
ただし、事業費が約900億円かかり、既存の公共交通機関がすでに役割を担っているとの見方もあり、判断は時期尚早とされている。しかしながら、2020年代後半といえば、すぐ先のこと。今後は急ピッチで整備が進められていくだろう。まちのさらなる発展が期待される。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))