本州ではリニア中央新幹線開業時期(2027年予定)への関心が集まっているが、北海道では北海道新幹線の札幌延伸(2030年予定)に向けて大きな期待が高まっている。
中でも、北海道新幹線の現在の終着点となっている「新函館北斗」駅の所在地・北斗市では、子育て世帯を中心に若年労働世代の流入が続いているという。その理由は何故なのか?“田んぼのど真ん中に誕生した新幹線駅”と言われている「新函館北斗」駅の今を取材した。
平成28年に先行開業した
「新函館北斗」駅
まずは北海道新幹線開業までの経緯を振り返ってみよう。青森~札幌間を鉄道で結ぶ新幹線整備計画が決定したのは昭和48(1973)年のこと。その後昭和63(1988)年に「青函トンネル」が開通し、平成10(1998)年には「(仮称)新函館」を経由する正式ルートが公表された。
平成24(2012)年に駅の起工式が行われ、平成28(2016)年3月に北海道新幹線「新青森~新函館北斗」間が晴れて先行開業。この新幹線開業によって東北各県と北海道のアクセス性が向上し、東北の高校生が道南地方の大学へ進学するケースも増えたという。
子育てのまちとして手厚い政策を実施
お隣の函館から若者世帯が流入
現在北斗市では「地域の若返り」が進んでいると言われているが、その要因となったのは、北海道新幹線開業を契機に市が独自に打ち出した“手厚い子育て政策”にある。具体的には、
●子ども医療費は高校卒業まで全額助成
●学校給食費は就学児童の数に合わせて最大無料
●市内すべての常設保育所で一時預かり保育を実施(有料)
●学校の部活動にかかる交通費・宿泊費・参加料を全額補助
●空き家バンクを利用したマイホーム取得で最大100万円を助成
●大学等の奨学金償還の一部を5年間で最大120万円補助
(令和3年度時点)
といった取り組みのほか、クーポン発行の是非が全国的に論争を巻き起こした「2021年度子育て世帯への臨時特別給付金」では、いち早く現金10万円の一括支給を決定するなど“子育てファミリーに寄り添う行政”が支持を集めている。
住民基本台帳を見ると、北斗市の人口は合併前の平成17(2005)年の4万8000人をピークに減少傾向にあるものの、世帯数は安定的に増加中。北斗市人口ビジョンによれば、特に若年労働者層である20~39歳の転入者が目立ち、道内他市町村からの転入者のうち約半数以上がお隣の函館圏からの転入となっている。
子育て政策の充実度に加え、「函館よりも家賃や生活費が安い」という点も北斗市に若い世帯が集まる理由のようだ。
北海道新幹線延伸後は
「札幌」まで45分の通勤圏に
現在「新函館北斗」駅から「札幌」までは特急北斗で約3時間20分だが、2030年に北海道新幹線が延伸すると45分に大幅短縮される(JR北海道の試算)。となれば、北斗市は今後“札幌通勤圏”となる。
札幌駅周辺では北海道新幹線延伸を見据えて大規模再開発が目白押しとなっており、もはや気軽に手が出せないほど地価も高騰しているが、同じ北海道新幹線沿線の基幹駅ながら、やや目立たない印象の「新函館北斗」駅周辺にはまだまだ開発の余地が残されている。これから“2030年までの8年間”を絶好の投機と捉える読者も少なくないだろう。
健美家編集部