当別町とロイズコンフェクトが
設置を求めた「請願駅」として誕生
近年は大規模な再開発にわく都市部を中心に鉄道新駅の開業が相次いでいるが、JR北海道の在来線でも20年ぶりに新駅が生まれ話題になっている。それが、札幌市に隣接する当別町で3月12日に開業した「ロイズタウン駅」だ。

新駅の場所は、札幌市中央区の「桑園駅」から石狩郡当別町の「北海道医療大学駅」までを結ぶ「札沼線」のうち、「あいの里公園」と「太美駅」の、やや太美駅寄り。札幌駅からだと30分ほどで着く。
一方、当別町は人口およそ1万5000人、生花や米の生産が盛んなまちだ。市街地は当別駅周辺と太美駅周辺。太美地区の北側に広がるスウェーデンの街並みを造成した「スウェーデンヒルズ」など。札幌市に近い南部の西当別近郊はベッドタウンとしても栄えている。
なぜ、こういったエリアに新駅ができたのか。背景にあるのが、駅から北300mにある「ロイズふと美工場」の存在だ。
ロイズと言えば北海道を代表するチョコレートブランドで、製造元のロイズコンフェクトは札幌市北区に本社を構えている。
ふと美工場は同社の生産拠点であり、昨年には集客機能強化を目的とした増設工事を実施し、来訪者の利便性向上を図ったところ。従業員のつうきんや工場直売店などの利用客の需要増、さらには周辺での宅地や集客施設開発の民間資本の誘致も目的に同社と当別町がJR北海道に設置を求めた結果、実現したという。
駅舎整備費およびホーム建築費約9.3億円はロイズ、駅前広場は当別町、駅舎維持費約500万円はJR北海道が負担する。なお、駅は開業したが、駅前広場が完成するのは2023年3月の見通しだ。
駅舎の外観はロイズのイメージカラーと同じく青色で、工場とも同じ。内部には当別町の木である白樺を使った。ホームは単式で、上下線を合わせて1日75本が停車する。駅前広場にはロータリーや駐輪場、トイレなどが整備され、周辺の町道には歩道が整備される予定だ。

出所:当別町役場ホームページ
先述したように、北海道の在来線で新駅が開業するのは、2002年の函館線「流山温泉駅」以来20年ぶりのこと。企業名を冠する駅は、千歳線の「サッポロビール庭園駅」に続き2か所目だ。ちなみに、新駅の開業に伴いそもそも石狩市内に立地していなかった「石狩太美駅」と「石狩当別駅」の駅名はそれぞれ「太美駅」「当別駅」に改称している。
新駅の開業に合わせては町と観光協会はツアーを主催したり、ロイズは直売店をリニューアル。限定商品を販売するなどの力の入れようだ。当別町の人口は10年前に比べると3000人近く減っていているが、新駅をきっかけに人を呼び込み、定住に結び付けたいと自治体は考えている。これを機に住宅や商業施設が開発されると、実現するかもしれない。駅を起点としたまちづくりの今後に期待したいところだ。
JR北海道では、根室線の富良野~上落合信号場や留萌線の深川~留萌間の廃止が決まり、その他の路線でも収支が改善しないと、将来の廃線を含めた検討がなされる見通し。
50年以上は道内で4000㎞あった営業キロは約2300㎞まで短くなった。そういった中、新たな駅が生まれるのは明るいニュースと言えるだろう。今後も北海道に限らず、大都市部の郊外ではロイズタウン駅のような事例が出てくるかもしれない。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))