
ロサンゼルス国際空港(LAX)は、U字型に9つも旅客ターミナルがあってとにかく広い。トム・ブラッドレー国際ターミナル(TBIT)だけでも南北に18ゲート、西に15ゲートあって、そこから国内線のターミナルに乗り換えるのがなかなか難儀。乗り継ぎで迷子になりそうになった経験のある人は少なくないだろう。
2028年の五輪開催を見据えロサンゼルスでは、140億ドルを投じた公共事業計画が進行中。LAXでも2023年完了予定を目指し、55億円を投じてLAMP(Landside Access Modernization Program)と呼ばれる自動ピープルムーバー(オートウォーク)や、連結したレンタカーセンターの設置、鉄道各駅への空港からの連結などが予定されている。

そんなLAXで、アメリカの大手航空会社デルタ航空もLAXのターミナル改造プロジェクト「デルタ・スカイウェイ」を進めていて、2022年4月20日にはターミナル2(T2)とターミナル3(T3)の間に、チェックイン・保安検査場・手荷物受取所を一カ所に集約したセントラル・ヘッドハウスをオープン、チェックインから搭乗までや荷物受け取りなどがスムーズになる。その事前内覧会に呼ばれて、ポートランド国際空港から2年ぶりにLAXに飛んだ。

まず、飛行機からデルタ航空機でT2のゲートに出た途端、ちょっと引いてしまうほどの人混み!春休みが終わった後の月曜だったので、この日に移動という人も多かったのかもしれないが、アメリカの国内旅の需要の戻りに正直驚かされた。
これだけ人の出入りも激しく五輪も控えるロサンゼルスの経済や不動産の状況について、現地で不動産エージェントをされ全米リアルター協会でも日本大使として活躍されている旧知の西川ノーマン裕子さんに聞いた。

「アメリカの住宅金利は、一昨年の3月に新型コロナウイルスの感染拡大を受けてFRBがゼロ金利政策と量的緩和策を導入してから低下し、去年1月には統計を取り始めた1971年以来、30年固定金利がアメリカ史上最も低い2%台まで下がりました。
アメリカの住宅販売は、中古が約8割で新築が約2割という比率ですが、2007年のリセッション以降に新築住宅の販売が低迷し、本来必要とされる供給戸数の3分の1しかなかった時期もありました。
そういった中で2020年以降の低金利の追い風を受けて、住宅購入の需要が高まりましたが、住宅の在庫不足で物件を売り出したら多くの買い手が付いてすぐ売れるという売り手市場が続いています。
住宅着工件数は復調していますが、まだ在庫不足は解消されず、2021年は住宅販売件数は全米平均で8.5%アップ、中間価格は16.9%アップという結果でした。
今年に入り住宅ローン金利が一気に上昇し、今月4日までの1週間では住宅ローンの申請件数が減少傾向にあるという調査結果もあるように、購入需要はスローダウンする傾向にあると思われます。
しかし、住宅購入可能な層はまだまだ多く、ロサンゼルス経済圏では五輪開催も控えて、ビジネスや都市開発も活況で不動産マーケットはまだ強そうです。2022年2月のロサンゼルスカウンティーの一戸建ての中間価格では、83万ドルで前年同月比で10.7%アップです。」
なんと平均でこの価格!いったいどういった人が購入しているのか?賃貸の方はどうなのだろうか?
「コロナによるロックダウン中は、賃貸も停滞しましたので賃料もやや下がりましたが、2021年夏ごろからまた動き始めました。購入価格の上昇で賃貸に流れる人も出てきたのではないかと思います。
賃料も上がってきています。賃貸でよく動く価格帯は1〜2ベッドルームで月額25万から40万円。一戸建では50万円くらい。お客様はエンターテイメント業界、IT、広告業界や弁護士、コンサルなど高給の企業で働くパワーカップルなどが多いです」
空港ではあれだけ人が戻り、不動産価格の高騰も販売状況より需給の関係の解消が問題という西川ノーマンさんの言葉を聞いて、アメリカとロサンゼルスの経済の強さに驚かされた出張だった。
取材協力 /
西川ノーマン裕子 https://h2nusa.com/jpn/
デルタ航空 http://www.delta.com
執筆:
(おのあむすでんみちこ)